Kou

サイエンスが好きです 博士(理学)

Kou

サイエンスが好きです 博士(理学)

マガジン

  • 生命の起源と進化

  • 雑記

  • 科学コラム

  • 宇宙と地球

最近の記事

最古のチラコイドの痕跡

光合成にもいろいろありますが、酸素を発生させる光合成、いわゆる植物がしているような酸素発生型光合成(oxygenic photosynthesis)の起源は27億年前くらいと考えられていますがまだ議論中です.その起源から時間が経ち、酸素が地球に蓄積されていくと地球の大気と海洋の酸化還元環境と生態系に大きな影響を与えました.いっぽ初期のシアノバクテリアの化石記録は曖昧です. チラコイドは葉緑体や、シアノバクテリアの膜に結合した区画であり、光化学反応を担っています.光によって水

    • ブルーカーボン

      最近のネイチャーの論文でブルーカーボン生態系(blue carbon ecosystems: BCEs)について紹介されていましたね.タイトルはBlue Carbon As a Natural Climate Solutionだったと思います.つまりブルーカーボンとやらが気候(ここでは炭素循環)に対しての一つの解決策になりうるのでは?という旨の論文です. 昔?いわゆる陸上植物の保全による気候変動対策、特に二酸化炭素の吸収などの役割を強調する文脈でグリーンカーボンという言葉が

      • バスと尿素水

        私は寒い日は最寄駅からバスを使って自宅まで帰る。いつも乗ってるバスが到着すると、そのバスの側面の一部に「尿素水」と書いてあるのに気づいた。なぜ今まで気づかなかったのか。そもそもバスになんで尿素水がロードされてるのか。 これは調べてみると、バスのディーゼルエンジンから排出されるガス中の有害物質を除去するためのシステムらしい。 ディーゼル車はガソリンではなく軽油を燃料にしている車で、ガソリン車とは様々な点で違う。それは軽油とガソリンの化学的性質の違いに起因するようである。違い

        • アーマーを持つ虫

          2020年のNature Communicationsによるとハキリアリの一種(Acromyrmex echinatior)がマグネシウムを含む炭酸塩鉱物(つまりドロマイトだろうか)からなる「装甲」を有してることがわかったらしい。 ハキリアリといえば葉っぱを噛み切って敷き詰め、育った菌類を食べて子供を育てるような「農業」を行うアリとして知られているが、外骨格上に鉱物を備えていることは面白い。 だいたい虫といえばタンニングと呼ばれる外骨格のクチクラ(いわゆるキューティクル)

        最古のチラコイドの痕跡

        マガジン

        • 生命の起源と進化
          7本
        • 雑記
          9本
        • 科学コラム
          8本
        • 3本
        • 宇宙と地球
          9本

        記事

          ヒ素(2) 毒?薬?

          ヒ素を代謝している微生物の報告、これは結局ヒ素耐性を持つだけだったのだが、に始まり、ヒ素が生体内でどうのように毒性を表すのか、そしてそれはヒ素のどのような化学的性質からもたらされるかについて先日のnoteで書きました。先日書ききれなかった人間とヒ素の関わりについて今日は書きたいと思います。 ヒ素は毒なのか、薬なのか? この問いには「両方だ、そしてボルジア家の人間に尋ねるか、医師に尋ねるかでその答えは違ってくる」と答えていた人がいた。 いわゆる毒と言われる天然もしくは人工

          ヒ素(2) 毒?薬?

          ヒ素

          国立科学博物館では毒展なるものをやっているようですし、毒のようなビビットな見た目のものや危なげのものには何か人間を惹きつけるものがありますよねきっと。怖いから理解したいのか、怖いもの見たさなのか、何かそういう危なげなものに魅力を感じてしまう本能なのか。 ヒ素といえば2010年にヒ素をDNAに使う微生物が見つかった、という論文が 発表されました。え、リンじゃなくていいの?というか毒じゃないの?っていうセンセーショナルな論文でした。 ←これはこの後の追試によって、ただ「ヒ素耐

          ヒ素

          名作 『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド

          1925年に発表された小説でアメリカの大手出版社ランダムハウスのモダンライブラリーの選ぶ20世紀最高の小説の2位に選ばれていて、アメリカの学校の教科書などにも取り上げられるような作品らしい、『グレートギャツビー』を今更ながら読みました。 あらすじは書きませんが、裏表紙の内容紹介を下に記します。 自分用のメモのようなものですが、名作なので今更かもしれませんが一応ネタバレをしないように、この作品のエッセンスが詰まった上記の内容紹介に沿ってこの作品の世界を紹介します。 「絢爛

          名作 『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド

          「窒素ー農業ー戦争」

          今から一万年ほど前に人類は農耕を始めたことで安定して個体を増やすことに成功してきました。この農業において「窒素」が非常に重要です。 農業と窒素 農業に必要な要素として「窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)」が重要なことが知られています。カリウムとリンは岩石によく含まれていて、水と反応することで溶け出します。一方で窒素は岩石にはほとんど含まれず、大気には78%含まれているのですが、反応性が低く水に溶け出したりはしません。そこで根粒菌と呼ばれる菌やシアノバクテリアという細菌の

          「窒素ー農業ー戦争」

          「暗い太陽パラドックス」

          「暗い太陽のパラドックス」という言葉を知っているでしょうか。昨今は地球温暖化と二酸化炭素の関係が地球科学の領域を超えてSDGsという枠組みの中でも取り上げられているのはもう今更私が取り上げる必要のないくらい取り上げられています。この暗い太陽のパラドックスという過去の科学者たちが取り組んできたパラドックスには、我々の住む「宇宙船地球号」の古代の姿とこれからの姿を明らかにする上でたくさんの示唆を与えてくれます。 ここからはこの暗い太陽のパラドックスについてお話しし、地球システム

          「暗い太陽パラドックス」

          アボカドくん

          ふとアボカドを買った時に妙な考えごとをしてしまいました。論理は破綻していますが、ふと思ったのでごちゃごちゃ言います。 最近、というか以前から部屋の中で植物を栽培するのが趣味の一つです。元々植物や動物や虫を眺めたりするのは好きなのですが、植物でも育ててみようということで数年前から育てています。ズボラな性格故に、枯らしてしまうが怖かったので、サボテンや多肉植物、オリーブのような比較的丈夫でてのかからない植物を中心に育てています。今はだいぶ種類も増えています。 そのながれで何か

          アボカドくん

          最古の真核生物

          最初の頃の生命がどんな構造していたかは正確にはわかっていませんが、イラストにあるような機能は少なくとも持っていたと考えられています。膜、遺伝、代謝、とまとめられるでしょう。このような単純な構造は原核生物のそれに類似しています。これは原核生物が生物の共通祖先に近いことを暗示しているようです。現存する生命はバクテリア、アーキア(古細菌)、ユーカリア(真核生物)に大分類されます。バクテリアとアーキアが原核生物です。ではそれらはいつ分岐したのでしょうか。ここでは最も構造的に複雑な

          最古の真核生物

          “頑張らなくていい”の功罪

          こんばんは。 今日たまたまタイトルのような言葉を聞いて、何やらモヤモヤしたので整理のために珍しくこのようなテーマでお話し。 はじめに言っておくと別に死ぬ気で頑張るのがいいに決まってんだろって話ではなくて、その言葉の真意は額面通り全員が受け取っていい真理では無いだろう、ということです。 最近の世間では頑張らないで生きることを推奨するような、嫌なことは避けていこう、というようなメッセージをよく見かけますし、若い人を中心に支持を得ている気がします(と僕は思っています)。 実際

          “頑張らなくていい”の功罪

          不思議な惑星たち

          宇宙は限りなく広い。私たちにとって身近な惑星はもちろん地球だろう。地球のこともかなりの解像度でわかるようになってきたのは確かだが、太陽系外の惑星のことも段々にわかるようになってきた。そんな太陽系外惑星(いわゆる水金地火木土天海以外の惑星)についてまとめてみたい。 太陽系の惑星の基本性質 岩石惑星(水金地火)、ガス惑星(木土天海)があり、岩石惑星で地球は最大の半径と質量を持っている。ガス惑星の質量の最小は天王星だがそれでも地球より十五倍の質量を持っている。ガス惑星といってもか

          不思議な惑星たち

          生命の生まれる準備、より大きな分子に向かって。。。

          こんばんは。​ 前までの記事で生命とはいったい何なのか、その定義と、生命が生命たる条件について説明し、その生命の誕生に向けてどんな準備が必要なのかについて二つ目の記事で書きました。生命が生まれるにはいくつものハードルがありますが、今回は生命の部品が繋げて大きくしていく過程についてお話しいたします。 生命にとってタンパク質や資質拡散が重要な分子である。細胞を構成するタンパク質や核酸は,それぞれアミノ酸とヌクレオチドの多量体である。 そしてヌクレオチドはリボースまたはデオキシ

          生命の生まれる準備、より大きな分子に向かって。。。

          感染リスクを簡単に理解しよう(仙台)

          私のすむ宮城県は現在、日本の中でもっとも深刻な状況にあると言っていいでしょう。何が深刻なのかタイトルを見たらすぐわかると思います。 以下のグラフは2/24から3/24までの宮城県の感染者の推移です。3/24時点で100人程度、現在3/31で200人になっています。下図は片対数グラフですのでそれが直線的に見えるということは、この一ヶ月で新規感染者がいわゆる指数関数的に増加しているということになります。一ヶ月で10灰になったのなら次の1ヶ月は100倍に増えることでしょう。(NH

          感染リスクを簡単に理解しよう(仙台)

          『阿Q正伝』 魯迅

          中国を代表する文学者で中国の教科書にも載っている(らしい)作品。あまりに有名なので今更感はありますが、せっかく読んだので記録のために。後半にはなぜこの作品が一般的に名著と言われているのかについて述べます。 ちなみにこの写真は宮城県の東北大学川内キャンパス内にある魯迅さんの銅像です。雨によって銅が酸化して緑青ができてしまっていますね。緑青のおかげで内部まで腐食してしまうことが避けられるのでいいですがかわいそうですね(どうでもいいことをだらだら申し訳ありません)。 ^^^^^^

          『阿Q正伝』 魯迅