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「何者でもない自分」が最強の武器になる生き方『マーケターのように生きろ』

【今日の本】


マーケターのように生きろ
井上大輔 著 東洋経済 2021年

令和の時代=ホールネスの時代

「ティール組織」と言われる、上司も部下もない未来型の組織で大事にされている考え方。


個を重んじつつも、個と全体を対立させず、個あっての全体、全体あっての個と、その関連性を相互補完的に考える世の中にシフトしている中で、「個」の存在価値を世の中に対してどのようにアピールしていくべきか。価値の作り方から伝え方まで具体的な方法が書かれている。既に商品やサービスを持っていて、その価値が伝わらなくて困っている人にもとても役立つマーケティングの本質に触れることができる本。

自我に汚染されて、相手目線になれない人にもおすすめ。

❶[3セレクト]

①「個」の時代に、求められる人であるために

マーケターのように生きれば、「やりたいこと」なんてなくても輝ける
「マーケターのように生きる」とは、「人の期待に応えることを追求する」生き方のこと。


自分を表現する必要はない。

マーケティングとは、
「常に相手からスタートする」という考え方を体現したもので、
相手をよく知り、相手が何を求めているかに想いを巡らせ、自分にできる精一杯でそれに応えること。

「マーケターのように生きる」れば、いつでも求められる人になれる。

マーケティングの4ステップ
1、「自分がもっとも輝く場所」が見つかる(市場を定義する)
2、「相手が本当に欲するもの」がわかる(価値を定義する)
3、「自分がやるべきこと」がわかる(価値をつくりだす)
4、「自分を必要とする相手」に見つけてもらう(価値を伝える)

②「自分を表現しない」からこそ輝ける


ソフトバンクの広告部門で働いている著者。過去には、ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディ、ヤフーなどで、マーケティングの仕事を続けてきた著者にも、必死に自我を打ち出そうとしていた「暗黙時代」があった。著者は大学生の頃、音楽に夢中になっていた。当時、音楽は「自分を表現する手段」だったので、聴く人のことはまるで考えていなかった。バンドは、全く日の目をみなかった。結局、音楽をやめてしまった。

20年後、ある音楽イベントを開催した。イベントは大成功した。
成功要因は、「顧客は何を聴いたら楽しいか」を考えたこと。20年間の歳月を経て、著者は、自分の音楽に対する姿勢が正反対だったことに気づく。

自分からスタートしているか、相手からスタートしているか。変化をもたらしてくれたのが、他ならぬ「マーケターとしての視点」だった。

著者は、マーケティングを、「エンターテイメント」とう。エンターテイメントとは「接待」で、スタート視点はあくまでも相手。エンターテイメントである限り、まずは相手を楽しませる必要がある。そのことに気くと、目に見えて企画の成功率が上がっていった。

「迷ったらより多くの人の役立つことをしろ」
「自分を表現する」より「相手の役に立つ」ことを意識する

「自己表現」という呪縛を捨てて、「相手からスタート」すること。

この視点で、自分そのものを変えることができた。

③マーケティングの3つの誤解


1、マーケティングとは広告宣伝のこと


プロモーションは、全体の4分の1でしかない。「マーケティング=プロモーション」というのは大きな誤解。「価値を伝える」のは、伝えるべき「価値」を身につけた後の最後のステップ。

2、本当にいい商品を作ればマーケティングなんていらない。


「本当にいい商品」でも、それを広く多くの人に知ってもらう機会がないと売れない。商品を作り、あとは座して待っていたというヒット商品は、実際にはほとんど存在しない。

プロモーションは、価値を届けるための「義務」

“われわれ商人・産業人には「この商品をあなたがお使いになれば、便利で利益になりますよ」ということを消費者にお知らせする義務がある。その義務を果たすために「宣伝」をするのだ”(松下幸之助)

相手の批判や目が気になるのは、本当にすべきことにしっかり集中できていない証拠。


私たちが一点集中すべきなのは、いかに相手の役に立つか、だけ。

3、顧客の声なんて聴いたらイノベーションは生まれない


常に顧客の声に耳を傾けるマーケティング企業であるP&Gには、これまで数々のイノベーションを生み出している。


耳を傾けるとは、ただ聴くのではなく、顧客が言葉にできないことや、意識すらしていないことを含めて「理解する」こと。


自覚していないことを聞き出す「心がけと知識」が必要。

雑談は、マーティング リサーチ。重要なのは、相手がリラックスしていること。


❷[エピソード] (「良し悪しの基準」は自分ではなく「相手」にある)

“自分のこだわりに固執するより、いい歌になる方がいい”(西野カナ)


「いい歌」の定義は自分の外にある。西野さんは、ヒット曲を作りたいのではなく、ただ自分の信念にしたがって「いい歌」を作りたいだけなのでは。この思想がマーケティングそのもの。

西野カナさんの作詞のプロセス(インタビューより)
「先に曲をつくってもらって、その曲のイメージからどういう歌にするか、まずレジュメをかく。次に仮タイトルをつけて、主人公を設定して詞を書き出す。詞もすごく長いのを書いて、次にアンケート。これが大事。アンケートをもとに添削をしていく。キーになりそうな言葉は、サビとかサビ前後に。タイトルも添削して短くする」

これは、大手消費財企業が、商品を開発するプロセスによく似ている。
成功した大手消費財企業と日本を代表するアーティストが、最終的に同じ結論に達している。

つまり、「良いものを生み出してたくさんの人に喜んでもらいたい」というゴール。


❸[今日からのアクション]


市場を分析して、伝えたい相手を明確に決めて、その人にとっての価値は何なのか、価値を再定義してみる。

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