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全身全霊で断りたかった
断る。
私が苦手とすることのひとつだ。
私は他人から頼まれたことを、なんでも引き受けてしまう。
自分がやりたいことなのかどうかなんて関係ない。とにかく相手が喜んでくれるならそれでいい。その一心で、つい受け入れてしまうのだ。子供の頃からずっとそう。嫌々ながら・・・ということもこれまでに数多くあった。
たとえば、中学1年生の頃に経験した学級委員。入学して間もないクラスのホームルームで、同じ小学校出身のクラスメイトから学級委員に推薦された。
まだクラスの全容も把握していないのに、クラス全体からは拍手喝采。「やってくれるよね?」と言わんばかりの眼差しでこちらを見つめる担任。断る勇気なんてなくて、そのまま引き受けてしまった。リーダーシップなんて、これっぽっちもないのに。目立つことなんてしたくないのに。
そんな性格は、大人になっても変わることはなかった。社会人1年目、急に頼まれる仕事を断ることができなかったのだ。
特に難しかったのが、夜勤の交代。私がお世話になっていた職場は特殊なところで、月に1~2回のペースで夜勤があった。他の部署の先輩から幾度となく舞い込んできた、夜勤交代のお願い。これに関してはさすがに断ることもあったけれど、断れないこともしばしば。無駄に夜勤が多い月もたまにあった。
先日、私が参加している『企画でメシを食っていく』(通称『企画メシ』)で、脚本家の政池洋佑さんが登壇してくださったときのこと。「勇気を持って、仕事を断る」という趣旨の話を聞いた。
話をじっくり聞いてみると、政池さんは「将来的に自分がやりたい仕事に繋がっていくかどうか」を考えて、仕事を引き受けているという。
純粋に「なるほど」と思った。
それと同時に、私に足りないのはそこかもしれないとも思った。
目の前のことに集中するだけでなく、その後の自分も想像しながら物事を判断する。当時は物事の先にいる自分を想像する余裕なんて、これっぽっちもなかった。
そう考えると、政池さんの考えは目の前の相手に一点集中型の私にはない視点だった。新鮮でありながら、核心をつく政池さんの話。画面の向こうで、自分自身の弱さを突きつけられたような気がした。
勇気をもって、断るということ。
一朝一夕でできるようになるわけではない、と分かっているけれど。将来の自分を想像し、将来の自分が後悔しない選択をすることは、日々生きていく上で大切なことだ。
今の私は、将来をどこまで見据えることができるだろうか。
将来の自分に寄り添った選択をできるようになるだろうか。
私は今の自分にできることは何か、頭の中でぐるぐると考え始めた。
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