最古の真核生物

最初の頃の生命がどんな構造していたかは正確にはわかっていませんが、イラストにあるような機能は少なくとも持っていたと考えられています。膜、遺伝、代謝、とまとめられるでしょう。このような単純な構造は原核生物のそれに類似しています。これは原核生物が生物の共通祖先に近いことを暗示しているようです。現存する生命はバクテリア、アーキア(古細菌)、ユーカリア(真核生物)に大分類されます。バクテリアとアーキアが原核生物です。ではそれらはいつ分岐したのでしょうか。ここでは最も構造的に複雑な真核生物が最も遅く分岐したと仮定してお話しします。

真核生物はご存知のように私たち動物や植物など、わたしたちが目で認識できるような生物は大体これにあたります。原核生物はほとんど上のイラストのような単純な構造をしています。これはいかに真核生物が複雑か顕著に表しています。そんな我々が脈々と受け継いできた、我々が今持つDNAという祖先からの手紙の最初の1枚目はいつ始まったのでしょうか。

それは現在のところ、46億年の地球の歴史における、16〜18億年前だと考えられています。これは原核生物の誕生から20億年近く経った後だと考えられます。結構若いですね(地質学的スケールでは、、)、我々の共通祖先は。

なぜそういえるのでしょうか。
まず同位体地球化学的な証拠。生命は炭素や窒素、硫黄、他にも金属などを体の一部にしたり、酸化還元反応によるエネルギーをこれらから獲得します。この時の化学反応の痕跡が残ります。この痕跡を丹念に調べると、原核生物にしか無い代謝経路の痕跡である硫黄安定同位体分別というものが見出されたりします。これが35億年前の地層から見つかっています。また同じく35億年前の地層の岩石の中に保存されたガスには原核生物の代謝であるメタン生成やメタンを食べる生物をしめす炭素安定同位体分別の痕跡が残されていました。これは35億年前には原核生物が繁茂していたことを示します。

次は化石記録です。
微生物なのに化石?と思うかもしれませんが、微生物も化石になります。微生物は骨がありませんが、そのフニャフニャの体ごと岩石の中に保存されることがあります。琥珀の中に虫が入っているものを見たことがあるかもしれませんが、それの微生物バージョンです。真核生物は遺伝情報の入った核を包む核膜を持っていたり、細胞サイズが大きく、細胞内にオルガネラとよばれるいくつもの器官があります。一方原核生物は小さく(10ミクロン程度)、膜と非常に単純な内部構造しか持ちません。そのような観点で見ると、およそ19億年前までに見つかる微生物化石は原核生物的です。カナダ、Gunflint、microfossilと検索するとその一例が見られます。

そして間違いなく真核生物だろう、という化石は18ー16億年前の地層に突如として出現します。この2億年の幅は見つかった地層の年代測定の幅がそのくらいあるためです。

形だけで判断してて大丈夫?ということで、バイオマーカーと呼ばれるものでも検証されています。これは化学化石とも呼ばれています。バイオマーカーには明るく無いですが、原核生物のみ、もしくは真核生物のみが用いる脂質由来の物質をその生物の痕跡として用いるものです。たとえば真核生物に由来するバオマーカーとしてはステラン (ステロイドが変化したもの)が使われるようです。

たとえば、21億年前の地層からは原核生物のバイオマーカー分子であるホパンが見つかっています。そしてステランに関しては最古のもので17億年前のものが見つかっています。つまり化石記録ともほぼ一致するわけです。

もちろん今までのものはほんの一例ですが、これらの証拠から真核生物の起源はおよそ17億年前くらいと言われています。

真核生物は原核生物よりも数十倍効率よくエネルギーを獲得する能力を得たためにこれほどまで複雑に大きく発展してきました。その生命史における特大のジャンプは何によって駆動されたのでしょうか。気になります。

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