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筋トレのコツ12:「速筋線維」と「遅筋線維」の特徴から分かる事

この記事では筋トレを続けていく上で重要になるコツの中でも、特に「速筋線維」と「遅筋線維」それぞれの特徴についてまとめています。


速筋線維と遅筋線維とは?

筋肉の構造については『筋トレのコツ9:筋肉の構造について考えよう』にある通りです。

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筋肉の最小単位は蛋白質である「ミオシン」と「アクチン」であり、このアクチン・ミオシン・アクチンという一つのまとまりの事を「筋節(サルコメア)」と言います。

また「筋節(サルコメア)」はたくさん横並びする事で「筋原線維」を構成しており、その筋原線維が束になって「筋線維(筋細胞)」、その筋線維が束になって「筋線維束」、更にその筋線維束が束になる事で「筋肉」を形作っています。

一方、その内の「筋線維」ですが、大きく分けると2つの種類があると言われています。それが「速筋線維(速筋)」と「遅筋線維(遅筋)」です。速筋と遅筋、それぞれの特徴を理解する事で、トレーニングを効率化させる事ができます。下記ではそれについて説明していきます。


速筋線維の特徴について簡単に

「速筋線維(以下速筋)」は「糖を代謝してエネルギーを得るための機能が高い(解糖系)」と言われています。そのため速筋は「無酸素運動」において真価を発揮し、短時間で爆発的にエネルギーを消費して、大きな筋力を発揮する事ができます。

特にこの無酸素運動の代表例が「筋トレ」です。筋トレではダンベルやバーベルなどの重量を用いて、筋肉に対して大きなストレスをかけます。筋肉はそのストレスに抗おうとして、ストレスをかける以前よりも筋肉の細胞を肥大化させます(細胞が増える訳ではなく、一つ一つの細胞が肥大化する)。実はこの時に大きくなるのが「速筋」です。

つまり速筋は鍛えるほど大きくする事ができ、それに伴って筋力も向上します。またストレスのある環境では、その速筋の肥大化を維持しようし、その維持のためにも大きなエネルギーを使います。これにより基礎代謝も大きく向上します。

しかしそのように「短時間でエネルギーを爆発的に消費」するため、その大きな筋力は長続きしません。全力で運動を行えば、すぐに疲れてしまうでしょう。またそのように速筋は動かすにも維持するにもエネルギーが必要で、そのエネルギーが不足した状態になると、自らをエネルギーにしてしまいます。それにより運動を行う度に筋肉が落ちる・・・というような事も起こり得ます。

ちなみに無酸素運動を続ける事ができる具体的な時間は、最初のクレアチンリン酸を使って行う「7~8秒」と、グリコーゲンを使って行う「33秒程度」、すなわち合計40秒程度しかありません。つまり筋トレを行う場合、目的に応じて1セットを10秒以下、あるいは40秒以下に抑える事が重要になります。

一方、クレアチンリン酸は休息を取ればその日の内に回復しますが、グリコーゲンは完全に回復させるまでに2~3日程度かかります。つまり目的に応じ「グリコーゲンを敢えて消費するように運動をするか否か」が大きく変わります。またそれによって「グリコーゲンの補充に努める期間を十分に設けるか否か」も大きく変わる事になります。


遅筋線維の特徴について簡単に

「遅筋線維(以下遅筋)」は、酸素を使ってエネルギーを作り出す「クエン酸回路」の機能が高く、特にクエン酸回路に必要な「ミトコンドリア」がたくさんあると言われています。

そのため遅筋は主に「有酸素運動」において真価を発揮し、少しずつエネルギーを生産、及び少しずつ消費しながら、持続的に運動を続ける事ができます。また使い込む事によりそのエネルギー効率が高まり、運動を行う時間を更に伸ばす事ができます。それによってエネルギーさえ尽きなければ、例えば24時間マラソンなどのように、半永久的に運動を続ける事もできるようになります。

ただし遅筋はストレスを与えたとしても肥大化しません。そのため遅筋を鍛えても、動かす際のエネルギー消費量は多くならず、むしろ節約して使われます。また遅筋はそのように肥大化させる必要がないので、維持する際にも大きなエネルギーを使いません。そのため遅筋を鍛えたとしても、速筋のような基礎代謝の向上効果はあまり望めません。

更に、有酸素運動に必要なクエン酸回路ですが、実はこのクエン酸回路、糖を代謝する解糖系から出てきた物質(ピルビン酸)も代謝できます。つまり有酸素運動は脂肪だけが燃える訳ではありません。何より有酸素運動では「エネルギーを少しずつしか使えない」ため、正しい有酸素運動を行ったとしても、最終的に燃やされる脂肪の量も多くなりません。

この事から有酸素運動は、競技として行う場合は別として「脂肪を燃やすためだけに行うべきではない」と言う事ができます。特に全身を使った有酸素運動では、例えば自律神経を刺激する作用、血流を促す作用、水分代謝を促す作用などが得られるので、そのような作用を得る目的で行うと良いでしょう。


速筋を鍛える事で得られる様々なメリット

速筋の特性については前述した通りです。それを踏まえ、速筋を鍛える事によって得られる様々なメリットについて考えてみましょう。

速筋を鍛えると、まず「素早い動き」あるいは「大きな筋力を必要とする動き」が楽に行えるようになります。これによって「自分の体を使ってできる事」が増え、自分の活動範囲が広くなります。

特にそうして一つ一つの動作を楽に行えるようになると、単純に「疲れにくくなる」ので、結果として活動時間も長くなります。つまり持久力も向上する訳です。更に、不意にバランスを崩した時、咄嗟にそれを戻す事ができるようになり、突発的な怪我も予防できます。

また速筋は動かす時、あるいはその肥大化を維持するために大きなエネルギーを消費します。特に筋肉はエネルギーを蓄えておく事もでき、鍛える事でその貯蔵量も上がります。つまり速筋を鍛え、それを維持する事ができれば、基礎代謝が大きく向上かつ安定化するようになります。それによっては「これ以上食べると脂肪が増える」のレベルも上がるので、食事量を増やしても健康を維持できます。

そして速筋を鍛えると、見た目にも大きな変化を及ぼします。特に筋肉が大きくなると、脂肪や皮膚を下から押し上げてくれ、皮膚にハリが生まれます。また運動をすれば水分代謝が改善され、皮膚の腫れぼったさもなくなるので、脂肪が多少あっても「太って見せない」ようにする事ができます。これらによっては、体の太い部分と細い部分がお互いに強調し合い、いわゆる「グラマー体型」に見せる事もできます。

この他、筋肉は震わせる事で熱を作る事ができます。この時に速筋を利用する事ができれば、気温が低くなった時、体温をすぐに上げる事ができます(エネルギーは大きく消費する)。

また筋肉は静脈内の血液をポンプのように送り出し、循環させ、心臓に戻す役割もあります。つまり速筋が上手く機能するように慣れば、例えば老廃物の排出が上手く行ったり、冷え性・浮腫・血糖値を抑制したり、血管への負担を軽減したりできます。


遅筋を鍛える事で得られる様々なメリット

遅筋の特性については前述した通りです。それを踏まえ、遅筋を鍛える事によって得られる様々なメリットを考えてみましょう。

まず遅筋は大きな筋力は発揮できず、長時間の有酸素運動を行ったとしても、最終的に消費されるエネルギーの量は多くなりません。

しかし遅筋は少しずつエネルギーを使えるので、「大きな筋力を発揮しないように体を動かすだけで、疲れにくくする」事ができます。これにより次の日、あるいはそのまた次の日に、なるべく疲労を残さず、長期に渡ってパフォーマンスや体調を安定化させる事ができます。

また遅筋も速筋と同じように「収縮する事で熱を作り出し、周囲の血液を温め、それを全身へ循環させる事で体温を上げる」機能があります。

特に速筋は短時間で大きな熱を作る事はできますが、運動を止めるとすぐ体が冷えてしまい、その熱は長続きしません。またそのように熱を作る能力は高いのですが、エネルギーも大量に消費します。そのためエネルギーがなければ上手く機能しません。

一方、遅筋は一度に大きな熱を作る事はできず、熱が作られるまでに時間もかかりますが、長時間に渡ってジワジワと、少しずつ熱を作る事ができます。これによって、なるべくエネルギーを節約しながらも、体温を長時間かつ安定的に維持する事ができます。



今回は以上になります。何かのお役に立てれば幸いです。

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