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【いよいよ明日から!】レジ袋有料化の小売業への影響を試算してみた《実はチャンス?》

レジ袋有料化について考えてみるシリーズの第2弾として、事業者視点での影響を考えてみました。
結論として、7/1から始まるレジ袋の一斉有料化は、事業者にとっては粗利率をUPさせるチャンスだと思いました。
以下に、その考察の詳細をまとめていきます。
(今回は「事業者側がどのように対応すべきか」の問題にフォーカスするために、そもそも環境問題の対策として意味があるのか?という論点は省く)
前回の記事はこちら

有料化が義務付けられているレジ袋の種類

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前回の記事でも触れましたが、今回の制度では全てのレジ袋に有料化が義務付けられているわけではありません。(出展:経産省HP)
「持ち手のあるプラスチック製買物袋」のみが対象であり、例えば紙袋であったりバイオマス素材25%以上のものは有料化は義務ではないのです。

事業者側は対応に苦慮

これまで無料(料金込み)提供が当たり前だったレジ袋が有料化することへの対応方針は業種によってもバラバラです。
ただでさえコロナ影響で平時とは全く異なる営業を続けている最中に、政府主導の新ルール適用というダブルパンチ状態になってしまっている中小事業者も多いように感じます。

有料化はコンビニを含めて全国の小売店が対象だが、消費者には必ずしも浸透していないのが現状。繰り返し使えるエコバッグなどの販売を強化する事業者がいる一方、個人経営者からは消費行動に影響が出ないか心配する声も上がる。
 紙袋など対象外の袋を有料化する動きもある。食料品売り場でプラスチック製と紙製の両方を用意しているながの東急百貨店(長野市)は、プラスチック製を一律4円、紙袋も10円にする。石川忠幸総務部長は「目的はマイバッグ持参。紙袋の利用に流れないようにしたい」とする。
多くの常連客に支えられ、最も多い日は250食の注文を受けるが、開始まで1週間を切ったレジ袋有料化には結論を出せずにいる。「お客さまそれぞれに考えが違う。コロナにかすんで『有料化はスーパーやコンビニだけじゃない』という周知は行き届いていない印象。抵抗感のある方からは1円でも50円でも、お金をいただくのは難しい」
 国のガイドラインでは、主な業種が小売業ではない事業者(製造業やサービス業など)も、事業の一部として小売業をしている場合は対象となる。

そもそも事業者にとって有料化はポジ?ネガ?

さて、ここでようやく本題に入り始めるわけですが、そもそもレジ袋の一斉有料化は、事業者にとってはポジ or ネガどちらなのでしょうか。
3つの観点で◎(ポジ),△(ややネガ),✖(ネガ)に分けて書いてみます。

【客単価・粗利の観点】
これまでは料金にインクルードされていた、レジ袋の仕入れコストが消
 費者のマイバッグ持参によって減る。(粗利率UP↑)
非エコバッグ派は、これまで無料だったレジ袋を有料で購入していく
 。(客単価UP↑)
△消費者の中で、持参したエコバッグに入り切る分までしか買わない深層
 心理がはたらく。(買い上げ点数ややDOWN↓)

【来店頻度の観点】
△非エコバック派は、レジ袋代金の節約のために一度の買い物でなるべく
 まとめて買おうとする深層心理がはたらく(客単UP↑・頻度DOWN↓)

【オペレーション観点】
✖「レジ袋は有料となりますがご利用されますか?」のコミュニケーショ
 ンが全ての会計において発生し、接客時間が延びる。(平均5秒?)
△「ワンコイン ランチ」などシンプルな価格設定をしている事業者にと
 って、細かいお釣りの用意の必要性が発生。
 (ワンコインに据え置く場合も「本体495円+袋代5円」と内訳表示必須)

ざっくりとした考察ではありますが、客単価や粗利率のUPに貢献するポジ部分と、オペレーション負担増というネガ部分があることがわかります。
これらのポジ・ネガどちらが上回っているのか、もう少し深堀してみましょう。

具体的な収支シミュレーション

ここでは、特に大きな影響を与えている◎と✖の要素のみに絞って考えます。
レジ袋の有料化対応に伴う店舗スタッフのオペレーションコスト増を試算。
・追加接客時間   :約5秒 ※「レジ袋は~」のくだり
・店舗スタッフの秒給:0.28円 ※時給1,000円から逆算
→1会計あたりの人件費増=5(秒)×0.28(円)=1.4円

つまり、「レジ袋の仕入れコスト削減や有料化に伴うアップセルによって、粗利ベースで1.4円以上を稼げれば、事業者にとって本制度はプラスである」と言えるのではないでしょうか?

プラスチック製のレジ袋の平均の仕入れ値は2円程度 ※とのことなので、そもそも有料化した時点で1会計あたりの粗利は微増している計算になります。

※参照元
ただ、袋を例にすると、仕入れ値が1枚2円程度のプラ製レジ袋に対し、紙袋は1枚10円程度と割高。


また7/1以降も、エコバッグの持参忘れやそもそものポリシーなどからレジ袋を購入する人もいるため、事業者にとってはさらに粗利率UPが見込めることになります。
仮に来店客の20%が@3円で購入した場合の粗利UP効果は、以下の式で計算可能です。
→1会計当たりの粗利影響=(2.0-1.4)+3.0×20%=+1.2円

さらに、仮に@10円の紙袋に置き換えた場合は下記の計算ができます。
→1会計当たりの粗利影響=(10.0-1.4)+10.0×20%=+10.6円

結論

7/1から始まるレジ袋の一斉有料化は、事業者にとっては粗利率をUPさせるチャンスだと言えます。
導入初期の現場での混乱はありつつも、店内飲食か持ち帰りかの軽減税率の対応の時のように、暫くすれば消費者側でも当たり前になっていくでしょう。
今回のレジ袋一斉有料化は、長らく粗利率の低さに悩む小売業界への救済の一手(?)と言っても過言ではないかもしれません。

ただし、コンビニのような低単価×多客数で成り立っている業態においては、最も現場へのしわ寄せが大きくなることが予想されますので、暫くは店舗スタッフの悲鳴がTwitter上で飛び交う気がします。
(現場混乱とそれに伴う対応コスト増を加味すると、レジ袋代金は3円と言わずに5円くらいに設定しておいた方がよかった、、、?)

マイバック持参の利用者に対して、袋詰めをスタッフが行うのが基本のコンビニでは袋詰め時にトラブルが発生する可能性が高い。お弁当を縦に入れざるを得ない場合や、汁物がこぼれてマイバックを汚損させる可能性も。
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温かい商品、冷凍商品、雑誌、ファーストフードなど袋を分けざるを得ない商品が多い。

更なる粗利UPのための提言

前項の通り、有料化に伴うコスト増は、マイバッグ持参有無を尋ねる追加オペレーション程度です。
レジ袋代を値上げすればするほど、粗利率の改善に大いに役立つ可能性があります。
ただし、今まで通りのプラスチック製レジ袋を10円や20円に値上げしたとして、消費者が付いて来てくれるでしょうか?
当然そこには、消費者の"納得感"が不可欠になります。

そのためのアイデアの一つとして私が提言する施策は、
・エコフレンドリーなレジ袋 × IPコラボ
による、高付加価値レジ袋の追求です。
エコフレンドリーなレジ袋とは、生分解性プラスチックやバイオマス、再生紙などの今回の有料化対象外の環境に優しい買い物袋のことを指します。
IPコラボは、UNIQLOのUTとコラボするような間口の広い著名IPをイメージです。

では、なぜこの2つの掛け合わせがよいのか?ですが、
・"エコなレジ袋にちゃんとお金を払ってる感"の提供
・"本来無料のはずのレジ袋に嫌々お金を払わされてる感"の払拭

の2つを両立したものになり、消費者が新たにお金を負担する"言い訳"になるからです。

前回の記事でも触れましたが、全国民が常にエコバッグを持ち歩くというのは考え難く、今後も一定数の割合ではレジ袋のニーズは残ります。
そうなると当然、事業者側もレジ袋は常に仕入れておかなければいけないことになりますが、この際に従来の"普通のレジ袋"の使用を廃止し、真にエコでクリエイティブな高付加価値レジ袋を各事業者は販売していくべきではないでしょうか?
この「高付加価値レジ袋」の市場は、先行して盛り上がりを見せているエコバッグ市場とは全く別であり、セットで同じIPとコラボしても統一感が出て良いと思います。

実際、先日ナチュラルローソンで実験されていた"読むレジ袋"の取り組みでは、早速メルカリでも対象出品されおり、新しい市場が形成されていく予感がします。

メルカリ出品

少し長くなってしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました!
私の記事を読んで、1人でも多くの人がレジ袋有料化について考えてみて頂けると嬉しいです。
最後におまけとして、各社のレジ袋関連の最新ニュースを紹介しておきます。

おまけ


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