「本物」を見られる機会はそんなにたくさんない。だから、楽しむための準備にも心を躍らせたいんだ。
はて、本当にこれだけでいいのだろうか。
旅の準備をしながら、いつも思う。心配性だから、旅に出るときには逐一持ち物リストを作って荷造りをする。それだからきっと抜けはないと思うのだけれど、わたしの持ち物はとにかく少ない。
実家へ帰省も大抵10日程度なことが多いのに、約20リットルのマリメッコのバックパック1つに収まる。同じ期間祖父母の家に帰省する母のスーツケースは、3倍の60リットル。しかも、パンパンに荷物が入っている。
結局買い物をしたり、おじいちゃんからお土産をもらったりすることを考えて、ここ最近は約30リットルのスーツケースを持っていくことにしているけれど、それでも母の半分だ。
今回も、旅の準備をしながら自分の荷物の少なさに不安を覚えてなんとなくディケンズの「クリスマス・キャロル」を忍ばせてみた。いや、「くるみ割り人形」持っているんだから要らないだろうと、心の中のもう一人のわたしがツッコミを入れる。ごもっともだ。
でも、30リットルのスーツケースのうち半分に何も入っていないのは心許ない。
しょうがないから、片方に入っていたポーチのうち2つをもう片方に入れてみる。総量は変わらないけれど、なんとなく荷物を持っているような錯覚があって、ちょっと安心してスーツケースのフタを閉めた。
念願のウラジオストク旅行。目的は、本場ロシアバレエの「くるみ割り人形」を鑑賞すること。
こうみえて、幼稚園から小学校卒業までの10年間バレエを習っていたことがあって、定期的にバレエを観たくなる。クリスマスといえば、「くるみ割り人形」。久しぶりに物語も読み直したし、荷物にも入っているから、機内でも再読できる。
ミュージカルにしろ、オペラにしろ演劇にしろ、なんならライブも。わたしは聞き取れないから原作を読みあさったり過去のDVDを見て予習することが多い。次に何が起こるか分かっていると、観るポイントも分かることが増えるし、聞き取れなくてもどのシーンをやっているのかが何となく分かる。
「分からない分からない」と、聞き取れないことを悲観していてもしょうがないし、名作は何度でも見たくなるもの。「ネタバレは嫌」なんて話も聞くけれど、「くるみ割り人形」も「オペラ座の怪人」も昔から何度も何度も上演され続けているのは、「何度も重ねて観る味わい深さ」があるからなんじゃないかと思っている。
振り付けや脚本はもちろん、演じる人やその日のコンディションによっても「全く同じ公演」は一度もない。
と思うと、「その公演ならでは」を満喫するには予習が必要だと思うのです。
今までは絵本で読んでいたから子ども向けにアレンジされていた表現もあったけれど、これはホフマンの原作を元に翻訳されたもので。
これまで「くるみ割り人形」といえば「金平糖の精」くらいの知識だったこの物語の背景が忠実に描かれていて、とても面白い。再読する中で、もっと丁寧に文の表現や挿絵を読んで、観劇に備えられたらいいなぁ。