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筋トレのコツ3:インナーマッスルを鍛えるより、まず「体の使い方」を見直そう

この記事では筋トレを続けていく上で重要になるコツの中でも、いわゆる「インナーマッスル」についてまとめています。

特に肩のインナーマッスルは単独では収縮しません。つまり普段の動作で自然と機能していなければならない筋肉であり、それを鍛える必要があるという事は、普段の体の使い方に問題がある可能性が大きいです。インナーマッスルを鍛えるよりも、まずそちらを改善すべきだと思います。


いわゆるインナーマッスルとは?

いわゆる「インナーマッスル」とは、体の奥深くに位置していて、体の表面からは(触れて)確認する事ができない筋肉の事を言います。別名「深層筋」とも呼ばれます。

またそんなインナーマッスルに対し、体の表面から(触れたり見たりして)確認する事ができる筋肉の事を「アウターマッスル」と言います。こちらは別名「表層筋」とも呼ばれます。

尚、私自身はインナーマッスル・アウターマッスルという分け方はしません。その理由は読み進めていただければ分かると思います。この記事では説明する上で便宜的に分けているだけです。


インナーマッスルの明確な基準は存在しない

実は「どこからどこまでがアウターマッスルで、どこからどこまでがインナーマッスルか」という明確な基準は存在しません。その証拠に、現在「インナーマッスル」として数えられている筋肉の中には、体の表面から触れて確認できるような筋肉も含まれています。

例えば肩のインナーマッスルとして知られている「棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋」という4つの筋肉ですが、この内の棘下筋はその一部が背中側から触れる事ができます。また肩のインナーマッスルには菱形筋・前鋸筋・小胸筋・肩甲挙筋などが含まれる場合があります。この内、菱形筋は全体を僧帽筋に覆われていて表面からは確認できませんが、前鋸筋に関しては脇腹から触れる事ができます。

このようにインナーマッスルについて説明する人によって、どこにあるどの筋肉がインナーマッスルに含まれるのかというのは、大きく異なる場合があるのです。

またインナーマッスルに含まれる筋肉は、基本的に体の奥深くにある筋肉なので、大抵、その筋肉のためのスペースがありません。つまりインナーマッスルは小さくて細い筋肉が多く、そのような筋肉を鍛えるためには、小さなストレスを与えながら、特定の動作をリズミカルに、かつ、ある程度ゆっくりと繰り返す必要があると言われています。

一方、インナーマッスルに含まれる筋肉の中には、実は太くて大きな筋肉もあります。例えば腰のインナーマッスルとして知られている腸腰筋という筋肉は、太ももを持ち上げる時にも使われており、肩のインナーマッスルと比べて大きく、その分、大きな筋力を発揮できます。そのような筋肉を鍛える場合、ある程度の大きなストレスをかけて行う必要があります。

つまりインナーマッスルに含まれる筋肉は、「鍛え方」も大きく異なる訳ですね。インナーマッスルと言えば前者の「ゆっくりとした動作で鍛える」というイメージが強いのですが、実際はそうとは限らないのです。

このように「インナーマッスル」という呼び方、及びそういった筋肉の分類の仕方は、あまり意味がないのではないかと私は考えています。特にその言葉に固執する事で、例えば「アウターマッスルを使う運動を避ける」など、普段行う運動の種類を自ら制限するという事はあってはなりません。


筋肉の持つ基本的な機能について考えてみよう

筋肉は関節を動かすために必要な組織です。しかし筋肉の機能はそれだけではありません。ここでは筋肉の持つ「関節を動かす以外の機能」について考えてみたいと思います。

まず、筋肉は収縮する事によって熱を作り、その熱によって周囲の血液、及びその血液が通っている組織を温める事ができます。更に、筋肉の収縮と伸展を繰り返すと、血液をポンプのようにして送り出す事ができ、温めた血液を全身へ循環させる事ができます。

つまり筋肉を動かすと、単純に体温が上がり、またその体温を維持する事ができる訳です。特にこれは気温の低い時期や環境ほど重要です。寒くなって体が震えるのも、筋肉を小刻みに震わせて熱を作り、体を温めようとしているからです。筋肉がなければそれができず、体温が維持できません。

また筋肉を動かすと、そのように血液をポンプのように送り出す事ができます。つまり血液内あるいは細胞内にある、例えば毒性のある物質や細胞の残骸などの老廃物も、一緒に循環させる事ができます。筋肉にはその機能もあります。

特に心臓から遠い場所にある何らかの物質は、心臓の力が届きにくく、重力に逆らって戻らなければなりません。筋肉を動かせばそれをスムーズに戻す事ができ、どこかの組織に老廃物が滞って悪さをする・・・というような事を防ぐ事ができます。

更に、筋肉は「グリコーゲン」という物質をエネルギーにして動きます。このグリコーゲンはブドウ糖から作られる糖の一種で、あらかじめブドウ糖から合成しておき、筋肉内に一定量蓄えておく事ができます。そうしてグリコーゲンを蓄え、次の運動に備えているのです。

つまり激しい運動を行った場合、一旦は筋肉内のグリコーゲンが消費されますが、次の運動に備えるため、再びグリコーゲンを合成して蓄えようとします。これによって糖の循環が生まれるので、筋肉を動かす習慣があれば、それだけで「血糖値を抑制」する事ができます。

特に消費しきれなかった糖は時間が経つと脂肪になり、脂肪細胞に取り込まれます。また過剰な糖は「糖化」にも使われます。糖化とは糖が蛋白質や脂肪の分子に結合し、その分子の機能を低下させる事を言います。更に高血糖は血管を詰まらせたり、血管の壁を傷つけたりします。つまり筋肉は、結果としてそれらの予防にも繋がっているのです。

ちなみに筋肉は大きなストレスをかけると、それに抗うために筋肉の細胞を肥大化させます。筋トレによって筋肉が大きくなっていくのは、主にこれによるものであり、そうして現在の環境に適応し、身を守ろうとしています。

特にそうして筋トレをし、筋肉が大きくなると、前述した体温を高める機能、血液を循環させる機能、血糖値を抑制する機能などを更に高める事ができます。そのため筋肉は、結果として「生命活動全体の安定化」にも繋がっているのです。


インナーマッスルは特別優秀という訳ではない

では、前述した筋肉の持つ機能を踏まえて、今度はインナーマッスルの持つ機能について考えてみましょう。

まず、筋肉は収縮を繰り返す事で熱を作り、周囲の血液を温めます。また筋肉はそうして温めた血液、あるいは元々細胞内や血液内にあった物質を送り出し、全身の細胞へ循環させます。

しかしインナーマッスルの場合、腰にある大きな腸腰筋は別として、基本的には細くて小さい筋肉が多いです。そのためインナーマッスルは収縮を繰り返したとしても、大きな熱を作る事はできませんし、送り出される血液の量も少ないはずです。

特にインナーマッスルはそのように体の奥深くにあるため、鍛える事で「深部から体を温める事ができる」とよく言われます。しかし実際にはそのように筋肉としての機能は低いため、逆に体の外側にある大きな筋肉(アウターマッスル)を使った方が、体は温まるのです。

また筋肉は糖を代謝・循環させます。しかしインナーマッスルはそのように細く小さい筋肉が多い上に、鍛えてもアウターマッスルのように大きくなりません。そのためインナーマッスルは、アウターマッスルのような大きな筋肉と比べると、糖の代謝に与える影響も小さいと思われます。

更に、そのように糖の代謝へ与える影響が小さいという事は、血糖値を上がりにくくしたり、脂肪に変換される糖の量を減らしたり、糖化のリスクを下げたり・・・などという筋肉の機能も低いという事です。よってこれに関しても、アウターマッスルを使ったり鍛えたりした方が良い影響をもたらすはずです。

このようにインナーマッスルはアウターマッスルと比べ、特別優秀という訳ではありません。むしろアウターマッスルを使ったり鍛えたりした方が、筋肉としての元々の機能が高く、大きなメリットが得られるはずです。


肩のインナーマッスルが持つ本当の役割とは?

ここでは肩のインナーマッスルを例にして考えてみます。

肩のインナーマッスルと呼ばれる筋肉(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)は、腕の骨と肩甲骨を繋いでいます。特に腕の骨は単に肩甲骨の横についているだけで、そのままだと重力によって落下してしまいます。それを繋いで、体を動かしていない時でも骨の位置を安定化させる・・・というのが肩にあるインナーマッスルの主な役割です。

また腕の骨が繋がっている肩甲骨も、腕の骨以外では鎖骨としか繋がっておらず、言わば宙に浮いている状態であるため、そのままだとやはり重力によって落下してしまいます。肩のインナーマッスルの中には背骨と肩甲骨を繋いでいる筋肉(肩甲挙筋や菱形筋)、あるいは肩甲骨と肋骨(前鋸筋)、肩甲骨と胸骨(小胸筋)を繋いでいる筋肉もあり、これらによって肩甲骨の位置も安定化させる事ができます。

更に、例えば腕を上から下へ勢い良く振り下ろすと、遠心力が生まれます。それによって手~腕が外に引っ張られ、骨と骨の間に隙間ができ、それぞれの骨の位置が不安定になってしまいます。

肩のインナーマッスルはそのような体を動かす時にも、骨の位置を安定化させ、関節の動きをスムーズにする役割があります。それによっては骨と骨を繋ぐ靭帯、あるいは関節内にある軟骨への負担も減らす事ができます。


インナーマッスルは単独では機能しない

前述のように肩のインナーマッスルは、体を動かしていない時、あるいはアウターマッスルで大きな力を発揮した時に、骨の位置を安定化させ、関節の動きを滑らかにすると共に、関節を保護するのが主な役割です。

つまり肩のインナーマッスルは、大きな筋力は発揮できず、常に他の筋肉をサポートするために働く筋肉という事であり、これは別の言い方をすると、「インナーマッスルが単独で働くような動作は存在しない」という事です。肩のインナーマッスルは、アウターマッスルなど他の筋肉を使う時、自然に機能していなければならない筋肉なのです。

よって「インナーマッスルを意識的に鍛える必要がある人」というのは、例えば元々効率の良い体の使い方ができていない人、食事量や意識的な運動習慣が少なく元々全身の筋肉量が少ない人、怪我や病気などからの復帰を目指す人、現在以上に筋力を向上させたい人(その筋力を上手く使うために)、あるいは激しい運動を行う前にウォーミングアップとして筋肉の血流を促しておきたい人・・・だけに限定される事になります。

そのため、もし逆に、意識的な運動習慣があるにも関わらず、インナーマッスルがその役割・機能を果たしておらず、骨の位置が安定化していない場合、普段の「体の使い方」や「生活習慣それ自体」に問題がある可能性が高いです。

最初にも書きましたが、やはりインナーマッスルを鍛えようとする前に、まずはそちらを改善する事の方が先だと私は思います。

それを改善せずにインナーマッスルを鍛えるのなら、まずアウターマッスルの方を鍛える事を考え、その際、体の動かし方を覚えながら、ついでにインナーマッスルを使った方が効率が良いのではないでしょうか。その意味でも「インナーマッスル」という分類は必要のないものだと思います。



以上です。何かのお役に立てれば幸いです。

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