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富士額【慣用句】widow's peak(『ダ・ヴィンチ・コード』)
His dark hair was slicked back with oil, accentuating an arrow-like widow's peak that divided his jutting brow and preceded him like the prow of a battleship. (p.21)
黒い髪はてかてかのオールバックになでつけられ、矢印のような富士額が突き出た眉根を分断している様は、戦艦の舳先が水先案内をしているみたいだった。
大ヒットしたサスペンス小説の冒頭、司法警察の警部の描写である。
翻訳家の岸本佐知子さんがある本で、「三大使いたくても使えない訳語」として、「黒山の人だかり」「カマボコ兵舎」、そして「富士額」をあげておられた。その禁を破って、ここではあえて「富士額」を使って訳してみた。
widow's peak とはV字型の額の髪、つまり富士額のことで、「女性にこれがあると夫が早死にすると信じられていた」(英辞郎)という。
この言葉がいかつい男性にも使えるというのは朗報である。男に「未亡人」と言っていいのなら、翻訳小説に「富士額」を使ったっていいじゃないか。読むの日本人なんだし。
そういうわけで岸本さん、使わせていただきました。許可を得るようなことじゃないけど。
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