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育て、食べよ。農園のある学校で、営みを学べ
子供の山村留学で、北海道の中札内村というところに短期移住している。
田舎でしかできないことを体験させたい
という思いがあって、わたしたちは住む場所を変えた。
子供たちの通う小学校の横には、畑とハウスがある。
山村留学で学ぶ、生きる営みの体験とは。
学校にある農園
山村留学で4月から通う小学校には、「農園活動」というものが学習時間に組み込まれている。
田舎の学校、ということに加えて、「教育課程特例校」のため、地域の特性にあわせてカリキュラムに柔軟性を持たせることができるというのも、ここに山村留学を決めた理由の一つだ。
学校のすぐ横には畑があって、その横には立派なハウスが建っている。かなり本格的。
農園活動の授業には地元JAの青年部がわざわざお手伝いに来てくれるというのも、さすがは農業の村である。専門家の指導が受けられるのはありがたい。
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ビニールをめくり温度調節するのだそうだ
教えてもらうとはいえ、農園は、子供たちが自主的に責任を持って運営する。
春の土おこしから始まって、土づくり、苗の植え付け、除草、水やりなど畑の管理と、収穫まで一貫して関わるのだが、
そのひと通りの活動は班で行うのだそうだ。
4月、全校生徒話し合いのもと全学年混合の班が結成された。
娘は、なすいちご班。
息子は、トマトパプリカピーマン班。
ランダムな野菜の組み合わせは一体どういうルールなのだろう。
水やりなどの世話はこの班の中で分担を決めて行われているらしい。
野菜と子供たち
「学校のなすが」と、娘が最近、なすの話題をよくする。もうすぐできるのだそうだ。
農園活動について、どんな感じと聞いてみても、子供たちからは「大好き」とか「楽しい」とか言う声は聞こえてこない。では嫌がっているのかというと、そうでもない。
なんというか、そういうエンターテイメント要素ではなく、しごく当たり前の営みとして、毎日の生活の中に組み込まれている感じがする。
娘は、「草取りで労働力にされている」などと文句をたれつつも、
そわそわと、学校のなすの収穫を待ち望んでいるようす。
タイミングを逃すと「おばけなす」になってしまうからと、日々なすの成長に目を光らせているさまは頼もしい。
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息子は、ある日ビニール袋にピーマンを1つ包んでもって帰ってきた。
とれたものを分配してもらえたらしい。
「これ」
と言って渡す顔は、少し誇らしげ。
たった1つのピーマン、どうやって食べようか。
貴重な彼のピーマンについて、食べ方を相談してみると、ニヤニヤしつつなんだか嬉しそうなのである。
ゆたかな十勝の気候は、野菜もしっかり実る。
立派な作物が出来上がる農園活動で、育てて、いただく、という営みを身をもって体験させてもらっている。
まだかまだかと見守りながら世話をして
そんな中で目にしたナスやきゅうり、じゃがいもの花などは
子どもたちの記憶にきっと残っていくのだろう。
土や光や温度によって、その豊かな実りが育まれることも。
ここのミニトマト
農園のビニールハウスでは、ミニトマトも作っている。もちろんたわわに実っているのだが、実は、それとは別に、2年生の息子もミニトマトを育てていたらしい。
夏休み前に「ミニトマトの鉢を持って帰ってください」
とのプリントの文言を見て、初めてそのことを知る。
そういえば、娘のときもあった、「ミニトマトの観察」。全国の2年生はきっと育てているに違いない。小学生のいる家庭にはあるあるの、『青いプラ素材の鉢植えセット』が、ここでも健在だ。
畑やハウスでこんなに本格的に栽培してるのに、鉢でも一応やるんだなぁ。ふぅん。
そこは教育課程をなぞっているのだなと、こそばかゆい気持ちになる。
教育課程の存在感が薄くなるくらいの農園活動の濃さよ。
いざ鉢を見てみると、例の青い鉢の中に
茎が太い、立派に実ったミニトマトがいた。
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ちなみに1年生はアサガオを育てる。
なんなんだろう
土なのか、太陽なのか。はたまた肥料なのか。
3年前、上の子が都会で育てたミニトマト鉢と全く違う。
とにかくすくすくと育った力強いミニトマト。
なんだろうねなんだろうねと言いながら
農業の村の本気を感じる植木鉢をそっと持ち帰る。
親子で耕す
親子農園の貸し出しがある、というので申し込んだ。
学校農園の横に広がる畑を、区画ごとに貸し出してくれるという「親子農園」。
植えるものは自由!
そして、なんと無料!!
土地があり余る田舎は、ほんとうに懐が広い。
周りに遅れじと、せっせと耕して、石灰を撒き、自宅の庭に植えきれなかった、かぼちゃといちご、えだまめ、とうもろこしを植える。
開墾したての庭に比べ、耕され続けてきた土はふかふかして豊かだ。
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右端がかぼちゃ
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最近は、植えたかぼちゃが、あまりの勢いで成長してくるのでびっくりしている。
つるをのばし、わがやの区画をほぼ埋め尽くす勢いのかぼちゃ。すでに小さな実をつけていて、膨らみ始めている。ハロウィンには自作のかぼちゃが使えるかも。
パクリの記憶
親子農園を見に行った帰り、子供たちがこっちこっちと教えてくれた。
なんだろうと寄ってみると、赤い実がなっている。ラズベリーだ。
おもむろにラズベリーを摘んでパクリ。
おいしいよ、と言いながら手慣れた感じでまたパクリ。
そうそう。
こういうのをさせてあげたかったのだ!
わたしは関西の田舎で、田んぼに囲まれて育った。畦に咲くれんげを摘み、蜜を吸う。畑になるいちごを赤くなったものを見極めて摘む。
そんな、ささやかな収穫体験が、今もしあわせな記憶としてよみがえる。
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学校にはラズベリーのほか、校庭沿いにブルーベリーやハスカップが植えられている。
子どもたちは下校時などに思い思いに立ち寄り、実を探し、パクリとつまんだりして食べているそうだ。
育てた実りをいただきながら暮らす、素敵な体験を、ここで。
それは、大人になったいつか、思い出しても幸せをくれるはずだ。
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