マガジンのカバー画像

映画による場所論

3
運営しているクリエイター

記事一覧

津村喬「鏡の国のゴダール——イタリアへの旅あるいは〈黒画面〉試論」を読む

津村喬「鏡の国のゴダール——イタリアへの旅あるいは〈黒画面〉試論」を読む

前回に引き続き、次は津村喬「鏡の国のゴダール——イタリアへの旅あるいは〈黒画面〉試論」(『映画批評』1970年3月号、新泉社)を読んでみることにしたい。特集上映「ゴダールマニフェスト」に関連して、主に『イタリアにおける論争』について書かれた論考で、足立正生や蓮實重彥らとの間で議論された「黒画面」論争の発端となったことでも知られている。

三つの次元における旅 津村喬は1970年10月から始まった特

もっとみる
原将人『世界‐内‐存在の風景論的眺望』を読む

原将人『世界‐内‐存在の風景論的眺望』を読む

 原将人の論考「世界‐内‐存在の風景論的眺望」は、第二次『映画批評』創刊号(新泉社、1970年10月)に掲載され、後に単著『見たい映画のことだけを……』(有文社、1977年)にも「風景論的眺望」と改題して収録された。同論は、原将人の映画制作の方法を知る上でも、また松田政男や足立正生、中平卓馬らによって議論された風景論争を読み解く上でも、欠かすことのできない重要な位置を占めている。だが、私も含めて当

もっとみる
「映画による場所論」を再起動する

「映画による場所論」を再起動する

都市の全域的なリアリティを求めて 鳥取であれ茨城であれ、沖縄であれ東京であれ、わたしたちは特定の「都市」あるいは「地域」と呼ばれるものを容易に思い浮かべることができる(と信じている)。が、それを具体的に説明しろと言われれば、途端に言葉に詰まってしまう。わたしの頭の中にある「鳥取」は、都道府県や市区町村の地理区分で表せるものではないし、鳥取砂丘や湖山池などの有名なランドマークで語り尽くせるようなもの

もっとみる