輪廻転生
「いたッ」
また、躓く。
年中部屋がごちゃついているせいで、配線が足にまとわりつく。
「あー、鬱陶しい」
整った部屋なんて、数年見ていない。そんなもんだ。
あの時、思い立って引っ越したのが、もう懐かしいくらいになる。
何もかもまっさらになると信じていた、あの時。
幻想にすら、しがみつきたかったのかもしれない。
あれから数年後。
私の気持ちとは裏腹に、部屋はどんどん姿を変えていった。
あれだけまっさらな空間だったのが、見覚えのあるものに戻ってゆく。
せっかく捨てたはずのぬいぐるみなんて、キョトンとこちらを見つめている。
あっという間に、違和感のない部屋が、当たり前が、できてしまっていた。
引っ越した当初は、あれほどハッキリ見えたはずの月も、今は遠くにぼうっと見える。
少し寒気を感じ出し、またクイッとアルコールを体に流す。
今日は深く眠れそうな予感がした。
頭をぼうっとさせながら、よろよろと部屋に戻り、床についた。
あたり一面真っ白な世界に、ポツンと私だけ立ちすくんでいる。
どこまでも、どこまでも、ひたすらに白い。
私の足音以外、何も聴こえやしない。
ふと振り返ってみると、
すうっと、曲がりくねった、同じ形の足跡が、背後に連なっている。
そうか。
人は、「変わった」と思いたいだけの生き物なのかもしれない。
日差しのせいで目が眩む。
天井を仰ぐようにして伸びをすると、グウッと音が鳴る。
さあ、そろそろ、生きますか。
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