Day220 「思考のコンパス」ノーマルなき世界を生きるヒント
【本について】
タイトル:思考のコンパス(ノーマルなき世界を生きるヒント)
著者:山口周
出版社:PHPビジネス新書
【WHY】問題提起
• 予測が難しい世界、状況が目まぐるしく千変万化する世界で地図の情報はすぐ古くなる
• ニューノーマルではなく、「ノーマル=普通が溶解してしまった世界」では、何が判断を支えるのか?
• 2020年東京の人口が転出超過になった(明治時代から続いた増加から初の転換)
• 知恵や経験則はインターネットの仮想空間に蓄積されるようになり、「役に立つ」会社ばかりが時価総額ランキング上位
• 資本主義経済は、「自律的に生きることができる」という錯覚をもたらした
• 不確実性を可能な限り排除して、予測可能性を高めることを目指した結果、インフォーマルなもの、非公式なものは排除され、極度に依存した社会になった
• 都市化・イノベーションが起こりやすい仕組みの追求、システムの変化が社会の脆弱性を生み出す結果になってしまった。このやり方を見直さない限り、繰り返すことになる(利己的な欲求に「神の手」は届かない)→生物的な仕組みを理解した上で、それをハックする態度を持たなければ、資本主義は成り立たなくなる
• エラーこそ進化をもたらすのに、無謬性が重要視され、ミスやエラーを忌避することに神経質になっている。(意図的にエラーを起こすプロセスの設計が必要になる)今のままでは、社会の閉塞感を招く
• 短期的な利益に結びつくことだけではなく、遊びや余白を残しておかなければ、長期的には衰退する
• 中間所得層が二極に分化し、格差の拡大する。そして、今後、暇であることが社会問題になる
【WHAT】社会と自分を変えていくために必要なもの
■思考のコンパス
・・アフターコロナの世界を生きるためのコンパス
・・ぶれない指針→教養・旅行者が頼る地図ではなく、探検者が頼るコンパス
【WHAT2】どの方向へ向かっていけばいいのか(3つの方向)
1、仮想空間へのシフト
コロナでキャズムを一気に超えた
多くの社会活動を仮想空間でできることが明らかになった
物理空間に集まる意味合いが希薄になった
2、半都市化への反転
無限に反映する都市の終焉(都市部の不動産開発の停滞・交通・運輸・飲食の需要の半減)
物理空間に限定されない社会(都市の社会的な位置付けの変化)
3、ライフスタイルの多様化・複層化
今まで「どこに住むか?」は「どの会社で働くか?」にほぼ規定されていた
→今後は、働き手側の主体的な意思に選択が委ねられる
個人として、どのような人生をいきたいのか、自分で決めなければならない社会の到来
「幸福感受性」の回復の重要性
・・「自分にとって一番大切なものは何か?」
・・「自分はどのような人生を送りたいのか?」
自分にとっての幸せを定義し、自分で幸せをつかんでいく姿勢が必要になる
【HOW】
■自分の感性を資本市場の中で武器に変える・お金に変えるていくか
問題点:グルを見つけないと進めないビジネスパーソン(メンター(グル)の偶像化・崇拝)
脳をハックされている状態(依存・思考停止)
↔️法灯明「法つまり教えを灯火のようにしていきなさい」(崇拝するのではなく)ーブッダ
グルは偶像化する段階で本質が変化してしまう、個人を偶像化すると絶対に失敗する
↔️誰かに依存するのではなく、教えを心に刻み、主体的に行動する
■古い価値観に囚われず違和感に素直になる
フィジカルに対するリスペクト↔️頭でっかちの観念の虜
人間中心主義ではなく、生命中心主義(自然は情報量が多いからこそ心地いい)
■贈与
・売れている漫画の共通点(ONE PIECE・暗殺教室・キングダム・鬼滅の刃)
・贈与論
・・いき過ぎた資本主義社会を、贈与というお金に変えられない仕組みでどう改善するか
・・受け取った贈り物をどうやって次の誰かにつなぐか(贈るか)
・時制のズレがある贈与こそ人をつなげる
・・「もうお返しはできない」が贈与的(時制のズレ・後で贈られていたものに気づく(「ニューシネマ・パラダイス」)
・・贈与という何かを贈り、贈られる行為は人を強く結びつける
・与えられていないと思うことが分断をうむ(取り扱いを間違えると格差をうむ)
・強制や義務のない贈与(その特質は交換ではない・共同体の終わるところで、商品交換が始まる)
・贈与できる人は、贈与されやすくもなる
・ポトラッチ的贈与(接待)
・資本主義は、贈与の悪い点が出ていた
・共同体をつくる力・人をつなぐ力
■身体化
・便利さだけを追い求めると五感からの情報が見過ごされる
・五感を使った入力がごっそり抜けてる
・身体を使った世界と向き合う体験が大事
・個人が機能するためには、身体的な情報と頭の中の概念的な者のバランスを取らなければならない
・東京は、そのバランスが頭に寄りすぎ→田舎にいきたくなるのは自然(地方は、ノイズ中心)
・世界を深めるのは、身体性
・自然という書物を読み取る力がとても重要
・シグナルとノイズの切り分け
・・・入力装置の感度(脳の感度)
・・・ノイズを削ぎ落として便利さを追求→身体的飢えの出現
■インフォーマル経済(タンザニア)Living for today
・思いついた時に行動に移すことが簡単で、自力で生き抜いていける
・貸し借りを含めた人的なネットワークが生きるための資本
・コミュニティから抜けることは、財産を捨てるのと等しい
・インフォーマル経済がセーフティネットになっている
・・袖の下を渡す「ずるい取引」は、いざという時に困らない≒贈与論
・分人主義社会(一部は誰かとある)
・自立を依存は対立概念ではなく、表裏一体
・相互に依存しているからこをみんなが自立できる社会
・「借り」が人生の保険になる
・・・負い目がある限り、人間関係は続く
・・・人生の保険だから、取り立ててはいけない
■不確実性
・不確実性があるから、寛容になれる
・社会から偶有性があまりにも失われた結果、不確実性が商売になる時代
・先がどうなるかわからないことは、新しい希望に溢れている
・・・ゾワゾワとした身体感覚が回復しないと、生きることの生々しい手応えは消える
・・・ゾワゾワは、問題意識のベース
・不確実性に身を投じるといきやすくなる
■生命科学思考
・会社経営にも応用できる
・組織や社会で起きていることを洞察する上で大きな切り口に
・エラーが進化(ウィルスは「進化」に寄与している)
・・大規模な自然破壊の後に感染症が起こりやすい
■定常型社会
・規模拡大より持続可能性を重要視
・三方よし(「論語と算盤」渋沢栄一)
・短期的な利益主義が会社を滅ぼす→「パーパス経営」30年先の視点から現在を捉える
・ショートターミズム:株主の短期志向に合わせて経営する会社ほど、結果的に利益をあげられていないし、イノベーションが起こりにくい
・長期的視点で経営している会社の経常利益は、そうでない会社の1.8倍
■響いたメッセージ
・一定確率でエラーを発生させることが中長期的には組織の利益になる
・やりたいことが見つからないなら、「カオスな環境に身をおくべき」
・想像できないこと、不確実なことを経験することによって初めて自分の主観的な命題が浮き彫りになる
・自分ができるかどうかわからないことに取り組んだ方が発見は大きい
・情熱があるから行動できるのではなく、行動するから情熱が湧いてくる
・人間は、行動を起こすから「やる気」が出てくる生き物。面倒な時ほどあれこれ考えずにさっさと始めてしまえばいい
・セレンディピティが起こりやすくなる環境を能動的に設計する
・イノベーションを起こせる脳にはカオスが必要
・バーチャル空間では、偶発性は生まれにくい
・「成功は目的ではなく結果だ」
■アクション
・思考のコンパスを手に入れたので、自然、生身の人間との有機的に繋がりを大事にしていく
・自分はどう思うか・どう考えるか、情報と反応の間にワンクッション置く
・大多数が正解ではないから、感じた違和感を放っておかない。性に合わないことはしない。
・与えられているものに感謝して、クリエイトしていく!エラーを恐れない。
新型〇〇がなかったら、墓場まで満員電車に乗っていく羽目になっていたんじゃないかと思う。
失うものも沢山あったけれど、茹でガエルのようになってしまっている私たちに本当に大切なものを思い出させるために、世の中の仕組みを根本から変えていくために、やはり起こらなくてはいけない出来事だったのでは?と思う。新型〇〇が私自身、今までの自分の思考や価値観を手放し、向き合い方やビジネスモデルを変えるきっかけになったのは事実。この本が面白いのは、「不確実性」をネガティブに捉えていないところ。不確実だからこそ、希望が持てる。山口さんならではの面白い視点だなと思った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?