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【イベントレポート】越境大学生対談 ~越境する学びの価値とは?~

さとのば大学では、地域に飛び込む「越境体験」を通し学び成長していくプログラムを主軸としています。
今回は、さとのば生に加え、他大学でも「越境する学び」を体験したり、自分で生み出したりしてきた大学生・卒業生をゲストとして招き、越境の実践者から学ぶイベントを開催しました!
本note記事では、4月3日に開催されたイベントの対談セッションの部分をレポートとしてお届けします。

■スピーカー紹介
岩永 淳志(いわなが・あつし)さん
東京大学農学生命科学研究科 修士課程(農業史専攻)
和歌山工業高等専門学校 技術補佐員
特定非営利活動法人日ノ岬・アメリカ村 理事
1998年生まれ、2019年8月から大学を休学して、和歌山県美浜町に1年滞在。地域で、社会との関わり、自然との関わり、「生きるための学び」を経験する。復学後、複数のベンチャー企業で新規事業立ち上げや、法人営業を行う。2023年に同町の築150年の古民家を購入し、移住。

梅澤 凌我(うめざわ・りょうが)さん
米国ミネルバ大学(Minerva University)日本公式卒業生アンバサダー。
2019年に京都府立洛北高等学校を卒業後、国連関連機関と協働するWURIの「世界で最も革新的な大学ランキング」で2年連続首位にランクインした米国ミネルバ大学に進学し、昨年5月に日本の高校初の卒業生となる。 現在はギャップイヤーを取り、日本全国の高校を回りながら、グローバルな進路選択を推進する非営利一般社団法人、52Hzの立ち上げを主導中。

佐藤 花奈(さとう・はな)さん
さとのば大学2年生。1年次は秋田県五城目町に滞在し、4月からは京都府京都市に滞在。
高校2年生の時に通信制高校に転校。学校の職業体験に参加した際に、たまたまさとのば大学に通っていた先輩と出会い、さとのば大学の存在を知る。進路を決める際、「どうせなら前の学校に通っていた時の自分が絶対に取らない、わくわくした選択肢をとろう!」と考え、入学を決意。
五城目町に行ってからドライブが好きになり、道の駅巡りが趣味に。秋田の全33個の道の駅と宮城の全18個の道の駅を制覇。

■司会
信岡良亮(さとのば大学発起人)
1982年生まれ。関西で生まれ育ち同志社大学卒業後、東京でITベンチャー企業に就職。Webのディレクターとして働きながら、大きすぎる経済成長の先に幸せがあるイメージが湧かなくなり、2007年6月に退社。島根県隠岐諸島海士町という人口2400人弱の島に移住し、2008年に株式会社巡の環を仲間と共に起業。6年半の島生活を経て東京に活動拠点を移し、2015年5月に株式会社アスノオトを創業。 「地域共創カレッジ」主催のほか、さとのば大学の生みの親。2024年4月、これからの学び方・学校のあり方を共に考える『学び3.0』出版予定。


信岡:
3人はそれぞれ個性的で面白い学びをしていますが、自分自身の変化などはどう感じていますか?

花奈:一緒に学んでいたさとのば生の中でも、自分が1番変容していないのではと思うくらい、目に見える変化はありません(笑)たとえば、目に見えて明るくなったとか、よく話すようになったとか……
何かに特化して力がついたわけではないんですが、はじめましての地域に行って人と話す時の距離の縮め方がわかったり、何か始めようとしたときにどのような順番で計画すれば実行できるかを考えられるようになったり。ちょっと相談に乗ってほしいときに人に聞けるようになったことが自分の大きな変化でした。
1から10に伸びたわけではなくて、いろんな方向に1が1.5に10個くらいのものが増えた、みたいな変容のしかたをしたと思います。

梅澤:ミネルバ大学は、学んでいるという感覚はありますが、“大学に行く”という感じはないので、明確な変化はわかりにくいかもしれません。
自分が主体となり、興味があることややりたいことを中心に、カリキュラムには沿っていますが受け身ではなく、チャレンジをしながら学んでいます。
ミネルバ大学はさとのば大学と似ていて4ヶ月ごとに国を移動しながら暮らしているので、いつ学んでいていつ学んでいないとかないんです。自炊しているときや買い物しているときも、その国のことを知る機会になるので生活から学ぶ。学び続ける力、常に自分の今を生きているという感覚があります。

岩永:東京大学に入るための受験勉強は大変でした(笑)東大じゃなくても…と思ったこともありましたが、東大に入ったことでの人との出会いは大きかったです。いろんなバックグラウンドを持った人がいます。
1番衝撃的だったのは、大学で仲良くなった友だちが入学半年後くらいに「ケンブリッジの医学部に行くから来週からいないんだ」と言われて(笑)どこかに行っちゃって。そういうのをみたときに、自分ももっとできることがあるなと思えました。
自分も大学を休学して地域に飛び込んで、どうやったら人と仲良くなれるか、関係性を築けるかを考えて。それって人間の根本なんですよね。地域に行くまでそれをしないまま育ってきたので、地域で痛い目にあいながら学びました。0から1になった感覚です。

信岡:これからは生涯学び続ける時代だよね。岩永さんから同級生の話があったけど、花奈ちゃんや梅澤さんの同期にはどんな人がいる?

花奈:みんなといると、自分って普通だなと思います。尖った部分が自分にないことが悩みだったんですが、特技はないけど、どれもそこそこできるのもいいことなんじゃないかと感じることができました。
一緒に住んでいたさとのば生との日々の何気ない会話のなかから気づきを得る瞬間もあって。さとのば生と会うたびに、「なんておもしろい人たちの集いなんだろう!」と思います。

梅澤:ミネルバ大学は、アメリカの大学ですが留学生が85%くらいで、出身国でいうと47カ国なので、全員がマイノリティという感じですね。
ミネルバ大学は、一見わかりにくいところがあるので、そこに集まってくる時点で変わっているのですが、周りの目を気にせず自分のやりたいことに突き進むフットワークの軽い人たちがたくさんいました。
ミネルバ大学での生活を通して、人を寛容にもさせるし、生きるスケールも大きくなりどんどん尖っていく。ただ、自分の価値観しか受け入れないのではなく、トラブルや衝突を経て他人の価値観も大事にできるようになります。


信岡:なるほど。逆に、それぞれここが大変というポイントは?

梅澤:ミネルバ大学、僕は好きですが、万人受けはしませんね(笑)4ヶ月ごとに国を移動するので、国籍によっては毎回ビザを取らないといけない学生もいます。いろいろなことを環境に適応しながらやらなければならないのは、それを楽しんだり取り組める体力がある人でないと難しいです。

岩永:東京大学の学生の6割は大企業や官僚を目指す人、2割は海外志向や起業したい人、残り2割は学者とかを目指す人なので、“普通”と“変”を同時に摂取できます(笑)
大学に入ってからも成績によって行きたい学部にいけない可能性もあるので、勉強し続けなければいけません。また、1年生と2年生は教養を学ぶので、研究をしたい人にとっては遠回りかもしれません。

花奈:さとのば大学は、自由に使える時間が多いことと、地域とどれくらい関わるかも自分次第なことです。待っているだけだと「思っていたのと違う」となりかねないかも…
また、講義で聞いた内容が、すぐに実感として得られるわけではなくて、時間が経ってから理解できることも多いので、目先の成果を求めすぎるとしんどいこともあるかもしれません。

信岡:梅澤さんと岩永さんは、学んだことを大学外で使えている?

梅澤:使えます。ミネルバ大学の思考法が80個あって、それを1年生で習得して、それを使い続ける仕組みです。使おうと思えばいつでも応用できるし、逆に使えていないと効果的に問題解決できないですね。卒業後も見返しています。

岩永:使えていないですね(笑)基本的な学びがほとんどなので、死ぬまで一生使わない知識もあるかもしれません。

信岡:そうなんですね。あと気になったのが、進学するにあたって保護者からの反応はどうだった?

花奈:昔からわたしのやりたいことには応援的だったので、さとのば大学に入るときも前向きに送り出してくれました
でも、以前行われた保護者座談会のnote記事を読んで知ったのですが、就職に関する不安はあったらしいけどわたしには伝えず(笑)たまに「楽しんでる?」と連絡があります。

信岡:おーいいね。距離感が大事なんだね。梅澤さんと岩永さんはどう?

梅澤:やりたいことをやれという親で、ミネルバ大学の進学に関しても何も言われませんでした。ミネルバ大学に行っていることというより、自分の行きたい場所に行っていることを喜んでくれています。

岩永:東大に入ることより、僕自身が決めた目標に向かって頑張っているかどうかをみられていました。そして、勉強をさぼることよりも、風呂掃除するって言ったのにしていない、などの家での小さな約束を守れないことのほうが怒られていました(笑)

信岡:人間として自立していることが問われている感じがするね。では最後に、それぞれにとって“越境”とは?

花奈:越境することで新しい自分を見つけられると思います。明確に、いる場所によって違うとかではなく、その地その地での人間関係をつくって、好きな場所ができて…その地にいる自分しかできないことがかけ合わさった結果、新しい自分になっていく気がして。
いま京都にいる自分は秋田にいたときの自分とは違うし、地元にいたときの自分とも違う。そういうのをたくさん知って、将来的に自分の生き方やありかたのヒントが越境学習だと感じています。

梅澤:越境という文字だけでみると、ミネルバ大学やさとのば大学のような学びを想像しますが、そうではないと考えています。東京大学だって越境だし、ミネルバ大学に行くことが人によっては越境になるとは限らないと思います。
越境とは、自分のバウンダリー(境界線)を超えることなので、自分の知らない世界や新しいことにふれて理解することが越境。家の中にいても新しいことに挑戦すれば越境だし、たとえば、海外留学をしていても自分の殻に閉じこもっているのは越境していない。
チャレンジそのものが越境なので、これからもチャレンジし続けていきたいです。

岩永:二人の言う通りですね(笑)僕は梅澤さんに近くて、所属が大事ではないと考えています。
たとえば、日本に住んでいるけど、航空券があれば他の場所に行けて、そこに住む可能性もある、いろんな人と出会う。気がついたら古民家を買っているかもしれない。
自分が思い描いていない世界もあって。自分の知っている世界はごく一部なんだということに気づくのが越境だと思います。
今いる自分じゃない自分がいるということを感じてほしい。

越境という言葉自体は、「境界線や国境を越えること」という意味ですが、「越境する学び」とは、自分にとって居心地の良い場所から出ることや、マイノリティの立場を体験すること、そしてそこで初めて自分を客観的に見れるようになったり、様々な人との出逢いにより多様な生き方や価値観があること知る、そんな学びなのかもしれません。

■新しい学びに出会うオンラインオープンキャンパス

さとのば大学は、地域に暮らしながら実践するプロジェクト学習を軸とした新しいスタイルの市民大学です。全国各地の在校生や地域共創領域のトップランナーである講師陣とオンラインで繋がりながら、理論のインプットと対話で学びを最大化していきます。
今回のオンラインオープンキャンパスでは、さとのば大学らしい”新しい学び”や”生き方”に出会える、特別コンテンツをご用意しました。
みなさまのご参加お待ちしています!

■暮らしながらプロジェクトを実践する、さとのば大学の学びのフィールドは全国各地

さとのば大学では、4年間1年ずつ多様な地域へ留学し、地域での様々な人との出会いや対話を通して自分自身の関心を探り、マイプロジェクトへと繋げて実践していきます。ぜひあなたらしさが活かせる地域を、見つけに行きませんか。

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