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『天気の子』を観た感想と『ウィザーズ・ブレイン』を読み直した話


正月休みにテレビ放送していた『天気の子』を見ました。
私のストライクゾーンに直撃するボーイ・ミーツ・ガールだったので、勢いで感想を書きます。ネタバレありです。

こんなにも私の胸を打った理由を考えていたのですが、myベストラノベである『ウィザーズ・ブレイン』との共通項が多かったのがポイントだったかもしれません。
天気の子もウィザブレも私のツボに刺さる設定・シチュエーションが多かったのですね。

ということで、天気の子とウィザブレの共通点を軸に書いてみます。
なお、天気の子とウィザブレに言及している先達がいたので(驚き!)
以下にご紹介いたします。


一応、両作品について

・天気の子

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新海誠監督作品、で通じる人には通じる。2019年公開。
家出少年の穂高と、晴れ女の陽菜の出会いから始まる物語。
キャッチコピーは「これは、僕と彼女だけが知っている、世界の秘密についての物語」
私は新海作品は『秒速5センチメートル』から入りました。

・ウィザーズ・ブレイン

ウィザブレ

著者は三枝零一。1巻発売は2001年発売。気候変動により荒廃した世界でギリギリを生きる人類の話。《情報制御理論》という架空の理論に基づき、《魔法》を使う魔法士が登場する。
刊行ペースは決して早くない。だけど読んで欲しい。新刊をずっと待っています。

世界と恋を天秤にかける

ここからは、主観バリバリで両作品の「共通点かも!」というポイントを語っていきたいと思います。あくまで、私がそう感じたという範囲なのでご容赦を。
ここからウィザブレに興味を持った方がいたら是非ご一読ください。

・出会いはミッションを通して

神津島(?)から東京に飛び出してきた穂高は、晴れ女を探す中で天気を変える力を持つ陽菜と出会いました。偶然拾った拳銃という強烈なスパイスを含むシーンでしたが、優しくしてくれた女の子のピンチを見過ごさない、穂高が意気を見せるシーンでした。
ここまで作中ではずっと雨で、陽菜が晴れを呼んで明かりがさすシーンの綺麗さが際立っていました。新海監督の作品世界の美しさは今更語るまでもありませんね。

ウィザブレでの出会いは、フリーの便利屋である主人公の錬が、軍事機密の輸送品の奪取依頼を受けたところから始まります。その軍事機密がヒロインのフィアでした。実は(数少ない人類生存圏である)シティのパーツとして作られたフィアの、思い出作りのために仕組まれた出会いでした。
この一連の流れで,魔法士や世界の状況が解説されますが、生体コンピューターや情報の海,”魔法なのに科学”という設定の数々が当時の私には最高のワクワクでした。錬の家での一幕は、登場人物の顔見世だけでなく、肉まんにも注目を。

・そのチカラが救うもの

ストーリーが進む中で明かされる晴れ女としての能力と人柱という描写。能力を使うたびに陽菜は体が透過していたようですが、どの段階から生じていたのでしょうか。穂高と、陽菜の弟の凪との晴れ女サービス、そして生活を守るのを優先していたのでしょうか。この辺を掘り下げて考えると、いじらしく思えます。

ウィザブレのフィアは、前述の通り人類(シティ)生存のためのシステムパーツとして生み出された魔法士。つかの間の人間としての生活を、目いっぱい体験しようと過ごします。
その生活を通して、シティとそのおこぼれで維持される錬の町の姿を知ったフィアは、その時言える精一杯の真実を錬に告げます。
フィアの告白は、後の章にて隠された本音が伝わってしまう別シーンがあります。それなのにこの時点でもう感情が追い付きません。

・蜜月と別れ

前項とも重なりますが、晴れ女サービスが軌道に乗っていたシーンは絶妙なバランスでした。この時間がずっと続いて欲しいと思わせる美しさ、雲を裂き日差しが差しこむ神々しさ。一方で迫りくる警察と児童相談所。子供達だけでは生きていくには厳しい現実が迫りますが、なんとか無事を祈りたくなる儚い時間でした。

美しさとしては、錬がフィアを軌道エレベーター内の花畑に連れて行くシーンからの流れも大変綺麗です。世界から無くなったはずの本物の青空。2人の見えないところで現実(シティの事情)が明らかになる、という読者のみに伝わる切迫感がありました。

・指輪と”あなたの住む世界”

穂高と陽菜と凪の逃避行のなかで、穂高から陽菜へ誕生日プレゼントの指輪を渡すシーンがあります。湯上りの陽菜にドギマギしたのは視聴者もでしょうね。気になる子とお泊りで(川の字とはいえ)同じベッド。ロマンあるシーンが逃避行のハイライトであり陽菜の消失という展開との落差を与えました。
穂高に雨がやんで欲しいか問うた陽菜。自分の能力、そして最後をどうするかを再確認したのでしょうね。「なぜ」とは言えない。しかし如何にすればよかったのか、懊悩させられる場面です。

ウィザブレでも、フィアは錬とその町の為にシティの人柱(マザーコア)となる道を選びます。フィアの能力故に、共に生きたかったという思いが錬には伝わりながらの別れ。フィアが何故そうするのも分かってしまう錬は動くことの出来ません。
私事ですが、私とウィザブレの出会いは中学生の事。初読時の、なんて綺麗でどうしようもないのだろうと感じた記憶は今も鮮明です。
錬とフィアの物語に指輪は出てこないのですが、ウィザブレ2巻に指輪が登場します。相手の為に用意し、そして離別を演出してしまう、それでも大切な指輪が。

・「結局、好きだからだよ。他の理由なんかいらない」

セカイ系と表される作品の中には、2人の別れで終わるストーリーもありました(過去の新海作品にも)。しかし、穂高は陽菜を迎えに走ります。警察から逃げ、夏美さんの手を借り、ある種で背中を追う存在であった圭介と対峙して、それでも陽菜の元へ向かいます。
急転直下な描写続きとも感じましたが、とにかく陽菜を選んだ、その事実が大きな意味を持つシーンなのだと思います。
陽菜が晴れをくれた、陽菜のいない世界。しかし穂高の胸には突き動かすような陽菜への思い。このシーンがボーイ・ミーツ・ガールの一番アツい所だと思います。

かたや錬。小見出しにしたのはウィザブレの錬の台詞です。
フィアにもう一度会いたい。双子の兄姉、真昼と月夜のアシストを受け、思いを胸に、シティを守る祐一の前にたどり着いた錬。その場で放つ台詞です。
祐一も天気の子の圭介と同様に背中を追うポジション。動機(フィアへの思い)を告げるシーンであり、少年漫画的な”越えていく”シーンだと思います。問われて、この答えがストンと出てくる錬。しなやかで若いですね(感想がオッサン丸出し)。

・変わる世界

陽菜を助けた事により東京は雨のやまない地にりました。低地は水没、鉄道網も寸断した様子。私はそもそもの雨が降り始めた理由を読み解けませんでしたが、穂高の選択の結果生じた現象は、都市の水没として明瞭に描かれました。そんな世界も美しく描き込んであり、じめじめした感じの無い空気間に仕上がっていたのが印象的。
保護観察を終えて東京に来た穂高が陽菜に直ぐに会いに行かなかったのは、この現実を前に(無意識に)過去の自分の決断を疑ってしまったからではないでしょうか。もちろん、クライマックスの陽菜との再会で気持ちの揺らぎは霧散したようですが。2人とも、一目見た瞬間に「あの日々の記憶」の鮮やかさが蘇っていましたね。
冷静なつもりで書きましたが、このシーンでの我が家は「はやく陽菜に会いに行け!」と夫婦そろって悶々としていたことが後に判明しました。見たいじゃないですか、ハッピーエンド。世界は変わってしまいましたが、2人が再開できればボーイ・ミーツ・ガールは大団円なのです。

天気の子とウィザブレで似ていると感じた要素の1つに、気候変動が背景にある点があります。錬とフィアの再会は、結果としてシティ神戸の崩壊と共に成りました(仕組んだのはマザーコアを受け入れきれなかった七瀬将軍でしたが)。
決着後に、生き残った市民が青空を目撃するという描写も、雲に閉ざされ荒廃した世界に変化の気配を感じさせた事でしょう。
「愛する人がそばにいれば、それだけで世界は美しい。」作品の要所で登場する作中歌のように、2人のこの先を予感させながら話は終わります。

最後に

勢いだけで書いてきました。思いっきり自己満足ですが、いい映画を見た後の感情を文字にするのは初体験だったので面白かったです。
また、ウィザブレを読み直したのも何度目でしょうか。人生の色んなタイミングで読んでいますが、色んな見え方をするので、1つの物語と長い付き合いをするのも良い物ですね。
願わくば、続きの出版が早くなされますように…。

体裁も怪しい乱文にお付き合いいただきありがとうございました。

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