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「経理が、経営管理に集中できる世界を作りたい」 元経理担当が挑戦したBill One正式リリースまでの道のり

働き方を変えるDXサービスを提供する
Sansan株式会社のnote編集部です。

今回は、立ち上げから2年でARR10億円を突破し、成長を続けるインボイス管理サービス「Bill One」の起案者である柴野亮にインタビューをしました。

経理担当としてSansanに入社した柴野が、プロダクトを正式リリースするまでの経緯を聞きました。

ーBill Oneとは

Bill Oneは、Sansan株式会社が提供するインボイス管理サービスです。紙・PDFなどの形式を問わず、あらゆる請求書をオンラインで一括受領し、データ化した請求書をクラウド上で管理できるサービスとして、2020年に正式にリリースしました。

おかげさまで多くのユーザー企業の皆さまに支えられ、請求書受領サービス市場でマーケットシェアNo.1を獲得することができました。

ー自己紹介をお願いします。

Bill One Unit プロダクトマネジャー/公認会計士の柴野です。

公認会計士試験合格後、監査法人で約5年勤務し、Sansanに入社。経理担当として、経理実務、資金調達、上場準備業務を担当していました。

経理担当の時に感じた業務課題を解決するサービスとして、インボイス管理サービス「Bill One」を起案し、現在はプロダクトマネジャーを担当しています。

経理としての苦しみがBill Oneを作るきっかけに

ーBill Oneを構想したきっかけを教えてください。

「ルーティンワークばかりで本当に自分がやる意味あるの?」
Sansanに入社して経理業務を担当していた私は、日々そんな思いで仕事をしていました。

紙で届く請求書を手入力で打ち込み続ける毎日。人間がやっていることなので当然エラーが発生します。エラーを防ぐために何重にも確認し、別の担当者にも確認依頼を行っていました。

また、経理の処理業務は属人化していて、同じ発注内容でも担当によって勘定科目が異なるといった問題も発生していました。「先月は外注費に計上されていた項目が、今月は広告宣伝費に計上されている」ということも。属人化した仕訳では正確なデータ分析、経営判断ができません。

「紙の請求書をデータ化して業務を効率化したい。経理はもっと経営判断に関わるような仕事をするべきだ」

そんな想いからプロダクトの構想をスタートしました。

ー構想からどのような形で事業化していったのでしょうか。

2016年にBill Oneを新規事業として立ち上げたいと構想しました。

しかし事業の立ち上げは、私の担当業務とは全く関係がありません。
はじめは担当業務を終えた終業後に企画書を書き続けることからスタートしました。作り上げた企画書をさまざまな立場の社員に見てもらい、ブラッシュアップを続けていました。

(当時の企画書を一部抜粋)

代表の寺田にも企画書をぶつけましたが「よくわからない」とバッサリ斬られました。Sansanをゼロから構想し、多くの企業家へアドバイスも行っている寺田からすれば、事業経験のない私の提案への反応としては当然だと思いました。それでも「経理の業務を効率化し、経理の価値を向上させたい」という想いを持って企画書のブラッシュアップを続けていました。

そんなある日、「新規事業をやりたいならまずはビジネスを勉強せよ」と寺田から話をもらったため、経理担当から新規事業開発室へと異動を志願しました。新規事業開発はおろか営業も経験したことのなかった私ですが、企画書を提案し続けたことが目に止まったのかと思います。

新規事業開発室ではさまざまなプロダクトの立ち上げに関わり、ゼロからプロダクトを立ち上げる工程を学びました。新しい部署での忙しい日々ではありましたが、Bill Oneの構想は練り続けていました。

そして新規事業開発室で経験を積んで約1年。

会社から声がかかり、遂にBill Oneのプロジェクトをスタートするチャンスが訪れました。

ーそんな経緯があったんですね。そこからBill Oneの立ち上げはどのように進んだのでしょうか。

Bill Oneの最初の機能は、紙の請求書を経理担当者にスキャンしてもらうことで、支払いに必要な項目をデータ化するものでした。

当時のBill Oneチームは、私とエンジニアの2名のみ。機能も構想時の計画とはほど遠かったですが、まずは小規模でプロダクトを作り、ユーザーにとっての価値を探るところからスタートし、マーケットの反応を見ました。

中小企業に狙いを定めて電話営業を行い、何社も何社も営業を行い続けましたが、契約企業は0社。

「経理業務として効率化はするものの、自分達でスキャンするぐらいなら今のままでいい」
企業からのフィードバックは厳しいものでした。

請求書は、出社して手入力するのが当たり前。リモートワークが普及していない当時は、この価値観を崩すハードルの高さを強く感じたことを覚えています。

ー順調に見えるBill Oneも当初は苦戦していたんですね。ここからどのように軌道修正していったのでしょうか。

経理担当者の「当たり前」を覆すためには、経理業務をもっと効率化する必要があると思いました。

そこで経理担当者ではなく、現場の請求書受領担当者がスキャンする仕組みを考案しました。仕訳機能も追加し、経理業務をとことん効率化したプロダクトをリリースしました。

現場の担当者は、スキャンの手間を省くため、取引先に対して「今後はメールで請求書を送ってください」と依頼することを想定していました。取引先企業としても紙の請求書を送るより、メールの方がお金もかからず楽なので喜ばれると思っていたのです。

請求書を受領する方法をメールに変える流れを作ることで、関わる全ての人の問題を取り除き、紙の請求書のやりとりが一気に電子に変わると仮説を立てました。

しかし、電子化の流れを作ることは簡単ではありませんでした。
「請求書は紙でしか送ることができない」という発行企業が想像以上に多かったのです。

当時のプロダクトでは、紙の請求書をスキャンするのは現場の担当者です。
経理担当者の業務は軽減されましたが、現場の担当者はスキャンする工数が増えるばかりで大きなメリットを感じず普及しないプロダクトとなりました。

ーなるほど。こうした結果を踏まえてどのように軌道修正していったのでしょうか。

紙の請求書はそう簡単にはなくならない。
大幅なモデルチェンジが必要と判断し、これまでの考えを全て捨ててゼロから考えることにしました。

経理担当者も現場担当者も請求書のスキャンに大きなストレスを感じていることは明白でした。
それまではどの部門にスキャンを担当してもらうかを試行錯誤していましたが、スキャンそのものをサービスとして提供することが求められていると考えました。

そして、代理で受領した紙と電子の請求書のデータ化を前面に押し出した、現在のBill Oneに近いモデルが生まれました。

請求書受領とスキャンによるデータ化を丸ごとBill Oneが請け負い、それをデジタルで管理することにより請求書の進捗情報が正確に把握できるプロダクト。
これならば、経理担当者だけでなく現場の担当者にも喜ばれると思いました。

当時「請求書発行」領域のサービスはたくさんありましたが、「請求書受領」領域のサービスはありませんでした。
紙やPDFなどさまざまな形式の請求書をデータ化するのは、それだけ難易度が高いということだと思います。しかし、今までSansanで培ってきた紙の名刺を正確にデータ化する技術を活かせば、絶対にできると確信しました。

今では市場も盛り上がり、「請求書受領」領域にもさまざまなサービスがありますが、Sansanのデータ化精度は今でも変わらない強みの一つです。

「経理の業務を効率化し、経理の価値を向上させたい」

ーその後、Bill Oneを正式リリースしました。反響はどうでしたか。

2020年、新型コロナウイルス感染症の影響で、図らずともリモートワークが加速することは明らかでした。事業の方向転換を行ってきたBill Oneですが、リモートワークをフックにすればマーケットに受け入れられると考え、2020年の5月にBill Oneを正式にリリースすることに決めました。

これまでは鳴かず飛ばずであったBill Oneでしたが、プレスリリースを発表したところ、そこから一気に100件以上の問い合わせがありました。1本のプレスリリースからここまで反響があるとは思っておらず、働き方や業務の在り方が大幅に変わっていくのを感じました。

ーリリース後、多くの企業に導入されたBill One。プロダクトの価値を実感した瞬間を教えてください。

Bill Oneのウェビナーで、導入企業である株式会社八芳園の経理担当・平沼様が登壇してくださいました。その時の言葉が忘れられません。

「経理はAIが出てくると不要になる、という辛辣なコメントをいただくことがありました。しかしAIによって代替される業務は、請求書の入力作業など『過去』の処理業務と認識しています。来期の予算策定や新規事業の中期計画などの『未来』の仕事は、人間でなければできない仕事です。Bill Oneの導入によってルーティンワークの『過去』の処理業務を軽減し、付加価値の高い『未来』の仕事の時間を確保する大きな一歩になると確信しています

平沼様からの言葉は、まさに私がBill Oneを通して実現したい世界そのものでしたし、自分の作ったプロダクト価値に共感してくれる人がいるのはとても大きな励みになりました。思わず涙を流したことを今でも覚えています。

ー柴野さんの苦労が報われた瞬間ですね。最後にBill Oneへの想いを聞かせてください。

今でこそBill Oneは2年でARR10億円を突破し、急成長サービスと言っていただけることが多いですが、立ち上げ当初は何度も諦めかけそうになりました。「創業以来大事にしてきた名刺以外のサービスに価値があるのか」といった社内の声もありました。

当時は自分がやっていることが実るのか、この選択が正解なのか分かりませんでした。でも今ではやり続けて良かったと思えますし、やり続けることができたのは「経理が経営を管理する仕事にもっと集中できる世界を作りたい」という想いがあったからだと思います。そしてその自分の想いを信じてチャレンジする環境をくれた会社にも感謝しています。

経理の非効率な業務をなくし、経理が本来の経営管理に多く時間を使えるようになれば、企業はもっと良くなると私は思っています。
今後も経理業務、ひいては企業成長を後押しできるように、Bill Oneをアップデートしていきたいと思います。

インボイス管理サービス「Bill One」のプロダクトサイトはこちら

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