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即効性の日本と遅効性のドイツ

 ここ最近、急に冷え込んできた気がする。朝の気温も低く、家中寒いから布団から出たくない。そして何より一番怖いのは、夜の風呂上り。せっかく暖まった体が一瞬で冷える。家の中ですら、吐く息が白い時があるほどだ。暖房を着けずにはいられない日々がとうとう始まったなぁとしみじみ思う。

 この日本の「暖房」の仕方については、嫁との会話に時々出てくる。

日本とドイツの暖房の違い

 日本では、「局所暖房」という部屋ごとに、電気・石油ストーブ、エアコンを各部屋ごとに設置し、個別に暖房を行なう。一方ドイツでは、「全館暖房」というセントラルヒーティング、建物全体を各部屋に設置してある放熱器に温水を循環させて暖房する方式をとっている。

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 *子供の後ろに写っているのが暖房器具

 ドイツの建物の地下には大抵ボイラー室があり、そこでお湯を沸かして建物全体にあるHeizung(ハイツング)と呼ばれる暖房器具に送り届けている。そのお湯は常に循環されるようになっていて、24時間途切れることはない。温度の調整ももちろんそのハイツングで出来るし、お湯を流すのを止めることも出来る。なので、暖房を着けておけば、廊下、トイレ、お風呂場などを含め、家全体が暖かい。その為、日本で体験する、朝部屋が寒いとか、トイレやお風呂場が寒いという体験をすることがない。室内温度が均一に保たれる。 

 部屋を温める暖房が24時間働きっぱなしということは、それだけエネルギー、金額が動く必要があり、局所暖房方式と比べると光熱費は高くなる。なので、原油の高騰も続く為、ドイツでは木材の端材などを使用した小さな棒状の固形燃料、木質ペレットの使用率が増えている。バイオマスを率先して使用している。
 北ドイツに田舎で暮らしていた時も、この木質ペレットを使用していた。年に一度5トンだったかな、一年分買って地下に保存して、必要な時に燃料に変えて使用していた。

 また、日本とドイツの「暖房」の違いは、その暖房速度にもある。エアコンやヒータで局部的にいち早く暖める方法を取る日本と、お湯を常に循環させて家中を少しづつ暖めて行くやり方。

 暖房器具を着ければすぐに部分的に暖める、即効性の日本。
 時間は掛かるが室内全体をゆっくり暖める、遅効性のドイツ 。

 日本の冬に比べ、寒さも厳しく、暗く長い冬のドイツだが、室内で寒さを感じことや凍えた思いをしたことがほとんどないのも、このお陰だからだ。家を出かける前からハイツングを少しだけ着けて家中を事前に、安心して暖めておけるから。

建築構造の違い

 ここでもう一つ、建築の側面からみる断熱のお話。

 ドイツ人の嫁はよくこう言っている。「何故日本の壁はこんなに冬が寒いのに薄いの?それに窓ガラスも一枚だし。家の中が寒くなるのは当たり前じゃない。何故?このままでいるの」と。

 家の中が寒くなるのも、家の壁や窓が薄いことが原因。

 そもそも、日本の竪穴式住居を原型とする木造軸組工法(架構式構造)の家は、柱や梁でその建造物を支えて建っている為、壁が薄い。一方、ドイツなどで見られる壁式工法(組積造)は壁が建造物を支えて建っている為、自ずと壁は厚くなる。

 以前、壁式構造の建物は、震災の時に被害が少なかったという記事を読んだことがあるし、地震の多い日本ではその耐震性のことも考えると、壁式構造をより多く取り入れた方が良いのかと思うけど、どうなんだろうか。断熱も同時にできるし。一度その辺を建築のプロにお話を聞いてみたい。

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 「全館暖房」は理想的と思えるが、やはりエネルギーの消費や光熱費は大きな問題となる。では、それを抑えるには、何が必要でどうすれば良いのだろうか。それは、単純に建物の断熱性を高めれば良い。

 僕は以前、嫁の実家の断熱リフォームを手伝ったことがある。上の写真がその時のものだ。嫁の父は家具職人。大きな工房に豊富な木材、そして木材加工の技術を持っているため、足場の組み立て以外は、全て彼がDIYした。自分のものは、出来るだけ自分で管理する。

 断熱材、かなり分厚かったな。

 「はんてんを着てコタツでみかん」のイメージでふと今思ったが、断熱リフォームをするというのは、まさに外壁に衣(はんてん)を新たに着せる作業だなと。
 ちなみにコタツなどで暖をとることを「採暖」という。寒さの中で、寒さそのままで暖かさを感じること。

 このリフォームを手伝った時に、いかに「人間が快適に暮らせる環境を個人が作って行くか」本当に肌で学ぶことが出来た。貴重な体験をさせてもらったと思う。ありがとう、ゲルハルド!今後の人生に大いに役立てるよ!!

ここで今日のドイツ語!

・暖房 = Heizung(ハイツング)
・冬 = Winter(ヴィンター)
・寒い = Kalt(カルト)

それでは、また来週!Bis nächste woche!!

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