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透けて見える、血管。

私は小説をあまり読まない。
正直に言うと、本もあまり読まない。

全く読まない人よりは、多少読む。
しかし、本が好きな人と比べると全然読んでいないレベルだ。

どちらかというと、漫画が好きで、アニメが好きで、映画が好きで。
活字より映像や音楽が好きだ。

たまに、活字に埋もれたくなる時があって、発作のように本を貪るように買って読む。
小説だったり、新書だったり、エッセイだったり。
そのうちに、一度も中身を確認されることのない本が階段に積まれていき、私の活字欠乏期間は終わる。

最近は、noteを始めたから、常に活字に触れることができるので、今のところ、発作が出る兆候はない。


昨年、すでに創作大賞2022に入賞されている北野赤いトマトさんという方がいる。

私は北野赤いトマトさんの書く文章が好きで、フォローさせていただいている。
椎名林檎が好き、と書かれている記事もあって、勝手に親近感を抱いている。

そのミドルネーム(かどうかは知らないけど)の「赤い」は、きっとトマトの赤ではなくて、血の赤なのだろうと、私は勝手に思っている。
北野さんの書く小説は、血管が透けて見える生々しさがあって、心がざわっとする。

触れたくないような、触れられたくないような、心臓に近いところを、何かで撫でられる感覚。
もう20年くらい前にどこかに忘れてきた私を思い出させるような。

それでいて、とても優しい。
関西の方なのかな?
関西弁がその優しさに拍車をかける。

ドライブインなみまシリーズのかつ丼編を読んだ。
結婚式の日に新郎に逃げられる女の子の話。

女の子は、怒ったり泣いたり。

私は、ずっと主人公の茜ちゃんを応援した。
そして、私は茜ちゃんと一緒にドライブインなみまにたどり着いた。

これまた、ドライブインなみまが優しくてだな。
私は、胸がぎゅっと締め付けられて、泣いてしまった。

最後にかつ丼が出てくるんだけど、私もドライブインなみまでかつ丼食いてえ、と思いながら、
家で一人で号泣していた。

家族がみんな部屋でゲームしてて、セーフだった。
私が、号泣してるのはバレていない。

ほっ。


私は、どうしてもこの小説の感想が書きたかった。
感想文はクソほど苦手で、最後の解説をパクってくるぐらいに苦手なのに。

リビングで、もう一度かつ丼編を読んだ。
トマト缶とイワシ缶を鍋にぶち込んで煮た赤い食べ物と、焼酎の炭酸割りを片手に。

やっぱり、いい。
好きだ。

家族はテレビを見ている。
私は、こっそり鼻をかむふりをして、涙を拭いた。






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