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静かな働き方 「ほどよい」仕事でじぶん時間を取り戻す 【読書録】

仕事の過労から休職中の時に見つけた本書。
『「ほどよい」仕事でじぶん時間を取り戻す』という副題に惹かれ、すぐに手に取った。
休職中は仕事との向き合い方、付き合い方を悩み続けていたため、自分にとってのヒントを探したく読んだところ、もやもやしたものを少し晴らすことができた。

静かな働き方 「ほどよい」時間でじぶん時間を取り戻す
/シモーヌ・ストルゾフ 著  大熊希美 訳

本書は9章にわたって展開されており、各章でもともと仕事人間だった人たちの事例が紹介されている。
それぞれの主人公が、自分の仕事の何に悩み、その後の人生をどのように転換していったかが具体的に書かれており、解決の糸口を探すヒントになった。

有名レストランのシェフとして働いていた女性は、そのレストランのカリスマシェフに憧れて自身も働くようになった。二人は父親のような強力なメンターのような関係性となり共に働き、会社の成長に貢献した。
しかし、事業が軌道に乗り始めると二人の間に軋轢が生じるようになり、裁判まで起こすこととなった。
あんなに信頼していた人だったが、会社の方向性が異なると関係は変わってしまうのだ。

女性はひたすらにキャリアを積んできたが、一旦仕事から離れ、仕事以外の自分に向き合う時期を設けた。その時、彼女は仕事しかなかった自分の他の価値を見出すことができたのだ。
アイデンティティを多方面に育むことで、仕事を失う衝撃を緩和する以上に、よりバランスのとれた人間になれる。複数のアイデンティティがあれば、人は世界と関わる別の方法を見つけることができ、仕事を通じて生産する経済的な価値以上の価値を自分に見出せるようになる。

その他、憧れと現実のギャップに悩んだ図書館司書や、友人は会社の人間関係、居住空間も会社と生活の全てを会社にしていたIT企業社員など、いろいろな人の事例が紹介されている。

著者は最後に、仕事を通じて人生の目的ややりがい、一生の友人を得たが、仕事が与えてくれ、仕事に求める最も重要なものは、生活するためのお金であり、仕事は経済的な契約であると結ぶ。
もちろん仕事を取引と考えたからといって、仕事に真剣に取り組みたいという気持ちに蓋をする必要はない。その上で、仕事への期待値を見直すきっかけを提供したい。仕事を自己実現の唯一の手段と考えるのは非現実的である。


これまで私は、仕事をやりがいにしているか、そうでないか、の二極で仕事との付き合い方を捉えていた。
本書を読み、「仕事はお金を得る契約である」ということを改めて認識した。
やりがいかどうかは自分で決めればよいし、その割合も100の人もいれば60、23、0の人だっていろいろいる。
自分と仕事との付き合い方を自分で決めて、周囲にもそれを示していきたい。

仕事以外の自分のアイデンティティも多く持ちたい。それも秀でてなくてもよいし、上手くできないことも面白いと思えるようなことをどんどんしていきたい。
そのような大人は楽しそうだし、気の合う友人もできるとなおよし。

仕事が好きでないと人生つまらないと思い詰めずに、気楽に仕事をできる範囲で取り組むことに決めた。



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