東京の片隅で、紫陽花が爆発的に増えた。
今年はやけに、紫陽花がたくさん咲いている。
同じ都内でも、去年の今頃は埼玉寄りに、今年は千葉寄りに住んでいるからだろうか。とにかく紫陽花をよく目にする。
紫を中心にピンクや青の小さな花が集まったそれは、梅雨のじめじめした季節をパッと明るくする上品な花で。「藍色が集まったもの」と意味する「あづさあい(集真藍)」がなまったものが語源だと言われているらしい。
去年のちょうど今頃。日本中にはじめて「緊急事態宣言」なんていう物々しい名前の宣言が出され、スーパーの入店制限、学校の休校……世の中がしんと静まってしまって、また動き出そうとしていた、ちょうどその頃。
みんなで同じことを共有したい‼︎……と、わたしたちは熊本は菊池の紫陽花を手に、オンラインで繋がった。
lifft. のフローリストさんを講師に招いて、わたしたちの手が紡いだのは、紫陽花のリース。ただリースを黙々と作るのではなく、今日私たちの手元にある紫陽花は熊本の菊池から届いたものであること、紫陽花は土の成分によって花の色を変えること……そんなお話を耳にした。
わたしは聴覚障害があるから、全部の情報を耳だけで得ることは難しい。それでも、lift.の方々が話の要点をスケッチブックに描いてくれたり、大好きな仲間たちがzoomのチャットで話を文字化してくれたりしたおかげで、ちゃんとこのあたりの知識はついている。
zoom自体は自粛が始まるちょうど1年くらい前から使っていて、みんなの口の形を読み取りつつ、周りに文字で助けてもらっていた。だけれど、このイベントの後くらいから、zoomの字幕機能やUDトークを使った音声認識が使えるようになって得られる情報がグッと増えた。
使う人が増えると、それだけサービスもグッと充実する。ということを身に染みて知ったから、これからはどんなサービスであれ、利用する聴覚障害者がいることをもっと積極的にアピールしていこう。そんなことを思いつつ、大好きな仲間たちが手探りで情報保障をしてくれたあの頃のちょっぴりかけた情報もあったかくて好きだったりする。
そんなことを、紫陽花を見るとふと思う。
東京の片隅で、紫陽花が爆発的に増えた
なんてニュースはどこにも見当たらないから、たぶん、去年の今頃も、一昨年の今頃も、そのまた前も、きっとここに紫陽花は咲いていたのだろう。
でも、去年のあのあったかいワークショップを経てこの花がわたしにとって特別な存在になったから、そこにあることを慈しめるようになったわけで。
これからも、この紫陽花たちのようにわたしの生活の中で慈しめるものが増えていきますように。
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