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障害者×テクノロジー=付加価値の創造

障害者雇用の仕事をしていて、私が最も難しいと思う一つが「仕事を作り出すこと」です。

また企業経営者が「生産性の向上」を考えた時にまっさきに思いつくことは

①IT、AI、ロボットなどのテクノロジーの導入
②アウトソーシングの活用

の2つだと思います。
アウトソーシングに関しては、私たちも作業の質と量の改善に取り組んでいたため、グループ内からも「アウトソーシング会社」としての信頼が高まり多くの発注をいただけるようになっていました。

しかし、私が最も危惧していたのはテクノロジーの進化の方でした。
オフィスワークにもRPA(robotic process automation)に代表されるようなシステムが導入されてきて、人が行っていた作業を丸ごとテクノロジーが代替することが現実味を帯びてきました。
基本的にこういったシステムが最初に取って代わる仕事は「定型・反復作業」です。

一定のルールが決まっていて、それをミスなく大量に処理するのであれば、人よりシステムにやらせた方が早いし、正確なのは当然です。しかも価格も安価になってきており、私が経営者であっても導入には前向きになると思います。

ところがこの「定型・反復作業」は障害者雇用においては、最も必要としている仕事です。これは障害者雇用を行っている会社であれば、今後どんな会社であっても当たり前にぶつかる壁だと思っています。
(というよりも、今後20年であらゆる仕事がテクノロジーで行えるようになると言われているので、これは障害者雇用に限った話ではありません。ただ障害者雇用領域が一番初めにこの問題にぶつかるというだけの話しです)

つまり社内にある「定型・反復作業」を「障害者」にやってもらうか「テクノロジー」にやってもらうかの判断が常に出てくるということです。
私はこの問題は非常に重要なテーマだと考え、この問題を何とかしないと、かなり近い将来、障害者の方々が行っている仕事はほとんどは無くなるのではないかと感じていました。

そんなことを考えていた時に、一つの話しが私のところに届きました。ソフトバンク社が「pepperを使って障害者雇用と何かコレボレーションできないか」という相談でした。
pepperと言えば企業やお店で受付を行うロボットですが、これを外部から操作できる機能を付けたので、これを在宅勤務の人が遠隔で捜査して受付業務ができないものか?という話しでした。

私はこの話を聞いて「これは面白い」と感じました。

私が一番興味を惹かれたのは、通常pepperの受付ではいくつかの定型文は読み上げることが出来ますが、それでも人が行うほど臨機応変な対応はできません。ところが、裏側に人がいることで、機械的な対応に人のぬくもりを感じさせることが出来ることで、付加価値を付けられると思いました。しかも、これを複数の場所で同時に操作できるのであれば、一人の人が複数の場所で受付をすることが出来、生産性も高まります。

コミュニケーションの臨機応変さとコストの関係
Pepper(ロボット)< 「Pepper+障害者」 < 人

つまり、人だけで行うほど臨機応変な対応はできないけど、ロボットだけの無機質なコミュニケーションにはならず、またロボットだけで行うほどコストは押さえられないけど、人だけで行うよりはコストパフォーマンスが高いという、それぞれの中間を担うことが出来ると思いました。

早速私は社内でプロジェクトチームを立ち上げて導入検討を開始しました。

この時の詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。

(参照)誰だって人の役に立ちたいと思っている

結果的にこの仕事は大きな反響を呼びました。
ソフトバンク社が開催する「SoftBank World」で講演の機会をいただきました。


またこの取組みを社内で発表したところ、その年の社員総会で「人と組織の成長創造インフラ賞」という全社で最も価値がある仕事の一つとして表彰されました。

私はテクノロジーの進化にはコンセプトが非常に重要だと思うようになりました。
「人がやらなくてもよくする」というコンセプトで進めるだけでなく(危険が伴う作業などもあるので、このコンセプトで開発することも大事ですが)、「人とテクノロジーが協働することで付加価値を創出する」というコンセプトで開発をすれば、「仕事がテクノロジーに奪われる」という不安を解消できるのではないかと思いました。

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