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筋トレのコツ9:「筋肉の構造」と「筋肉が収縮する仕組み」から分かる事

この記事では筋トレを続けていく上で重要になるコツの中でも、特に「筋肉はどのような構造をしているのか?」と「筋肉はどのような仕組みで収縮しているのか?」について簡単にまとめています。


そもそも筋肉はどのような構造になっている?

筋肉の元になる蛋白質には「ミオシン」と「アクチン」という2つの種類があります。

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このミオシンとアクチンはそれぞれ「フィラメント(囲いのようなもの)」という線状の蛋白質を構成しています。特にアクチンフィラメントは「Z膜」という膜で区切られており、このZ膜の両端から中央に向かって何本も平行に伸びています。

そのアクチンフィラメントの間を、やはり平行に並んでいるのがミオシンフィラメントで、2つのアクチンフィラメントに挟まれるような形で、1つのミオシンフィラメントが繋がっています。特にこの「アクチンフィラメント・ミオシンフィラメント・アクチンフィラメント」という一つ一つの区切りの事を「筋節(サルコメア)」と言います。

またこの「筋節(サルコメア)」は、たくさん横並びする事で「筋原線維」を構成しています。特にその筋原線維が束になったものが「筋線維(筋細胞)」、その筋線維が束になったものが「筋線維束」、その筋線維束が束になる事で「筋肉」を形作っています。

もちろんこれらの用語を全て厳密に覚える必要はないのですが、このように単に「筋肉」と言っても、実際にはかなり緻密な構造をしているのです。


「速筋線維」と「遅筋線維」について

前述した「筋線維(筋細胞)」には、「速筋線維」「遅筋線維」という2つの種類があります。「繊維」ではなく「線維」です。

この内、速筋線維は糖を代謝する「解糖系」の能力に優れており、短時間で大きな筋力を発揮するような「無酸素運動」において真価を発揮します。またストレスを与えると肥大化し、それに伴い筋力も大きくなります。

ただし大きなエネルギーを必要とするため、その筋力は長続きせず、すぐに疲れてしまいます。また細胞の肥大化は永遠に続く訳ではなく、それを維持するためには、継続的なストレスが必要になります。

一方、遅筋線維は「クエン酸回路」に必要な「ミトコンドリア」がたくさんあり、酸素を利用してエネルギーを作る能力が高くなっています。このため長時間の「有酸素運動」において真価を発揮します。

ただしエネルギーは少しずつしか使えないため、結果として消費されるエネルギーの総量はあまり多くなりません。また使い込むほどエネルギー代謝はスムーズになりますが、筋肥大は殆ど起こらず、大きな筋力も発揮できません。

尚、「筋線維(筋細胞)」には、この他に、速筋線維と遅筋線維の両方の性質を持った「中間筋(中間筋線維)」もあると言われています。このためそこまで厳密に役割分担をしている訳ではありません。

また無酸素運動では速筋だけが働く訳ではないですし、有酸素運動では遅筋だけが働く訳ではありません。あくまで「そのエネルギーサイクルに適した能力を持っている」という事です。


「白筋線維」と「赤筋線維」について

例えば動脈内の血液は赤色をしていますが、これは赤血球の中にある「ヘモグロビン」が酸素と結合した事によって見える色です。

一方、酸素の消費量が多い筋肉では、このヘモグロビンによる酸素の供給だけでは間に合いません。そこで筋肉内では「ミオグロビン」が一旦酸素を貯蔵し、その酸素も使って筋肉を動かしています。

特に遅筋線維はいわゆる「赤筋」とも呼ばれており、見た目上、赤色に見えます。これは何故かというと、そのように豊富に存在している「ミオグロビン」が赤色をしているからです。

実はこれは動物でも同じです。食べ物では例えば赤身魚や赤身肉、あれも赤色に見えるのは赤筋(遅筋線維)が多いからです。またそのために、そのような動物は「持久的な運動能力に優れている」ので、「赤身」を食べる事で、より遅筋の栄養源になる可能性があります。特に脂肪をミトコンドリアに運搬するカルニチンが豊富です。

一方、速筋線維は「白筋」とも呼ばれ、色が白く見えます。これは何故かというと、単純にミオグロビンの量が少なく、色がついていないからです。食べ物では例えば「白身魚」がそうですね。白身魚はカルニチンは少ないですが、コラーゲンが豊富です。

ちなみにアクチンフィラメントとミオシンフィラメントには、前述のように重なっている部分と重なっていない部分があります。フィラメントは規則的に並んでいるので、特に重なっている部分では色が濃く、逆に重なっていない部分では色が薄く見えます。

つまり見た目として縞模様に見えるため、これが「横紋筋」という名前の由来になっています。


筋肉が収縮する仕組みについて

ミオシンフィラメントは、2つのアクチンフィラメントの間に入り込む事ができます。それが全体で起こる事で筋肉は収縮する事ができ、収縮した筋肉に繋がっている腱が骨を引っ張り、関節を動かす事ができます。

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特にこの筋肉の収縮のきっかけになるのが、神経伝達物質である「アセチルコリン」です。神経末端からこのアセチルコリンが分泌されると、細胞外からナトリウムが流入し、細胞内のナトリウム濃度が高まります。これがスイッチとなって、今度は「筋小胞体」の中にあったカルシウムが筋肉の細胞に取り込まれ、これによって筋肉の細胞が収縮します。

しかしカルシウムが取り込まれたままだと、筋肉が収縮したままになってしまう(筋肉が痙攣する原因の一つ)ので、マグネシウムがカルシウムを追い出し、カリウムがナトリウムを追い出して、筋肉を弛緩させます。

このように筋肉の収縮においては、各種ミネラルが重要な役割を果たしています。例えば熱中症ではよく「筋肉の痙攣」が起こりますが、それは発汗によって各種ミネラルが失われ、筋肉の収縮が上手くできなくなるからです。

しかし足や腕の痙攣だけなら良いのですが、痙攣は各種臓器の筋肉や、心臓の筋肉でも起こる事があります。特に心臓の筋肉で起これば命に関わります。熱中症を軽視してはなりません。


筋肉では反射的な収縮も起こる

筋肉は意識的に収縮できるのはもちろん、反射的にも収縮します。特に筋肉は勢い良く伸ばされた時、受容器(筋紡錘や腱紡錘)がそれを検知し、反射的な収縮を行って、筋肉の細胞を守ろうとします。このシステムの事を「伸張反射」と言います。

例えばストレッチ中にこれが起こると、筋肉を効率良く伸ばす事ができなくなります。ストレッチでは「痛みを我慢しながら力一杯伸ばした方が良い」と考えている人も多いのですが、実際には「伸張反射を抑える程度の力加減」が重要になります。

また気温が低くなるなどした時、体温を維持しようとして筋肉を小刻みに震わせます(これを「シバリング」と言う)。特に筋肉は収縮する事で熱を作る事ができ、それによって周囲の血液を温め、また収縮を繰り返す事で、それをポンプのように送り出す事ができます。これも反射的に行われます。

ストレッチは「温かくした方が筋肉が伸びやすい」「風呂に入った後に行うと良い」とよく言われますが、これがその理由です。ただしいくら暖かくしても、筋肉を伸ばし続けるような「スタティックストレッチ」では、行っている間、筋肉への血流は逆に悪くなります。血流を促したいのなら、体を動かしながら筋肉を伸ばす「ダイナミックストレッチ」の方が効果的です。運動前は特にこちらがオススメです。

ちなみに伸張反射による反射的な収縮は、意識的な収縮よりも前に行う事ができます。このため伸張反射による勢いを「反動」として利用し、それを意識的な収縮へスムーズに繋げる事で、無駄な力を使わずに、より素早く筋肉を収縮させる事ができます。スポーツではそれが役に立ちます。




今回はちょっと短めですが、以上になります。何かのお役に立てれば幸いです。

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