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元リサーチャーだからこそできた、現場の声を生かしたプロダクト開発とは。Sansanが生んだリーガルテック、開発の裏側

企業の契約業務を効率化するリーガルテック。働き方改革の推進や、政府からの活用ガイドライン公表などもあり、ますます注目を集めています。AIの登場で競争が激化している中、契約データベース「Contract One(コントラクトワン)」は他のリーガルテックが進む方向とは異なり”Sansanらしい”進化を遂げています。
独自路線を行くContract Oneの、開発の裏側をインタビューしました。

大泊 杏奈(おおどまり あんな)
Contract One Unit プロダクトグループ PdM
大学卒業後、マーケティングリサーチ会社にて法人営業とリサーチャーを経験。その後Sansan株式会社に転職し、当初はUXリサーチセンターにてリサーチ業務に従事。現在はPdMとして契約データベース「Contract One」の開発に携わっている。


リアルな現場の声がプロダクトを進化させる 

ー珍しいキャリアだと聞いていますが、改めて自己紹介をお願いします。

マーケティングリサーチの会社に入ったのが最初のキャリアだったのですが、その頃からいつか事業会社で企画系の仕事をしてみたいと思っていました。Sansanに出会ったのは、前職で働き始めて5年がたった頃、UXリサーチセンターという部署ができたタイミングでした。プロダクト横断でリサーチをしながら開発の意思決定に寄与していく専門組織なのですが、いずれプロダクトマネジャー(PdM)の輩出も見据えているという話があり、自分のやりたいことに近いと思って入社しました。

UXリサーチセンターでは開発周りの調査をすることが多く、自然と自分でも機能を作ったり、検討したりといった次の段階にも関わっていきたいという希望が生まれて、そこからPdMを志望しました。現在はマーケティング、カスタマーサクセス(CS)、営業といったメンバー、そしてお客様からの声をしっかり開発に届けつつ、開発側と会話しながら実際にプロダクトに実装するところまでを担っています。

ーPdMになった現在も開発のためにリサーチをする場面は多いですか?

多いですね。例えば新機能を作るために今プロダクトがどう使われてるかをヒアリングするような場面があります。まず、お客様の使用状況を見たり、CSが知っている情報を聞きながらヒアリングするお客様を検討します。そのお客様に、新しい機能を実際に見ていただき、ご意見を伺うんです。
PdMとしての立場だと、開発のアイデアを幅広く把握した上でヒアリングできるので、お客様のお話に応じてどの企画に生かすかや、追加でここまで聞けば別の企画にも生かせる、というように1つのヒアリングで得られる情報が濃くなるのは良い部分です。

リサーチャーに依頼する場合もあります。テーマを絞らなければならない制約はありますが、中立的にリサーチができるメリットもあります。どちらも良いところはあるので、バランスをとりながらヒアリングするよう心がけています。

ーお客様のお話を聞いてみて初めて分かるようなこともありますか?

ありますね。Contract Oneのお客様は法務部門の方が多いですが、私自身が普段法務の仕事に関わる機会が多いわけではない分、実際のお客様の声を聞くことを大切にしています会社によって結ぶ契約書の種類や内容もさまざまで運用方法も異なるので、話を聞いて初めて分かることは多いです。

お話を聞きながら「こういった機能が欲しい」と聞いたら、実際に作ったらどうなるのかを試して、現場に寄り添ってプロダクトを改善しています。今考えている新しい機能についても、日々お客様と会話しながらブラッシュアップしています。

表面的な便利さではなく、お客様に寄り添った本質的な価値提供を

ー実態を聞いて寄り添うことが重要なんですね。お客様の声を聞く上で、気をつけている点はありますか?

社内のメンバー経由でお客様の声を聞くこともあるので、一緒にContract Oneを担当しているメンバーと近い距離で仕事をするように心がけています。例えば新機能が出ると、その機能をどう活用しているのかを知りたいという場面があるんです。そういうときは、その機能を使っているユーザーの方を担当するカスタマーサクセス(CS)と会話をしにいきます。CSは細かくお客様とやり取りしているので、現場の困り事やフィードバック情報をたくさん持っているんです。なのでCSとの会話の中で知りたいことがクリアになることもありますし、さらに深い話を聞くためにヒアリングをお願いするようなこともあります。

Contract Oneはリリースから2年の若いプロダクトということもあり、今後に期待して導入してくださっているお客様もいらっしゃいます。自分たちの声が開発に役立つと考えて、いろいろと教えていただけるのはありがたいですね。

ー3月に実装された契約状況判定と契約ツリーについても、お客様の声を聞きながら開発していったのでしょうか?

契約状況判定や契約ツリーについては、開発前に実施したヒアリングでお客様の反応が特によかったことが開発の後押しになっています。
契約状況判定に関しては競合のプロダクトにも似た機能はあるのですが、ただ判定できるだけではなくアイコンをつけた仕様を検討していました。お客様にヒアリングした際にも、アイコンで視認性が上がり、契約中か否かが一瞬で分かる点が非常に好印象でした。一目で理解できることが価値になると確信できたので、アイコンをつけた現在の仕様にしています。

契約ツリーの自動ひも付けは、子会社の「言語理解研究所」のAI技術を使えば実現可能であり、さらにユーザーヒアリングの中で自動化には大きな価値があると分かったため実装に踏み出しました。

これまでも手動で関連契約をひも付けすることはできました。ただユーザーにヒアリングしてみると、ほとんどの企業では体系立てたひも付けができていないこと、月に2000件以上が手作業でひも付けされており、明らかに手間であることが分かりました。大変な思いをしながらひも付け作業をされている実態を把握したことで、全員一致で開発に着手することになりました。

ー開発する中で苦労された点はありますか?

契約状況判定については判定のロジックを確定するまで苦労しました。契約状況のアイコンは「契約中」「契約終了」など8種類あるのですが、どういう場合は契約中、もしくは契約終了なのか、さらにユーザーの権限をどこまで与えるのか。例えばユーザーによって契約終了の定義が異なると、データベースとして矛盾が起きてしまう。

それが起きないようにかなり細かく定義づけをしています。その定義づけがすべての契約書に対して当てはまるのか、さまざまな会社の管理実態に即しているのかを精査していくのに苦労しました。

契約ツリーは精度検証に苦労しました。契約書の形式は本当にさまざまで、人の目で見ても「この契約書の親契約はこれ」という関係を判断するのが難しいケースもあるくらいです。当社の法務に協力してもらい、当社の契約書で親子関係を何百件も確認して精度を向上させたり、ユーザー企業様からもひも付かなかった事例のフィードバックをいただいて改善していきました。

ユーザーとの架け橋として、プロダクトの価値を伝えたい

ー最後に、大泊さんの今後の展望について教えてください。

Contract Oneは、とことんお客様に寄り添って、契約現場の実際の困り事に耳を傾けてきました。お客様の声で成長させていただいた側面がとても強いと思っています。それを可能にしたのが、メンバー間の距離が近くて開発に声が届きやすい環境なんです。この環境は、今後事業が大きくなりメンバーが増えても守っていきたいです。

逆に伸びしろに感じているのは、開発側が持っている情報を、営業メンバーやその先のお客様に伝えていくという点です。営業など他のメンバーも活用できるようなプロダクトの情報をたくさん持っていますが、まだまだ伝え切れていない部分も多いと感じています。CSと開発の架け橋となってお客様の意見は伺えていますが、営業との架け橋としてお客様にプロダクトの正しい情報をお届けすることはまだあまりできていないので、これから伸ばしていきたい部分ですね。

【もっと「Contract One」を知りたい方へ】
他にもContract Oneに関わるメンバーのnote記事を公開しています。ぜひご覧ください。

「契約情報の全社活用が事業成長につながる」Sansanがリーガルテックに挑む理由

Contract Oneとは
Contract Oneは、Sansan株式会社が提供する契約データベースです。企業の重要な資産である契約書を当社独自の技術で正確にデータ化し、企業間の取引条件が網羅されたデータベースを構築します。関連する契約を自動でひも付ける機能が全社の契約状況を俯瞰して管理することを可能にします。全社で運用できる契約データベースが、リスク管理にとどまらず、企業の収益最大化を後押しします。今年3月には「契約ツリー」と「契約状況判定」の2つの新機能をリリースしました。

▼Contract Oneプロダクトサイトはこちら


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