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出会いをデザインする。ブランディングから組み立てるSEO対策について

こんにちは、佐野彰彦です。私は、「ビジネスとデザインの統合」を自身のテーマとしており、ブランディングデザインの分野から、ビジネスに結果をもたらすことを仕事としています。

今回は、「SEO対策」について、私自身が15年間に渡り、研究を重ねてきた方法についてまとめてみようと思います。

私がはじめにSEO対策というものに触れたときはまだ、世の中一般的に、「ウェブマーケティング」という概念が浸透しておらず、GoogleよりもYahoo!の方が圧倒的にシェアを持っていて、バックリンクなどを増やすだけでも比較的簡単に上位を獲得できるような時代でした。2006〜7年頃だったかと思います。

その時から、SEO対策については、「そもそも上位表示を目的としても意味がないこと」「強引なSEOで、質の悪い見込み顧客からPVを獲得してもビジネスは返って苦しくなること」などを実感しており、一般的にセミナーや書籍で語られるようなテクニカルなSEO対策からは、距離を取ってきました。

私自身は、「ブランディングを軸に、質の高い見込み顧客からきちんと選んでもらえる会社や商品をつくっていく」ことを自分の仕事上、とても大切にしていますので、ひたすらに上位表示を目指して、PV増やして、とにかくクリックさせるという考え方ではなく、「出会うべき良質な検索ユーザーと、正しくマッチングする」という目的に集中して、企業(特にニッチな産業でがんばっている中小企業)に対して、本質的に役立つSEO対策の方法を、独自に研究して磨き上げてきた次第です。

この記事では、そのSEO対策の考え方と実践方法について紹介させていただきます。
(もちろん、他社でも、本質的なSEO対策に取り組まれている方はいらっしゃると思いますので、類似的な情報はあるかもしれません。「独自」と言ってしまっていますが、他の情報を参考にはせず自社研究のみで積み上げてきた方法という意味ですので、そこはご容赦いただけますと幸いです)

カヤックスクールを運営しています。カヤックで上位表示させたいです。

以前、カヤックスクールを運営する会社のブランディングを担当したことがあります。「カヤック」とはとても粗く説明すると、パドルと呼ばれる漕ぎ用の道具を使い、海や川で乗る小さなボートの一種です。海遊び用のカヤックのことをシーカヤックとも呼び、一部では人気のあるレジャーです。

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初心者でも手軽に日帰りで遊べるレジャーということもあり、当該企業では、「カヤックを手軽に体験できるスクール事業」を立ち上げておられました。しかし、一部では人気になりつつあるとはいえ、まだ多くの受講予約が入ってくる状況にはなっておりませんでした。

そこで、事業主は、「カヤックでSEO対策して上位表示され、アクセスを増やしたい」という意向をお持ちでした。

そもそもカヤックはカヤックでいいのか?

事業主は「カヤックで上位表示させたい」という意向ではありましたが、そもそもこの「カヤック」というレジャーは、一体どのくらいの人が知っているのか、「カヤック」と聞いて、どのようなものかを明確に説明できる人は、そもそもカヤックに詳しい人なのではないか。私自身が、カヤックと聞いても、なんとなくぼんやりのイメージしかなかったので、そこがまず引っかかりました。

たとえば私は以下のような画像を見せられて、「これはなんですか?」と問われたとします。

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きっと「カヌー」や「1人用ボート」などと言ってしまい、「カヤック」という言葉を思い浮かべることができないな、と思いました。(私個人は、アウトドア遊びはけっこう好きな方で、好奇心もありますが、カヤックについては無知という状況でした)

そもそも、誰と出会いたいのか?

そこで私は、事業主にこのように質問をしました。

「御社がブランディングやマーケティングを通じて増やしていきたいのは、どんなタイプのお客さんでしょうか?」

カヤックをまだやったことのない初心者か、ある程度カヤックの魅力をしっている中級者か、それとも本格的に趣味としているような上級者など、誰に知ってもらいたいか、どのような属性の見込み顧客を開拓していきたいのか、そこをまず確認する必要がありました。

その問いに対して、事業主の思いは明確でした。

「まだカヤックの魅力を知らない、こんなに手軽で楽しい海遊びがあることを、多くの人に知ってもらいたい。そのきっかけとなるようなスクールでありたい」

とのことでした。
だとするなら、そのような人はそもそも「カヤック」で検索しているのだろうか?私のようにカヤック未経験者でありつつ、アウトドア遊びが好きという層が見込み顧客だと考えられますが、「カヤック」という専門的な言葉で検索しているとは思えませんし、そもそも「次の休日は、カヤックやってみたいなー」と、具体的に思い描いたことは一度もないわけです。

上記のことから、SEO対策を実施する前に、

まずは、きちんとブランドコンセプトを設定すること
次に、最も出会いたい顧客イメージ(ターゲット)を設定すること

上記の2つを明確にした上で、あらためてSEOの戦略、狙うべきキーワードの選定から組み立て直しましょう、というご提案となりました。

SEOを考える前に、ブランドコンセプトを明確化する

そもそもSEO対策はなんのためにやるのかといえば、事業を成功に導くための集客手段(のひとつ)です。ですので、「カヤックで上位表示させる」ことが目的になってしまっては危険であり、あくまでも良質なお客様を増やすための手段にすぎないということを忘れてはいけないのです。

ここで、私は、一旦SEO対策のことは横に置いていき、「事業の目的」を考えましょうというご提案をしました。そして、「ブランドコンセプト」をまずはしっかりと設定しましょう。とお伝えしてプロジェクトをはじめることにしました。

繰り返しになりますが、事業主の思いとカヤックスクール事業の目的は明確でした。

「まだカヤックの魅力を知らない、こんなに手軽で楽しい海遊びがあることを、多くの人に知ってもらいたい。そのきっかけとなるようなスクールでありたい」

ということです。そこで、ブランドコンセプトは、「初心者でも手軽に楽しめる、休日をちょっとゆたかにするカヤックスクール」と設定しました。

事業の特徴・魅力を丁寧に洗い出す

当該のスクールは、様々な特徴や魅力がありました。

・講師陣が経験豊富であり、初心者からの評判がとてもよい
・レンタル道具一式が取り揃っており、手ぶらで遊びに来ても十分楽しめる
・スクールの受付やリビングルームがとても開放感ある空間で居心地がいい
・BBQなどのオプションも充実しており、会社の懇親会などでも使える
・都内からのアクセスがよく、東京在住の人が日帰りで楽しめる立地の良さ

などです。十分に魅力を打ち出せることがわかりました。

ターゲットを設定する

ターゲットは、もうブランドコンセプトから明確に見えている状態ですが、改めてきちんと設定しておくようにします。

カヤックはやったことがないけれど、アウトドアの遊びは好きで、好奇心がある。友達やカップルで楽しめる海遊びを探している。

上記のような20〜40代をメインターゲットとして、あらためてSEO対策を設計していきます。

ターゲット心理の分析から、検索キーワードを探す

上記ターゲットは、どのような心理であるか、つまりインサイトを洗い出していきます。

・アウトドアが好きで、新しい趣味を体験してみたい
・友達同士やカップルで楽しめる海遊びをやりたい
・道具などはレンタルしたい、なるべく軽装備で遊びたい
・都内から日帰りで遊べるレジャーを知りたい
・海で見たことのあるあの小さな手漕ぎボートに乗ってみたい
・友達が最近カヤックにはまっていると聞いた

などなど、ターゲットの状況心理を、可能な限り、想像して書き出していきます。この作業から、SEO対策で実際に狙っていくキーワードを抽出していくので、複数人数で取り組み、なるべく量をたくさん出します。

この作業は、実際にそんな心理の人がいるかどうかの正解を問うものではなく、可能性を広げることが重要になります。

ターゲット心理から、いよいよ検索キーワードを抽出していきます。私はこの「検索キーワードの抽出」が、SEO対策の成否の90%を決定すると考えています。この検索キーワードが、筋の良いものでなければ、その後、WEBサイトの内部構造をどれだけ工夫したり、チューニングしたとしても、事業の成功には結びつきません。

単純に、検索でヒットしていたとしても、検索ユーザーが見込み顧客ではない人であれば、事業の成長とは無関係であり、ビジネスにはなりません。この場合は、「カヤックスクールの新規申込者」となり得る人を、検索経由で引き込んでくることが目的になります。

キーワード発掘シートから、ニッチキーワードを抽出

検索キーワードの大原則ですが、「競合が少ないけれど、検索されている可能性がある」というような言葉をなるべく多く探し出すことです。

いわゆるニッチな検索キーワードをたくさん掘り起こし、そのキーワードに応じたコンテンツを作成していくことが、WEBマーケティングのベース戦略になります。

私は長年、この「ニッチでありながら、ビジネスを成長させる可能性の高い検索キーワードを、いかに効率的に発掘できるか」を研究してきました。そして現在では、「キーワード発掘シート」という独自のフレームワークを作っており、そのフレームに応じて、SEO対策を進めることこで、高い確率で成果を生み出せるようになりました。

すべてを公開することはできないのですが、一部、そのキーワード発掘シートの考え方を共有いたします。

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上記のようなフレームワークシートを使って、ターゲットが検索する可能性のあるニッチキーワードを効率的に抽出できるようにしている。


①商品・サービスから発掘する
まず基本となるのは、商品・サービスの名称や特徴から発想を広げる方法です。たとえば、「カヤックスクール」を別の言い方にすれば「カヤック教室」「カヌー初心者レッスン」「カヌー一日体験」など、言葉は違えども、求めている奥底のニーズは同じであるというキーワードを洗い出していきます。

人間にとっては同じ意味であったとしても、言葉が少しでも違えば、検索結果は異なります。ここがニッチキーワードを洗い出す最大の意味です。ライバルのカヤックスクールが必死に、「カヤック」でSEO対策を仕掛けているのを尻目に、「カヌー初心者レッスン」などで、見込み顧客を引き込むことが目的になります。

このあたりの感覚はけっこうSEO対策独特のものになりますので、はじめは慣れないと思いますが、練習あるのみです。カヤックとカヌーは、専門家からすれば違うものかもしれませんが、初心者にとっては区別がつかないので、場合によっては、カヌーという言葉を使って、初心者の方の検索ニーズと合わせたWEBページを作成するなどの工夫をしていくことになります。

②ターゲットの心理から発掘する
ここは前述の通り、最も重要視するキーワード発掘方法となります。カヤックやカヌーやスクールなどの固有名詞ではなく、実際にターゲットが探している本質的ニーズに近いキーワードを掘り起こします。

たとえば、

アウトドア体験、週末おすすめデート、都内日帰り遊び、初心者海遊び、海遊びおすすめ、手ぶらで海遊び、海遊び混雑

などです。ポイントは、「休日に海やアウトドアで遊びたいけど、カヤックとはまだ決まっていない」という見込み顧客と出会えるキーワードを探求していくことです。ここが上手くいくと、それだけで競合の少ない、ブルーオーシャンなSEO対策が実現できます。

良質なキーワードが発見でき、良質な見込み顧客から予約が入るようになると、単なるマーケティングの成功にとどまらず、一気にブランディングが加速していき、事業の成長につながります。

発掘したキーワードを使いながら、WEBコンテンツを充実させていく。

当然ではありますが、発掘したキーワードは、発掘しただけではまったく意味を成しません。そのキーワードを意識したWEBコンテンツを計画し、WEBサイトを充実させていくことで、はじめてSEO対策が成果を生み出す状況を期待できます。

私の場合は、まず、発掘したキーワードの中から、重要度の高いものと、あわよくば文章中に含める程度でいいものを分類した上で、ブランドサイトの構成を設計していくようにしています。

ニッチでありながら、ターゲットとの出会いに直結しそうなキーワードは、特にページ名や見出しとして使うように計画します。また、すべてのキーワードを、ブランドサイト内だけで網羅することは難しいので、ブログやSNSでのネタとしても使用できるように、キーワードリストを作成しておき、コツコツと繰り返し使用する言葉として、アーカイブしておくようにします。

ブランディングから組み立てることで、宝物のような検索キーワードが発掘できる。

ここまで、SEO対策の記事として、キーワード発掘方法を中心に、ややテクニック的な方法論を紹介してまいりましたが、私自身、最も大切にしていることは「ブランディングデザイン」です。どれだけニッチでおいしいキーワードを見つけられたとしても、事業・商品・サービスそのものに魅力がなければ、共感はおこらず、ビジネスを成功させることは難しいからです。

まずは事業や商品をしっかりと魅力的なものへ磨き上げること、ビジネスの大義やコンセプトを明確にすること。そして、素敵なデザインや表現を意識すること。

その土台があってこそ、共感を呼ぶことができます。その上で、上記のSEO対策を丁寧に実施していくことで、質の高いお客様が集まり、力強くビジネスを成長させることができるのです。

逆にいえば、ブランディングからきちんと組み立てることで、「こんなお客さんと出会いたいな」「こんな人はきっとこんなことを検索しているだろうな」「うちの商品をこんな人に届けたいな」というイメージが明確になり、キーワードが発掘しやすくなるのです。

まとめ:「出会いをデザインする」。長期的に事業を育てることができるSEO対策をしていこう。

私は「ブランディングデザイン」の専門であり、SEO対策に特化したコンサルティングを提供してはいませんが、本当に事業に結果をもたらすことができるSEO対策とは、短期的に上位表示を目指すことではなく、長期的に事業を育てることにつながるものと考えています。

「出会いをデザインする」のが本当のSEO対策であり、そのようなSEOを実現するためには、ブランディングデザインの取り組みを土台にすることが大切と考えます。

事業のコンセプト、特徴、魅力を明確に打ち出し、出会いたいお客様と必然的に出会えるように仕組みをつくっていく。そのひとつの有効な方法が、「ブランディングデザインから組み立てるSEO対策」と思います。

このようなことを記事化しておきながら恐縮ではありますが、私自身は、SEO対策の専門家ではありません。よってSEO対策単体でのご相談やコンサルティングはご提供できませんが、みなさまの事業に何かしらの参考にしていただけましたら幸いです。

お読みいただきありがとうございました。
よろしければ以下の記事も合わせてお読みいただくと、よりブランディングとマーケティングの関係を理解いただけるかと思います。


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