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夫が突然、庭に池を掘り始めました

田んぼに水が引かれるころになると、夫と息子がそわそわし始める。
「夕方から、雨が降りそうだよ」
「晩ごはん食べたら、行ってみるか」
わざわざ雨の夜を見計らって、何の相談かといえば、カエル探しである。水生生物、なかでも無類のカエル好きな二人にとって、もはや恒例行事だ。

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小雨の中、草むらをかき分け、カエル探しに夢中の息子と娘。

この季節、田んぼで見つかるのは、おなじみのアマガエルや、今や純絶滅危惧種に指定されているトノサマガエル、きれいな緑色のシュレーゲルアオガエル、イボイボで土色をしたツチガエルなど。

正直、私はカエルにそこまで興味はないけれど、夜の野山に出るのはちょっとした冒険気分だ。暗闇の中、カエルの鳴き声と、ヘッドライトを頼りに、足元を確かめながら慎重に歩く。

あるとき、少し前を歩いていたはずの息子を見失い、慌てて探した。一筋の光がひゅうと視界に飛び込み、ホッとした次の瞬間、ふわりと宙へ舞う。

ホタルだ。

顔を上げると、ちらちら見える息子のヘッドライトに交じって、無数のホタルが舞っているではないか。こうした予測のつかない展開が待っているからこそ、野あそびはおもしろい。

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シュレーゲルアオガエルは樹上で生活する。コロロロ…と鳴き、葉にちょこんと乗る姿が愛らしい。

お目当てのカエルは連れ帰り、夫が庭に自作した「カエルハウス」へ放す。カエルハウスとは、畳一枚分ほどのスペースを囲い、池、岩、植物などでカエルの生活環境を再現したものだ。普段の行動や、産卵、ふ化の瞬間など、リアルな生態を間近に観察できる、カエル好きにとって夢のような空間らしい。

飼育となれば、エサも必要になる。カエルは生きた虫しか食べないため、毎晩のように、コンビニや街灯に集まる虫を調達に行く。なかなか手のかかる入居者様である。

加えて、去年は夫があれもこれもとカエルを増やし、賑やかすぎる鳴き声で、ご近所に迷惑をかけてしまった。

実は、カエルの中でも鳴いているのはオスのみ。メスへの求愛アピールだ。

こちらが勝手に連れてきておいて、罪のないカエルくんには大変申し訳ないが、特に悩まされたのがアマガエル。小さな体に反し、ゲッゲッゲッゲッとやたら声がデカい。

反省を生かし、今年は比較的控えめに鳴くシュレーゲルアオガエルだけに絞った。それでも、そろそろ定員オーバー。メスが無事産卵した5月の終わり、役目を終えたオスたちには、ハウスからお引き取りいただいた。

これでようやく落ち着ける、そう思った矢先、夫がなにやら庭に穴を掘り始めたではないか。

「水生生物のための池をつくるんだ。庭に水辺があれば、野生のカエルが棲みつける。この前捕ってきたツチガエルやヌマガエルなら、鳴き声も気にならないし、ほら、野菜につく害虫だって食べてくれるから」。

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池の整備の真っ最中。畑パトロール隊の拠点となるか。

ぐぬぬ。

庭のミニ菜園で野菜を育てて食べるのが、私の楽しみだ。かわいがっている野菜のためとあれば、反対もできぬ。

頼もしきカエル諸君よ、おおいに働いてくれたまえ。

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夜行性のカエルや昆虫探しなど、夜の行動に欠かせないヘッドライト。懐中電灯と違って、両手が空くのがポイントで、キャンプや災害時などにも便利。なお、生きものを見つけるなら、光量の強いもの(300ルーメン以上)がおすすめだ。

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