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名は体を表す、キング級の存在感。 | スリランカカレーの特徴#4

味の決め手はこれ

「スリランカカレーは、これがないと始まらない」
ココナッツ(ココヤシ)を評して、スリランカンはよくこんな表現を使います。

約2,600種類あるヤシ科の植物のなかでも、ココナッツは料理や工芸品などさまざまな用途に使われる利用価値の高いもの。シンハラ語で「ポル」と言います。

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スリランカのココナッツは、当地が原産国のキングココナッツが主流。外皮の色からシンハラ語で「オレンジ色」を指す「タェビリ パータ」が転じ、「タェビリ」と呼ばれます。

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料理に使うココナッツはジュース用の若い果実ではなく、収穫からもう少し寝かせたもの。胚乳部分が厚くなり、水分がなくなり削るのにちょうどいい具合です。
専用の鉄の刃で割って外殻を剥ぐと、毛むくじゃらの実が現れます。店頭では、この毛むくじゃらの状態で売られています。

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専用のココナッツ削り器で内側の白い部分(胚乳)を削ります。この削りたてのココナッツ(ココナッツファイン)に水を加えて絞ったものがココナッツミルク
これが、スリランカカレーの味の決め手となります。

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削ったココナッツをボウルに入れ、水を足し、揉んでから絞ります。これが「一番搾り」のココナッツ。まさに搾りたての味。さらにもう一度水を足して絞るのが、「二番搾り」です。
スリランカのカレーづくりでは、この一番搾り、二番搾りを調理過程できちんと使い分けます。だいたい素材を煮込む際は薄めの二番搾りを使い、最後に一番搾りで味を締め、決定します。

カレー以外でも出番が

ココナッツの出番は、カレーだけではありません。
どんなライス&カレーにも乗ってくるココナッツのサンボルは、スリランカカレーを彩る副菜の定番。スリランカでは「ポル・サンボル」と呼びます。日本だと、ふりかけのような存在でしょうか。

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右奥に見えているオレンジ色の料理が「ポル・サンボル」。
一見して材料に何が使われているかわからないため、スリランカカレー会を開くと「これはいったい何?」と必ず質問を受ける料理でもあります。

削ったココナッツとチリ、塩、ライムやレモンの酸味、タマネギ、お好みで旨味を出すモルディブフィッシュや青唐辛子などを和えれば、はい完成。
スリランカでは、下の写真の「ミリスガラ」という石製の調理器具を使って、具材とスパイスを一体化させます。

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とびきり辛い「ポル・サンボル」さえあれば、ライスがいくらだって食べられちゃう曲者。いえ、カレーの名脇役なのです。

日本ではフレッシュなココナッツが手に入りません。そこで、ポル・サンボルづくりにはココナッツファインを、カレーに入れるココナッツミルクはパウダーを溶かして使っています。
いずれも、できればスリランカ産のものを使ってみてください。
以前、味の比較にフィリピン産のものを使ったことがありますが、なかなかどうして。やはり風味に差があり、スリランカカレーやサンボルを作るには適していませんでした。

他にもココナッツは食用だけでもオイル、お酒、ビネガーなどに生まれ変わります。最後は皮を燃料にしたり箒を作ったり。「余すことなく」という表現がぴったりの、スリランカの生活に根付いた植物です。
キングの称号がふさわしいココナッツの風味、ぜひスリランカカレーで味わってみてくださいね。


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