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一言一句斜め読みで『ハリーポッターと呪いの子』を。

週末、ずっとずっと楽しみにしていた舞台『ハリーポッターと呪いの子』を鑑賞してきた。鑑賞レポートは作成途中なので、また後日に更新する予定。盛りだくさんすぎて、数日経った今もまだじんわり消化している途中。

聴覚障害者のあるわたしは、舞台を観に行くとなると、事前に貸し台本を自宅に郵送してもらう。そしてそれを自宅で読み込んで、当日客席にも持って行って読みながら舞台を楽しむ。

ところがどっこい。今回の『ハリーポッターと呪いの子』は話題作ということもあるのか、台本の事前貸し出しどころか、客席への持ち込みも禁止。唯一許されたのは、開演2時間前にホールないの小部屋に案内されてその場で台本を読むというもの。

いやいやいや……。確かに、休憩含めて3時間半を超える大舞台。それを台本なしで聴き取れるかというと、多分無理。前半はなんとかなったとしても、後半は本当にキツい。台本を事前に読ませてもらうにしても、そんな大作を短時間で最後までちゃんと読み込めるかというとそれも微妙。いや、多分無理。記憶力には自信があるけど、それでもやっぱりこれは大変。

前述のnoteより。後にバリアフリー字幕上演のテストが始まったことを知ったので、今回はそちらもお願いしました!

と思いつつも、それしかないならしょうがない。一緒に観に行く予定の友人(聴者)と相談した結果、開演1時間半前に会場となる赤坂へ。

少し早めに到着したものの、会場でスタッフさんを見つけたり、早くきた理由を説明して担当の方を呼んでもらったり、同意書にサインしたり……諸々していたらあっという間に10:40。そこからは、補聴器の電源を落として、完全に無音の世界の中で台本を読み進める。

速読には、ちょっと自信があった。

大学院で文系修士まで進学したので、それなりに論文を多読してきたし。M1のときは当時先輩だった好きな人の修士論文(約50,000字)を共に執筆して、M2のときは自分の修士論文(約60,000字)を執筆してきた。彼のものは文献研究でわたしのものはエピソード研究だったので、それぞれの参考文献や元になるエピソードと本文を何度も行ったり来たりする数ヶ月を過ごした。(何度も指導教員からお直しの指導が入るので、どのページのどのあたりにどんな記述があるか覚えていないと成り立たない作業だった)おかげで、一言一句斜め読みする技術は2年間かけて筋トレのように鍛え上げられたというわけ。

どれくらい自信があるかというと、カーネギーの『人を動かす』を半日で読みきって、各章を要約して感想を述べられる程度には。同じ大学院を修了した持ち主から「その速さは、ちょっと引く」とお褒めの言葉をいただいたのです。やったね。

そのうえ、ハリーポッターシリーズは全巻3回以上は読み返しているし、小3〜5年生までの3年間は毎日友達とハリーポッターごっこをしていたし、映画も数回鑑賞しているという、生粋のハリポタ世代。もちろん、今回の舞台の原作だって予習済み。

そして何よりありがたいのは、わたしの頭が日本語で読んだことは日本語で、手話で見たことは手話で理解できるタイプなので、文字を読んだときに言語を横断する必要がないこと。

そんな諸条件が揃ったおかげで、上演時間3時間45分の台本をぴったり1時間で読み終えた。今回の作品は時間軸を何度も移動するので、途中で読み返したいタイミングも幾つかあったけれども、一幕を読み終えた時点で時計を見ると読み始めてから35分が経過していたので、止まったり戻ったりすることはできない。

自転車でブレーキのかからない坂道を走っているときのように、もう読み始めたら後戻りはできない。ただただ、勢いだけで1時間。読み終えたタイミングで開場の放送がなったので、その後は舞台鑑賞中の情報保障についてスタッフの方と打ち合わせをしたり、わたしたち自身もロビーや客席の世界観を楽しんだりしていたら、あっという間に開演してしまった。

多いときはここに4行くらい表示される。
機械なのでフリーズすることも何度かあった。

舞台鑑賞中にも専用スマートフォンに字幕が出てくるサービスを利用させてもらったのだけれども、今回の舞台はとにかくセリフが多くて速い。もちろんスマホに一度に表示できる文字数には制限があるし、舞台だって観たい。そうなると、専用スマホに表示された文字のうち数文字しか読む時間はない。

となると、その数文字から

・台本の記憶
・補聴器で聴き取れる音声

を駆使して、舞台を理解していかないといけない。今回は

・二階席で口の形が読み取れない
・ホールの反響で補聴器に音声として入ってこない
・俳優さんの声を生で聴いたことがない

という条件もあって、補聴器で聴き取れた音声は体感として2.5割くらい。つまり、全然聴き取れなかった

だから、スマホに表示された数文字から記憶の中にある台本の文章をぱっと脳内再生できたことは、とても大きな手掛かりになった。別室とはいえ事前に台本を借りられたことは、とても大きな出来事だった。

そして何より、一言一句斜め読みしてそれを記憶した学生時代の夜が、こんな形でわたしの余暇を楽しませてくれるとは。「生きる」って、そういうわたしたちの歴史が積み重なっていくことなんだろうなぁなんて、あの睡眠不足がちょっとした感動エピソードになってしまうのだから不思議だ。

とにもかくにも、わたしのハリポタ愛と院生時代に鍛えられた一言一句斜め読みする技術事前に台本を読ませてくれた舞台スタッフの方々の柔軟な対応とスマホに字幕が出てくる技術とそれを導入してくれた舞台スタッフの方々のおかげで、 #音の世界と音のない世界の狭間で 生きるわたしも舞台『ハリーポッターと呪いの子』を存分に楽しめました!ということを取り急ぎ書いていたら、これだけでもう2,500字。

情報保障の申請の流れと、舞台の感想はまた後日。 ハリポタ好きのお耳の仲間たちにもぜひ楽しんでもらいたい舞台だったので。ふふふ。

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