見出し画像

手動でやりたいこともある|自動化されたものに学ぶ

先日、サウナ付きカプセルホテルに宿泊した時に、せっかくなのでサウナに入ってみたところ、30分ごとにロウリュが実施されるシステムになっていたので、通常のサウナ以上に熱波を浴びて満喫することができました。

ロウリュとは熱したサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させ、タオルなどで利用者を煽いで熱風を送り発汗作用を促すものです。

この時利用したサウナでは、これが全自動で30分ごとに実施される「オートロウリュ」だったのです。今やこれが当たり前なのかもしれませんが、そこまでサウナに頻繁に行かない僕にとっては新鮮な体験だったのです。

30分ごとにロウリュが開始されるアナウンスが始まり、サウナ内に設置されているサウナストーンに適量の水が掛けられたその数秒後、正面から自動で送風がなされ、利用者たちは熱波を浴びて更に身体を温めていくのです。

昨年、北海道に行った時にロウリュができるサウナに行ったのですが、そこでは備え付きのサウナストーンと水、そして柄杓が置いてあり、利用したいお客さんが他のお客さんに「ロウリュをしてもよろしいですか?」と声掛けをし、了解を得た後に自身でロウリュを実施していました。

ここでは手動のセルフサービスでロウリュを提供していたのです。

その時は全利用者がロウリュの実施者を見つめ、彼はその眼差しのなか柄杓で水をすくい、まるでバリスタのように丁寧にサウナストーンへ水を滴らせていきました。その後は沸き上がった水蒸気をタオルを使って、バシッバシッと部屋中に熱波にして送っていきます。

静かさのあるサウナ室の中、数名が拍手をしながら「ありがとうございます」と言っていたのも印象に残っています。ひとつのイベントのようになっていたのです。

自動と手動のどちらが良いという話でもありませんが、ひとつの文化の様な手動のロウリュを知っている身としては、全自動のオートロウリュは少し淡白な印象を抱いてしまったのです。

もちろん、自動化というのは初期投資はあれどもその後の管理コストを抑えることができ、尚且つ人的ミスや事故が起こる可能性も低く抑えることができます。経営的にはオートロウリュの方が費用対効果が高いのです。

そういった事情を知っていても、消費者として生活しているうえでは「手動でやりたいこともある」と思った出来事でした。

高性能のコーヒーメーカーが登場して以降も、今もハンドドリップで丁寧にコーヒーを淹れる人はたくさんいます。

音楽がiPodやサブスクリプションの台頭で完全なデジタルコンテンツと化した今でも、敢えてアナログレコードに針を落として楽曲を聴く人はむしろ増えてきています。

かつてホリエモンが寿司職人に何年も修行をさせていないで全て機械化させた方がよいと言って炎上していたことがありましたが、機械化によって雇用が失われる云々の話以前に、寿司職人たちは自分の手で寿司を握りたかったのではないでしょうか。

便利な時代は更に便利になっていきますが、いつまで経っても「手動でやりたいこともある」ような気がします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?