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見る場所を見る——鳥取映画小史④

2022年1月24日(月)〜1月30日(日)にかけて、ギャラリーそらで行う展覧会「イラストで見る、鳥取市内の映画館&レンタルビデオショップ史」の解説文(会場に設置予定)を、5回に分けて掲載します。

第1章「劇場と活動写真(1898〜1936)
第2章「戦争・災害からの復興(1937〜1958)
第3章「テレビの登場と自主上映ブーム(1959〜1982)

年表作成中

(1月24日から始まる展示に向けて年表を作成中です。)

第4章 映画とビデオ(1983〜2000)

 テレビとの共存を模索していた映画館に、次なる「撹乱」をもたらしたのはビデオです。鳥取市では、1983(昭和58)年頃に初めて一般劇映画中心のレンタルビデオ店が開業し、その後、各地に続々と新たなレンタル店が出来ていきました。特に勢いがあったのはビデオショップコアラです。駅前店二階店城北店と複数店舗を構え、八頭郡郡家町や岩美郡岩美町にも進出しました。また鳥取駅前の鳥取ビデオセンターは、ランボーの絵がでかでかと描かれた壁面広告で道行く人々の目を惹きました。

ビデオショップコアラ城北店web

ビデオショップコアラ城北店
(2015年5月/Google ストリートビューのタイムマシン機能を使用)

 レンタルビデオ店が増加する中、映画館からは客足が離れていきました。1984(昭和59)年10月に末広映劇、1986(昭和61)年1月に名画座が閉館。1991(平成3)年2月には鳥取映劇も閉館し、鳥取市内の映画館は二館にまで減少してしまいます。ビデオのせいで映画興行が危機に瀕しているとの声が上がる一方、映画館の閉館はビデオが原因ではないとの反論や、むしろビデオは映画文化の裾野を広げているとの意見が出るなど、議論が噴出しました。

 1983(昭和58)年12月に鳥取映画村が休止すると、一時期の自主上映ブームのような勢いはなくなりましたが、その後も様々な上映団体が活動をしていました。1980(昭和55)年に鳥取市社会教育事業団が設立した鳥取名画鑑賞会は、鳥取市文化ホールで毎月一回の会員制上映会を行い、1992(平成4)年まで継続しました。1986(昭和61)年設立の鳥取映画センターは、自治体や学校などにフィルムの貸出を行い、自主上映会実施のハードルを下げることに貢献しました。

 1978(昭和53)年7月に川端から南吉方に移転していた世界館は、1991(平成3)年7月にシネマスポット フェイドインとしてリニューアルしました。お洒落な外観と吹き抜けのホール、オープンスペースを備え、タウン誌『スペース』と組んでのレイトショーや銀幕夜会(食事付き貸切上映)などの企画も、コアな映画ファンや若い観客の関心を惹きました。フェイドインは、ミニシアターのない鳥取でそれに代わる役割を果たしたと言えるでしょう。

フェイドインイラストweb

 1978(昭和53)年から1997(平成9)年まで発行されたタウン誌『スペース』を読むと、映画館の上映スケジュール、テレビ放映される映画案内、自主上映団体の紹介、お勧めレンタルビデオなど、誌面各所に棲み分けるかたちで映画関連情報が掲載されています。それぞれ異なる時代に生まれたメディアと映画との関わり合いの歴史が、一冊の雑誌の中に多様な鑑賞形態として空間的に配置されている——そこにはまさに、鳥取における映画の生態系が記録されているのです。



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