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「ショート」落ちているスリッパ

お題がないと書けない事に気付いた私(苦笑)
日本の歌は作詞が先で作曲が後の物が多いと聞いた。
じゃあ、天邪鬼な私は反対に挑戦しようと思って「画像」を先に其処からイメージを膨らませてみた。
大好きな稲垣純也さんのお写真をお借りして、風邪のリハビリのつもりの「ショート」




「落ちているスリッパ」
       ※サブタイトル『優等生』


嫌いな訳じゃなかったの。

私が煙草を吸うように大好きじゃないけど、それなりにまるでファッションのように裕也とは付き合っていた。
そこそこの身長とそこそこのルックス、そこそこの会社の社員、そこそこの…
まぁ、中の上くらいの男。

私が自分で自己診断すると中の中の女だから、出来過ぎた彼氏と言ってもいいかもしれない。

でも…

愛していなかったと言えば嘘になるかな…
ただ二年も付き合えば、脳のドーパミンの活性化も薄れて、およそ平常心のようなベッドでの行為にも飽き飽きしていたの。
相性は悪くなかったと思うわ。
そうでなかったら、こんなに長くは続かなかったはずだもの。
でも出逢った頃のジェットコースターに乗っているような波は、私達には既に訪れてはいなかったと思うの。男の性は分からないけど。
ドーパミンのことを「幸せホルモン」なんて、誰が名付けたのだろう?
「幸せホルモン」だとしたら湧いて来なくなっちゃったんだから、次のジェットコースターに乗り換えなくちゃ。


裕也は電子タバコじゃなくて本物の煙を欲する。
そのくせ、納豆は三十回混ぜないし、カレーとご飯は別々に口に運ぶ。
「インドへは行けないわね」
と言う私に
「行かないからいいよ」
と言う彼が最初のうちは愛おしかった。

今は臭い煙草の後のキスは嫌だし、納豆を混ぜないから私より早く食事が終わるのも嫌だし、カレー専門店でナンを注文出来ないのには不自由を感じる。

恋なんて、そんなものなのかな~。
二十歳の私に二十八の裕也は大人に見えたのに、今は、ただのオッサンにしか映らない。

ゼミの心理学の教授が言ってた。
「人間は二百歳まで生きられる身体で産まれてくる」
んだって。
でね、その後、色んなストレスで寿命が縮まっていくんだって。
だとしたら、ドーパミンの問題なんかより裕也は私の寿命を縮めてる物体なの?

だから言ってやったの。
「裕也と居ると死が近づくから、別れてね」
って、ベッドの後に。
それだけ言っただけなのよ?
変な裕也。

何で怯えた顔して窓から落ちちゃったのかしら?
ああ、私が握ってた包丁のせい?
だって、それは最後にドーパミン噴出したかっただけなのに。

裕也の履いてたスリッパが片方、ポーンと上手に着地するのを見てクスッて笑っちゃった。
教授、いい生徒でしょ?私。
これで当分、長生き出来るわよね…

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