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【特別編】ウルトラトレイルレース(100マイル|160km)を完走するための装備とメンタル
2020年は国内、海外問わずコロナウィルスの影響でスポーツイベントはことごとく中止となりました。
私が参加しているトレイルランニングでも例外ではありません。
そんな中、今年唯一国内で開催される100マイルレース『OSJ KOUMI100』が10月10日、11日に開催されました。
台風14号が近づく中、開催自体が危ぶまれましたが、幸い台風のコースが太平洋側にそれてくれたおかげで開催の運びとなりました。
(実は昨年は台風19号の直撃を受け、開催中止でした)
OSJ KOUMI100とは
このレースは長野県八ヶ岳東部(ニュウという山)の麓の小海町という町で行われる大会で、1周35kmのコースを5周走る、全長175kmのウルトラトレイルレースです。
私は過去に3回出場して、2回完走、1回リタイヤをしており、今年も参加したかったのですが、日程の調整がつかず参加することができませんでした。
しかし私の知り合いが30名ほど出場していたので、ずっとスマホのLive速報で皆の様子を伺っていました。
レース結果としては出場者426人中、完走したのは118人(完走率27.7%)
完走率はおおよそ例年の半分程度でした。
やはり雨の影響でコースがぬかるみ、多くの選手が体力を奪われリタイヤを余儀なくされたようです。
今回私は参加しなかったものの、もし自分が参加するとしたら、どんな準備をするかということを仲間に送った内容を公開したいと思います。
これは大会3日前に仲間に向けて送った内容です。
【前提】
・台風が接近し、土曜日は朝5時のスタートから翌日の深夜2時頃まで雨予報
・気温はスタート地点の松原湖で日中13℃予報だったので、八ヶ岳の山頂付近は5℃程度になると予想
・スタート地点でも深夜帯は気温が一桁になるだろうと予想
・今年はコロナ対策で途中のエイドで水以外の補給ができないので、1周戻ってくるまでの補給食、水分は全部持たないといけない
以上の前提で対策を考えました。
◆レースの特徴
・KOUMI100は1、2、5周目が昼パート、3、4周目が夜パートになります。
・昼パートはそんなに眠気を感じないはずです。そのため3、4周目で眠気があっても5周目では目が覚めますので、それを信じましょう。
・夜パートは寒さが加わるので、動いていても体が冷える。防寒対策が必須です。
・夜はニュウから下ってくると雨の時は濃い霧が発生しやすいです。(霧が出ると真っ白になってライトで照らしても何も見えなくなるので、距離感とか場所の感覚が無くなり、疲労感が増します)
・ニュウは意外と標高が高いため、そんなに上ってないつもりなのに、意外と高山病の症状が出ることがあります(頭痛、吐き気など)。その場合は無理せずスタート地点に戻った時に症状が収まるまで休みましょう。
・ニュウからの下りは雨が降った後は非常にスリッピー。そのため靴は底がすり減っていない、グリップが効きやすいものが好ましい。
・周回コースなのでスタート地点のデポは最大限利用する。補給食、飲み物、着替えをこれでもかというほど用意することができる。(今回は寒さと雨と風が例年以上に厳しいので、それなりの準備が必要だと思います。)
◆装備、補給
・まずシューズと靴下は3セット持っていきます。イメージは3周目と4周目に履き替えます。夜間パートで雨が降っているので、どれだけ動いても体が冷え切っているはず。靴と靴下が渇いた状態のものを履けるだけで気持ちが全く違います。また靴はニュウの下りで全くグリップできない時は2周目で履き替えてもいいかも。(その際に足にワセリンやガーニーグーを塗ることをお忘れなく。マメ予防だけでなく、濡れた足を多少ですがガードしてくれる役割があります)
・今回は土曜日はずっと雨予報なので、着替えは極端な話し戻ってくるたびに着替えても良いと思います。靴と同じで3、4周目はスタート地点に戻ってきて、再スタートできるかは寒さとの戦いだと思います。全部着替えて暖かくしてスッキリした気持ちになれば、出ていく勇気が湧きます。逆に寒いと、本当に出られなくなります。特に4周目出るときは上半身だけでなく下半身も温かくして出ましょう。3周目はまだ明るい時間に出られる可能性がありますが、4周目は絶対夜(0時~3時くらい)なので、少しでも暖かくして出ないと心が折れます。登りに入って暑くなったら脱げば良いのです。
・手袋も防水タイプを2セットはあった方が良いでしょう。
・今回は途中のエイドでペットボトルしか出ないとのことなので、補給食、飲み物を全部持たないといけないので、32キロ、6時間の行動できるだけのパックを事前に作り、デポバックに入れておく必要があります。特に自分は胃が冷えると下痢と、エネルギー吸収が出来なくなるので、自分だったら軽めの魔法瓶に温かい飲み物を入れて持っていくと思います。そしてスタート地点に戻るたびに補充できるようにします。
・スタート地点に戻ってきたら、固形物で補給をしっかりとります。カップラーメンやぶっこみ飯がおススメ。特に後半は途中でジェルが取れなくなる可能性が高いです。その時に固形物が胃に入っていれば最悪ジェルが取れなくても、ギリギリ体は動かし続けられます。その際に冷えたパンやおにぎりだけだと、胃が消化してくれない可能性があります。
・ヘッドライトは3周目と4周目は取り替えます。光量が少なくなると目が疲れて余計に脳が疲労します。ここはもったいないとか考えずに、光量マックスを維持することを優先させましょう。
・トイレはコース上は稲子湯で綺麗なトイレがありますが、トイレットペーパーが最悪濡れていたり、切れている可能性もあるので自分はトイレに流せるウェットティッシュを持っていきます。これはウォシュレット代わりになるので、自分は必ずウェットティッシュを使います(こういう気持ちの良さを少しでも味わうことはメンタル上とても大事)
◆事前準備
・カフェインは効きを良くするためにも今日からスタートするまで絶対にとってはダメ。本当は1週間は抜きたいところ。またレース中に眠くなる前にカフェイン入りのジェルとか、コーラを飲んでいる人がいますが、それも意味がないので、基本的にカフェインは眠くなってから、またはどうしても足が動かなくなったとき、あとはメンタルが折れそうになったときのカンフル剤だと思って採ってください。
・レーススタート直前まで出来るだけ体は休めておきます。車で行ける人は車の中で休んでましょう。皆ではしゃぎたい気持ちも分かりますが、自分は完走することを優先させるので、出来るだけ休みます。
◆心構え(メンタル)
・完走したいのか、タイム・順位を目指すのかを混同しないようにしましょう。よくあるのが「完走したいです」と言いながら、レースが始まると前の選手を追っていったり、抜こうと頑張っている人がいます。完走することが目的なら他人に惑わされず自分の身体だけに集中しましょう。磯さんもよく言うように100マイルは100キロ過ぎてからが本当の勝負なので、その前に無駄なメンタルは使わないようにしましょう。
・レース中必ず「レースを止めた方がいい理由」が頭の中に浮かんできます。これは絶対だと思います。それは人間がコンフォートゾーンから外れた時にコンフォートゾーンに引き戻そうとする防衛本能です。おそらく皆さんなら今までに80~100kmまでは走った経験があると思いますので、そこまでは皆さんのコンフォートゾーンになっていると思います。しかしそれを超えると、体が壊れると脳が思うので、それ以上走らないように止めさせる理由を脳が超クリエイティブに発想します。それは本当に巧妙な理由が浮かびます。しかし基本的にそれは全て脳が作り出した幻想ですので、そのいうことを聞いてはいけません。そういう発想が浮かんだら「来た来た。想定内^^」と呟き受け流しましょう。
・常に頭の中では「ゴールした自分」だけを想像しましょう。ゴールした時に皆からの祝福の言葉を受け、羨望の眼差しで見つめられている自分を想像しましょう。そして、この難コースを攻略した自分を誇らしく思い、そしてゴールした喜びと感動を感じている自分を想像しましょう。「ゴールしたい」という希望の言葉よりも、「自分はゴール出来る」「ゴールして皆の祝福を受けている」という現在形で考えることが心理学的にも有効だと実証されてます。
これだけ準備をしたとしても完走率が30%を切る過酷なレースでした。実際私が参加したとしても完走できたかどうかは分かりません。
当日の体調やコースコンディションによって全く状況が変わります。
今回参加して完走した選手は本当に強いと思います。
私もまた来年は出場できるように準備したいと思います。
【写真ギャラリー】
本来であれば八ヶ岳(ニュウ)は苔むした美しいトレイルが続く山です。
10月は既に紅葉が始まり最高の景色を眺めながら走ることができます。
ところが今年はスタートから雨
トレイルも川や田んぼの中を走っているようです。
例年であればエイドで温かい飲み物、食べ物が振舞われます。途中のエイドでの焚き火は本当にありがたい(写真は2017年)
終わった選手の靴が今回のレースの過酷さを物語っています
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