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音の世界と音のない世界の狭間で

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聴覚障害のこと。わたしのきこえのことを、つらつらと。
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#聴覚障害

今日もわたしは #音の世界と音のない世界の狭間で という見栄に生かされている。

わたしの右耳は全くきこえなくて、左耳も補聴器を使用して生活する程度の難聴で。そんなわたしのみる世界を #音の世界と音のない世界の狭間で と名付けてnoteを書いている。 生まれつき右耳は全くキコエナイのでわたし耳は完全にキコエルということを知らないし、左耳の残存聴力があるので完全にキコエナイということも、また知らない。365日生きていれば、330日はわたしの生きるこの狭間の世界が好きだけれども、残りの30日ちょっとくらいは劣等感というか不平等感というかそういうマイナスな気持

一言一句斜め読みで『ハリーポッターと呪いの子』を。

週末、ずっとずっと楽しみにしていた舞台『ハリーポッターと呪いの子』を鑑賞してきた。鑑賞レポートは作成途中なので、また後日に更新する予定。盛りだくさんすぎて、数日経った今もまだじんわり消化している途中。 聴覚障害者のあるわたしは、舞台を観に行くとなると、事前に貸し台本を自宅に郵送してもらう。そしてそれを自宅で読み込んで、当日客席にも持って行って読みながら舞台を楽しむ。 ところがどっこい。今回の『ハリーポッターと呪いの子』は話題作ということもあるのか、台本の事前貸し出しどころ

この夜と出会うために。

この国は島国ということも相まって、とかく丘がたくさんある。そのなかでも、桜の咲く丘には【桜ヶ丘】や【桜台】、富士山の見える丘には【富士見ヶ丘】や【富士見台】と名付けがち。だから、はじめてその地の名前を目にしたときも「あぁ、ここは景色の綺麗な丘なのね」くらいの感覚で通り過ぎてしまっていたのだけれども。 わたしは聴覚障害があるので、音声で新しい情報を得ることは苦手。バスも景色を眺め、バス停の名前をひとつひとつ目で確認して、一人で歩けるようになる。久しぶりにその丘に向かった日は、

水色のスモックを着た3歳の女の子は。

水色のスモックを着た3歳の女の子。砂場で黙々と1人で遊んでいる。ふと周りを見渡すと、誰もいない。 「なんでだろう。。。」 そう思って教室へ視線を向けると、同じクラスの友達たちが室内で制作をしていた。 なぜか忘れられない記憶の断片。 幼い頃から耳がきこえにくかったわたしは、たぶん、遊びの終わりの合図がきこえなかったんだと思う。それに加えて遊びに夢中で。教室に帰ることができなかった。 今思い返しても、ショックだったとか寂しかったとかそういう感情が湧くわけではなく、ただそんな記

#音の世界と音のない世界の狭間で 生きるわたしが、電話を握りしめて涙を流した日のこと。

人にはそれぞれ良い思い出があるように、また嫌な思い出というものあって。それは、あるスイッチをポンと押したそのタイミングから、ゆっくりジワジワと、でも確実にわたしの中に広がっていくんだと思う。 わたしのスイッチは、固定電話だった。あの、役所とかによくあるような、元はきっと白かったんだろうけど今は日に焼けて黄ばんだ色をした、あの固定電話。 最後にあの形の電話を使ったのは、確か大学1年生の頃で。当時のバイト先に置いてあって、新人だったわたしはいつもコールが鳴るとすぐに電話を取ら

わたしたちはどう待つか。

とかく物価高騰が叫ばれる日々、ついに映画館も値上げをするとかしないとかそんなニュースを目にするけれども、障害者割引料金は1,000円のまま継続するらしい。ちなみに、同行者も1,000円。 もうこれは、めちゃくちゃラッキーじゃないですか。特にそれが、ハリーポッターとかタイタニックとかで、一緒に観にいく人がある程度文字の読める大人だったらもうバッチリ。だいたいの洋画は、日本語字幕上映か日本語吹き替え上映かを選べて、前者のほうが上映数が多い。 でも、邦画、特にアニメなんかはお手

それでもわたしたちは #音の世界と音のない世界の狭間で 生きることをやめられないから。

誰かの肩にそっともたれ掛かりたい夜がある。そんな日は、ちょぴっとだけアルコールを。 大学時代に真冬の北海道で出会ったわたしたちは、1994年の2月に音のない世界に生まれ、音の世界で育って、出会ったちょうどその頃に手話を覚え始めて、いま、電車で数分の距離に暮らしている。 補聴器をつけているけれどもよく喋り、音楽も好き。でも一方で、よく喋るし音楽も知っているからこそ、音の世界の人たちにわたしたちの感じる世界を知ってもらうことの難しさも抱えていて。 全く聴き取れないし、発音も

聴覚障害のあるわたしが、藤原さくらちゃんのライブにひとりで参戦した話。

いま、わたしは、とても夢見心地な気分です。 遡ること、6時間半前。とにかく「暑い」以外の台詞が何ひとつ思い浮かばない。そんな、気温30℃越えの東京は、八重洲ミッドタウン。数日前に、TwitterだかInstagramのお知らせで見つけたFUJI ROCK WEEK へ、藤原さくらちゃんのうたを聴きたくて、この地へ。 正直、会場に行くかどうかは昨夜までずっと悩んでいた。というのも、わたしは聴覚障害者で補聴器を付けていて。思いのほかペラペラ喋るので誤解されやすいけれども、機械

線と線が交わる瞬間を、日々紡いでいきたいだけで。

わたしの聴力は、補聴器を外すと右耳が120dB↑で左耳が70dBくらい。0dBが、キコエル人が聴き取れる最小の音量と言われているので、数字が大きければ大きいほどキコエナイということ。 つまり、右耳は耳元で飛行機のエンジンが鳴ってても音が分からないくらいの最重度の難聴で、左耳は救急車のサイレンがキコエル程度。と言っても、わたしは救急車のサイレンもよっぽど周りが静かで目の前を通るタイミングじゃないと聴き取れない。蝉の鳴き声だって、分からないぞ。と、今この表を眺めては首を傾げてい

補聴器ユーザーが観劇をより楽しめる方法、募集中です!

「ねぇねぇ、これ観に行こうよ」 と送られてきたURLをタップすると、それは舞台の案内だった。実はずっとずっと気になっていた舞台だったので、誘ってもらえたことは、とっても嬉しい。 「わーー。わたしも、気になっていたの。行きたい!」 と返事をすると 「情報保障、どうしよっかね」 と返事がきた。一番にここを気にしてくれる人がわたしを誘ってくれているというところが、とてもうれしいポイント。 ちなみに、情報保障というのは、障害のある人が情報を入手するにあたり必要なサポートの

アップルマティーニ

食事を終え、ケーキを食べる。 ふと、隣の席に目をやる。 カップルが、グラスにちょこんと入った、かわいいピンク色のお酒を飲んでいる。 かわいすぎる。めっちゃきになる。 いてもたってもいられなくなったわたしは、笑顔の素敵な店員さんが白湯をサーブしてくれたタイミングで、母から店員さんに隣のカップルのお酒の種類を尋ねてもらった。 母とひとしきり会話を終えた彼女が、わたしの方を振り向いた。 そして、わたしと目があったことを確認してから 「アップルマティーニですよ。」 とはっきりと

UDCastで「マチネの終わりに」を観てきたよ。

「映画館デート」って、なんだか定番で憧れるなぁと思うのです。でもやっぱり、わたしの聴こえでは邦画を満足に楽しむことはできない。必然的に洋画を見に行くか、字幕上映期間を狙って観に行くわけだけど。あの、映画の前の予告とか映画館内のCMとかでバンバンと魅力的な邦画の予告が流れるわけで。特に聴こえる人が相手だと 「これ面白そうだね。次はこれを観に……あっ」 みたいな変な間ができるわけですよ。で、すかさずわたしが 「字幕上映、あるといいねぇ。なければ、金曜ロードショーまで待とうか

聴覚障害者は「お耳の不自由な方」なのか

「聴覚障害があるんです」 と話すと、一定数の方が少し困った顔をして 「お耳が不自由なんですね」 と返してくれる。そして、また別の人にわたしを紹介るすたびに「さんまりさんは、お耳が不自由で……」と添えてくれる。 相手からしたら気を遣って言い換えてくれているんだろうと(勝手に)解釈しているのでその場ではニコっとしておく。 でも、自分で自己紹介するときには必ず「わたしは聴覚障害があります。言葉を聴き取ることが難しいです。」と伝えるようにしている。 なんとなく、「不自由」

身体障害者手帳とセットで持ち歩きたい都営無料乗車券ー発行手続きから利用方法までー

「都営交通無料乗車券」というものをご存知でしょうか。 わたしたち聴覚障害者も「身体障害者」となるため、この乗車券を発行してもらい、都内を移動することができています。 これは、わたしが毎日使っているパスポートのようなそんなものです。せっかくこのところ毎日更新しているので、わたしにとっては日常でも、音の世界の人たちにとっては非日常のことを、音のない世界の人たちにとっては役に立つことを、たまに、ちょっとずつご紹介できたらなと思っています。 ○発行の対象 都内に住民票があり、