【📖レビュー】アドラー式『言葉かけ』練習帳|原田綾子

『“〜しちゃダメ”は使わないようにしましょう』
『“〜してくれてお母さん嬉しい”と自分の感情をつたえましょう』
育児をしている人なら一度は聞いたことがある『言葉かけ（声かけ）』
以前から知ってはいたけど「とっさにそんな言葉でてくるかなぁ？」と疑問視していました。そんな中、図書館で『言葉かけ』“練習帳”なるものを発見！
方法論をだけでなく事例をたくさん見てみたい、そう思い読んでみることにしました。

子どもが伸びる！自信とやる気が育つ！　アドラー式「言葉かけ」練習帳

この本は

元小学校教諭で、現在アドラー心理学をベースとした『勇気づけ』の子育て講師として活躍されている著者が学級崩壊しかけのクラスの担任になり子供たちと向き合う経験を元に体感した声がけの大切さと実践方法がまとめられている本です。
様々な言い換え事例が書かれていて使いやすそうです。とはいえ、日々の生活の中でとっさにベストな言葉が出てくるなんて難しい！そんな親御さんの心に寄り添ったアドバイスやコラムもあり、優しい語りかけ風の文体ですらすら一気に読めました。

この本で伝えていること

序章　子どもが伸びる言葉って？

著者が学校教諭時代に、学級崩壊しかけのクラスで実践した生徒自ら自分の良いところや他人の良いところを発見する『一番星探し』をきっかけにクラスが変わりだした経験が書かれています。
その中で、『勇気づける』言葉かけ、言い換えると自己肯定感を高め、自信をはぐくみ、子どもが自ら伸びる力となる言葉かけには以下の大事なポイントがあることを発見しました。

『勇気づける』言葉がけのポイント
①    貢献や協力に注目して気持ちを伝える
「あなたのおかげでとても助かった」
「あなたがうれしそうで、わたしもうれしい」

②    すでに達成できている成果を指摘する
「苦手なのにニンジンを口に運んだね」
「前より点数があがってきているね」

③    失敗も受け入れ、気持ちに寄り添い、未来に切り替える
テーブルの水をこぼした
→「大丈夫？服はぬれなかった？」
テストの点数が悪かった
→「残念だったね。次までにできることを考えよう」

④    他の子と比べず個人の成長を重視する
「前より、〇〇ができるようになったね」

⑤    行動について具体的に伝える
「明日の準備しているんだね」
「漢字の練習しているんだね」

※むやみやたらにほめると“ほめられること”を目的に行動してしまう。
　「おりこうさん！」「すごいね」「えらいね」ではなく「ありがとう！」「助かる！」「うれしい！」という気持ちを表すことで、
“誰かの役に立つ喜び”のために行動できるようになる。

𠮟り方についてもコツがあります。大前提として、“怒る”と“叱る”は違います。　　

“怒る”＝イライラをぶつける。親の都合。
“叱る”＝相手を想って愛をもって教育する。
つまり叱るは相手中心です。　

叱るときもラインを決め、本当に叱るしか方法がないのか、叱らないでやり方を丁寧に教えることで解決できないかを考えましょう。
例：ノートの字が汚い→叱るのではなく、書き方を丁寧に教える。

叱るルール(著者の場合)
・人(自分も含める)の身体や心を気づ付けた時
・ 社会のルールを破って周りに大きな迷惑をかけた時

他にも、ゲームをする時間など、子どもも一緒にルール作りをして、そのルールが守られなかったら叱るなど、家庭ごとの基準を話し合っておくとGOOD！

子どもを伸ばすしかり方のポイント
①    ていねいな言葉で理性的に
→感情にまかせて乱暴な言葉を使わない。　

②    きっぱりと(毅然と)
→迷った様子を見せない。

③    短い時間で
→ねちねち叱ったり、関係ないことまでを引っ張り出さない。

④    真剣な顔で。ここは譲れない！という姿勢をみせる
→ふざけたり、子供の機嫌をとらない。　

⑤    行動についてのみ叱る
→「ダメな子」と人格を否定しない。

第一章　ふだんの生活と習慣に関わる言葉かけ

【具体的に伝える】
親が子どもに一番使う言葉は「早く！」だそうですが、実は子どもに「早く！」は伝わりません。なぜならそもそものペースが違うから。「早く！」や「急いで！」ではなく、具体的にどう行動すべきかを伝えましょう。

【「ダメ」「いけません！」「～しなさい」などの禁止語、命令語は控える】
禁止されると子どもは自分でやってみようという気持ちが削がれ、反発することも。ダメではなく、別の言い方で伝えるように工夫しましょう。

【信じて待つ】
大人が禁止をしたり命令したりするのは、そうした方がより良い結果があることが、経験上分かっているから。つい先回りして子どもに教えたくなりますが、それは子供の学びの機会を奪っているのです。信じて待つ、そして勇気づける言葉かけを行うことで子供の潜在能力が開花します。

【自分で決めたことを実行することの繰り返しが自立を促す】
自立(自分で考え判断し行動する)した大人になるために大切なこと、それは

➀自分で決める
子どもにルールを決めさせる。指示・命令はしない。「〇〇するのがよいと思うな」など提案はOK！

②話し合ってルールを決める
折り合いをつけ課題を解決することを学ぶため、考え＋理由も言わせるようにする。

③結末の体験(自分のことは自分で責任を取る)
例えば片付けのルールを作ったら子どもにさせる。ここで親が行ってしまったり、命令をしてしまうと“親が結局やってくれるもの”“片付け＝嫌なこと”となってしまうので、親は、“楽しく”片付けるお手伝い＆勇気づけを行う。

言葉かけの事例集

ー時間についてー
NG　「いつまでやってるの？なんで約束守れないの？」
OK　「もうすぐ時間になるよ。時計を見てね。」

NG　「いつまでゲームをやってるの？もうゲームを捨てるからね！」
OK　「何度も声をかけたけどやめられなかったね。守れなかったときは3日間ゲームはお休みって決めたよね。」

NG　「早く食べなさい！」
OK　「〇時までには食べられるかな？片付けがあるから〇時までには食べてほしいんだけど。」

ー忘れ物についてー
NG　「ちゃんと準備しなさいよ。あなたはいっつも忘れるんだから！」
OK　「明日の準備はできたかな？お母さんと一緒に確認してみようか？」

NG　「夜のうちに用意しないからこうなるんだよ、まったく！」
OK　「朝だと時間が足りなくて慌てちゃうみたいね。夜のうちに準備をするのはどうかな？」

ー失敗についてー
子どもが大事なカップを割ってしまった
NG　「何やってるの！大事にしてたのに……。もういいから！」
OK　「大丈夫？けがはない？びっくりしちゃったよね。一緒に片付けようか？」

トイレに間に合わなかった
NG　「だから言ったじゃない！まったくもう！」
OK　「出かける前にかならずトイレに行こうね！」　　

図書館の本にペンで印をつけてしまった
NG　「ペンで書いたら消えないじゃない！どうするつもり？謝ってきなさい！」
OK　「夢中になってうっかり線を引いちゃったのね。やったことは仕方がないから、今度からは気を付けようね。どうしたらいいかな？」

ー気になる癖ー
どうせ自分は、、と悲観的
NG　「そんなことないよ。もう少し頑張ってみよう。」
OK「そっか、そんな風に思っちゃうんだね。お母さんはそうは思わないよ。」

買い物中買ってもらえないとふてくされる
NG　「じゃあ、小さいのなら買ってあげるわ。」
OK　「今日は買えないんだ。」※事前に今日は買わないと決めておくことが大切

アドラー式『言葉かけ』練習帳,2015,原田綾子

第二章　学習に関わる言葉かけ

どんな子供でも実は勉強が大好き。なぜなら勉強することの根本には“好奇心”があるから。
勉強＝“いやなもの・つらいもの・苦しいもの”　ではなく、“楽しい・知る喜び・面白い”に思えるような声かけと、環境を整えることが大切です。
小学校教諭の著者は教室（学ぶ場所）が子供にとって、心が落ち着ける場所であること、そのために『教室で失敗しても大丈夫』というメッセージを繰り返し伝えるようにしていました。家庭でもそれは同じ。『安心感が得られる場所』作りのために、子どもが勉強を始めたら、親が一緒にテーブルに座って本を読むなどそばにいることが効果的。加えて「毎日がんばっているね！」「わからないことがあったら聞いてね！」など勇気づける言葉かけをしましょう。

言葉かけの事例集

ぐちゃぐちゃに描いているせいで計算を間違えている
NG  「だから言ったじゃない！汚いから間違うのよ！」
OK　「本当はわかっているのにもったいないね。どうやったら間違えなくなると思う？」

通信教材に手を付けない
NG 「ためているから、やめちゃうよ！」
OK 「たまっちゃうとやる気が出ないよね。どうやったら、計画的に(ためないで)できそうかな？」
※まず共感。そして勇気づけ!!

テレビばかり見て集中していない
NG 「集中しなさい！」
OK 「進んでないけど大丈夫？宿題終わってから観る？観てからやる？」

100点をとった
NG 「さすが〇〇ちゃん！」
OK 「うれしそうだね！テスト勉強がんばっていたもんね。」
※プロセスをほめる！

アドラー式『言葉かけ』練習帳,2015,原田綾子

第三章　人間関係に関わる言葉かけ

子どもが自立する、つまり
・自分で考え行動できる「しあわせな」大人
・困難を乗り越える力をもった(問題解決力のある)大人
になるため、親ができるサポートは条件つきでなく、どんな状況でも受け入れる安心感を与えることと、子どもが自分で解決しようとすることをサポートすること、子どもから依頼があったらヘルプをしてあげることが重要です。
勇気づける言葉✖︎として、「話してくれてありがとう」や「こうゆうことで困っているんだね。どうしたらいいか一緒にかんがえていこうね」まず親が“安心基地”になることが大切です。

言葉かけの事例集

兄弟喧嘩が始まり、兄が手を出した
NG 「お兄ちゃんなんだから、優しくしなさい！」
OK 「ぶつことはよいないよ。でもなにがあったの？聞かせてくれる？」

「〇〇なんて死ねー！」と相手に言っている
NG 「なんてこと言うの？そんなことを言うんじゃありません！」
OK 「そうゆう言葉づかいは、よくないと思うな。簡単にそういう言葉を使ってほしくないな。」

子どもが、友達が悪口をいっていることを報告してきた
NG 「〇〇ちゃんひどいね。お母さんにちゃんと言わないとね。」
OK 「〇〇ちゃんがそういうことするのを見たんだね(聞いたんだね。)そのときどう思った？」

アドラー式『言葉かけ』練習帳,2015,原田綾子

第四章　あたり前のことを勇気づける

勇気づけは、テストで100点をとった、お手伝いをしたなど特別な場面ではなく、何気ない日常のでも行うことが大切。「朝寝坊したけど自分で起きてきた」「朝ごはんを半分はたべた」「元気に挨拶をした」「学校にいけた」などあたりまえのようなことに目をむけるようにしましょう。

朝から晩まで勇気づけの言葉かけ

おはようとおきてきた
「自分でおきてこられたね。」
「おはようって言ってもらえるとうれしいな。」
「あいさつすると気持ちがいいね。」

着替えている
「もう着替えているんだ！」
「上手にボタンをはめられるようになったね！」
「脱いだ服をたたんでしまってくれてありがとう。」

ごはんを食べている
「追いそうに食べているね。」
「ご飯粒を残さずきれいに食べてくれてうれしいな！」

お手伝いをしてくれた
「お皿を下げてくれてありがとう。」
「食器を水につけておいてくれると助かるな。」

学校にいくとき
「いってらっしゃい！いい一日になるといいね。」
「帰ってきたら〇〇(子どもが楽しみにしている行事)について教えてね！」

学校から帰った
「お帰り！今日も一日がんばったね！」
「(お便りなど)いつも忘れずに出してくれてありがとう。」

手洗いうがいをする
「いわなくても自分からできて感心だわ。」
「清潔にすると健康にいいね。」

きょうだいで遊んでいる
「いつも弟の面倒をみてくれて、ありがとうね。」

机の上を片付けている
「きれいになると気持ちがいいね！」

明日の準備をしている
「自分のことを自分でやっていていいね。」
「前日に準備をしておくと安心ね。」

お風呂あがり
「さっぱりして気持ちいいね！」

寝る前に
「生まれてきてくれてありがとう！」
「だいすきだよ～～(抱きしめる)」

寝ているとき※寝ている間も親の声は潜在意識にとどきます。
「寝ている間に疲れが取れて明日すっきり目覚めるよ。」
「いつも元気でいてくれてありがとう。」
「大きく成長してくれてありがとう。」

アドラー式『言葉かけ』練習帳,2015,原田綾子

子どもの性格においても長所と短所は表裏一体。短所と思えるようなことを長所ととらえるリフレーミングが有効です。

リフレーミング辞典

http://www2.gsn.ed.jp/houkoku/2011c/11c31/siryo/reframing.pdf

第五章　言葉かけのための自分への勇気づけ

子どもへの勇気づけを行う前に最も重要なことが、親が自分のダメ出しをせずOKをだせていること。自分への勇気づけができていることが大切です。

自分への勇気づけのポイントと言葉かけ
➀「そんなときもある！」
「いつも笑顔なんて無理。大丈夫だよ。」
「休んだっていいんだよ。」
「自分を大事にするときかな？」

②理想を高くしない
「うまくできなくても大丈夫。だんだん慣れていくよ。」
「私は向上心にあふれている！やってみようと思える勇気、素敵だね。」

③できないことより、できたこと、小さな進歩に目を向ける
「怒っちゃっても大丈夫。その分明日は子どもをギュッとしよう。」

④親にもあたり前の勇気づけを
「いつも子どものことを考えて愛情深いね」
「掃除していて気持ちいい！」
「子どもを産んで育てている私はすごい！」

⑤自分のありのままの心を感じる
「誰かを頼ってもいいんだよ。」
「今までさみしかったんだね。」

最後に

子どもへの言葉かけの前に、まず自分自身をありのまま受け入れ、「こんなに出来ている！」と認めてあげる、自分で自分を安心させてあげることが大切なんだと気づきました。勇気づける言葉かけを何度も何度も意識して行うことで習慣化し、とっさに前向きな言葉が出てくるようにチャレンジしたいです。（「私は向上心にあふれている！やってみようと思える勇気、素敵だね。」笑）

また、子どもだけでなく夫や友人にも『勇気づけ』の言い換えを実践していきたいなと思いました。

子供が伸びる！自信とやる気が育つ！
アドラー式『言葉かけ』練習帳

著者　：原田　綾子
出版元：日本能率協会マネジメントセンター
発行　：2015/7/30



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