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#60 地下通路と彼女の犯罪歴 ①

思わせぶりなタイトルですね。先週末に2日間、デンマークのコペンハーゲンを訪ねました。土曜日の朝一番に自宅を出て、その日は市内観光、日曜日はコペンハーゲン・ハーフマラソンに参加しました。今回と次回の記事で、コペンハーゲンでの2つの素敵な出会いを紹介します。



ストランゲーゼ30番地

先の投稿「#35 ストランゲーゼ30番地🇩🇰」で、僕がコペンハーゲンで一番訪ねたい場所は、大好きな画家ヴィルヘルム・ハマスホイが暮らした家だと書きました。その住所が「ストランゲーゼ30番地」です。
 彼の絵の多くがその家の室内を題材として描かれているので、ハマスホイのファンにとってはいわば「聖地」です。しかし残念なのは、その場所が今も誰かに所有されており、博物館などとして内部が公開されているわけではないことです。

街並みを見て歩きたかったので、コペンハーゲン中央駅から歩いてストランゲーゼへ向かいました。「ストランゲーゼ」の「ゲーゼ = gade」はデンマーク語で street の意味です。なので、「ストランゲーゼ:Strandgade」は「ストランド通り」を意味します。地図を見ながら少しずつ歩いていくと、〇〇gade がたくさんあり、ついに Strandgade の看板を見つけました。感無量でした。

ストランゲーゼはストランド通り

ストリートナンバーは偶数と奇数がそれぞれ通りの両側についているのが一般的なので、30番地に行くには偶数側を探します。24、26、28と来てついに30番地を発見。ハマスホイの本で見たあの家がありました。
 ドイツの多くの建物と同じく、最下階は半地下になっており、その上を1階と数えるので、2階部分がハマスホイ夫婦の暮らした家です。あそこで120年前に大好きな絵が描かれたのか……と遠い昔に思いを馳せました。

この家の2階に、ハマスホイ夫妻が暮らし、多くの名画が生まれた
たしかに30番地とある〜ついにここへ来た!

ストランゲーゼ28番地

しかし、半地下部分は住居ではないようです。よく見ると、ストランゲーゼ28番地となる隣の建物の半地下と30番地の半地下が「SOLOMODA」という名前の衣料品店になっているようです。
 日本でも1階が店舗で上がマンションという建物がよくありますが、ヨーロッパにも多いです。隣り合った二つの建物の半地下が同じ店舗になっているということは、ひょっとして……少し勘が働きました。ヨーロッパでは古い建物を後から繋いだり、後付けでエレベーターを設置したりするのです。28番地のお店に入ってみることにしました。

 僕:こんにちは、もう開いていますか?
店員:はい、開いていますよ。

デンマークではいきなり英語で話しかけても大丈夫

上品な店で、僕の好みのジャケットやシャツが勢揃い。ほとんどが無地で、でも色使いがとても美しい。季節柄か、麻素材のものも多い。これは、欲しくなる……

店員:何か特にお探しですか?
 僕:いえ。ただ、外を歩いていると素敵な色のシャツが目に入って
店員:そうですか、どうぞご覧ください

一人で見て回りたかった

見つけた地下通路

店の中を30番地の方向へ行くと、やはりありました、地下通路です!後から掘ったと思われる細い通路が、28番地と30番地を繋いでいて、そこを通ればストランゲーゼ30番地のハマスホイの家の下に入れるのです。写真はその地下通路です。ハマスホイ関係の本でも見たことがないので、本邦初公開だと思います。

ストランゲーゼ28番地から30番地へ行ける地下通路

外から見えた部分は、メンズのシャツ売り場でした。僕が好んで着るような、濃いめの青や紺のイタリアンカラーのシャツ。手に取ると生地がとても柔らかくて肌触りがよく、糊付けなしでソフトに着るシャツなのだと分かります。奥はスーツ売り場。ヨーロッパへ来て初めて衣料品店に入りましたが、この店のものは僕の趣味にぴったりでした。

正面のシャツ売り場が、外から見える30番地の半地下になる
上のシャツ売り場の奥は、スーツ売り場〜値札は見なかった

店を出る時、あることを決めて店員さんに再度話しかけました。

 僕:友達がコペンハーゲンに住んでいるので、また来ることがありそうです。奥の部屋のシャツがとても気に入ったので、その時に買いますね。
店員:そうですか、お待ちしていますよ(Please come back!)

「何かの約束」があると再訪は実現しやすい

あのシャツを買いに

ハマスホイの家の半地下売り場で見つけたシャツは、1枚1,100デンマーク・クローネ前後(日本円で23,000円)と高価なものでした。きっとあの売り場のスーツは10万円を超えるものばかりでしょう。でも大切な時のために、あそこでシャツを1枚買おう、そのために節約して貯金しよう、と心に決めて店を出ました。

*     *     *

店を出た後そうだ、と思い出してスマートフォンを取り出しました。そして、同じくハマスホイが好きでストランゲーゼを訪ねる予定だという note 友達に、「秘密の地下通路」の話を伝えました。Wさん、あの地下通路を通って、30番地の地下には入りましたか?

今日もお読みくださって、ありがとうございました👔
(2023年9月23日)

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