Tシャツ物語 -- EIJI / エイジ --

*大阪の大学生がTシャツにまつわる物語を書いています。 〜〜『日常を紡いで、物語を編…

Tシャツ物語 -- EIJI / エイジ --

*大阪の大学生がTシャツにまつわる物語を書いています。 〜〜『日常を紡いで、物語を編む』〜〜 ✳︎大阪 町工場でうまれたTシャツブランド EIJI (三恵メリヤス) をモチーフに制作

最近の記事

そばの湯気に残す

大晦日、完全に二日酔いで夜に起きてしまった アルコールの残り香に少し吐き気が込み上げる もう2時間しかない今年をどう過ごそうか なんとなくこのまま寝て過ごすのはどうかと。 そんな思いでそばのお湯を沸かしながら 頭の中で今年を旅する 振り返りみたいなもん そういえば今年の始まりもなんかヌルッと始まった気がした 今年は、今年こそは、と意気込むが 例に漏れず毎年、正月の空気に一瞬にして飲まれる あーもー働くのかと、1月5日あたりの憂鬱は何年生きても強敵 今年も今年

    • 美しい嘘は墓場まで

      久しぶりに集まった二人の親友との飲み会で 僕は嘘つきをやっている 小学校から一緒の僕らは今では立派に社会人をしている みんなの人気者でムードメーカーだった彼 どちらかというと大人しめで休み時間は読書だった彼 サッカーもするし、気分次第で読書もしてた僕 3人ともタイプはバラバラだったけど 家が近かったから放課後は決まって3人だった お互いのことはなんでも知ってて 隠しごとなんてひとつもない はず。 「これマジでめっちゃ良いから着てみ。あげるわ。」 ムードメーカ

      • 初めてのクリスマスプレゼント

        玄関のすりガラス越しにお向かいさん家の青いイルミネーションが見えた 「あ。」 僕は今日がクリスマスイブだったことに気づく 毎年クリスマスには寂しいような、切ないような、 でも暖かいような気分になる。 小さい頃、裕福な家庭ではなかったため うちにサンタは来なかった 学校で、サンタさんに何を頼むかと みんなが相談しているあの時間が本当に苦痛だった みんなに合わせて 本当はひとつももらえないプレゼントの候補をいくつも出す 小さいながらに見栄を張って 見栄を張ることの辛

        • 12月の朝

          「うぅ。さっむ。」 寒すぎていつもより早く目が覚めた 足の指が自分の体とは思えないほど冷たい 布団を頭まで被り直して体を小さくする。 実は曜日間違えてて、土曜日でした。とか ハッピーミス起こらないかなと、 考えながらiPhoneを見るとしっかり木曜日だった かすってもなかった。 「オッケ。起きる起きる。」 そうひとりでつぶやいてから、 いっきに布団を脱いで起き上がる いきなり立ち上がって伸びをすると頭がクラクラした わかってたのにやってしまう。 たためてな

          就職祝いにTシャツ

          「就職先、決まったらしいな」 と、オトンに渡されたプレゼントはTシャツだった こういう時ってだいたい時計とか、ネクタイとか この辺が相場でしょとか思ったけれど あまり仲がいいと言えるほどの関係でも無いので 「ありがとう」と一言だけで済ました ただまあ、このTシャツがほんとに優れもので。 着心地はいいわ、汗は沁みないわで なんやかんやで使用頻度はすごく高い 仲は良くなかったけど 仕事にシビアなのは 電話を聞いているだけでもすぐに伝わってきていた 大切な商談の日、な

          ヨンカイの世界 (2)

          勝手に親近感をわかし、 次あったら絶対にTシャツのことを言おう と決めていた そしてついに再会した コンビニにいこうと家をでたタイミングで 向かいの部屋にお兄さんが帰ってきた ”こんばんは〜” から入り、 完全にセリフとして決めていた 「この前〜、いいTシャツ着られてました?(笑)」 を練習通りに言う 「あ、やっぱりそうですよね(笑)」 と、お兄さん そこからは思い描いていた通りに 会話が進んでいった ものの5分ほどで ここに越してきてから3ヶ月分の総ラリー

          ヨンカイの世界 (2)

          ヨンカイノ世界 (1)

          ワンフロアー 4室のマンション ここに越してきて3ヶ月たつが 3室の誰ともしゃべったことがない 就職に苦しんだ僕は 地元の田舎を離れ大阪に越して来た 全室同じ間取りで 部屋の広さからするに、 おそらく全員が一人暮らしかと思われる このマンションは小さなコの字型のマンションで 4室の玄関は2室、2室で向かい合っている 向かいのどちらかと 家を出るタイミングが重なると しっかりと顔が向き合うカタチになる 自分は西側の404。 隣の403には女性が住んでいる が、顔し

          ヨンカイノ世界 (1)

          僕だけのヒーロー

          学校には行きたくない 理由は言いたくないけど とにかく行きたくない 楽しくないから 朝の会に思うことは ”はやく帰りの会やりたい” 早く帰りの会がやりたいのは 学校が楽しくないからだけじゃない 帰り道に一つだけ楽しみがある いつも同じ神社に ”社長のじいちゃん” に会いにいく 傘を忘れた日、 入れてもらう友達もいない僕は 神社の屋根の下に座っていた そしたら隣にひとりおじいちゃんがいて 二人でしゃべった 雨は止まなかったけど おれは家が近いから大丈夫と じい

          金曜夜の白Tから

          この日だけは譲れない。 それは朝から一度も着替えない土曜日 土曜日というのは、 休日にもかかわらず前日の最も辛い曜日の影響を受ける。 実際のところ休日が始まるのは土曜の午後からだ。 そんな土曜日をひとまわり快適に過ごす方法をある日思いついた それは一度も服を着替えないというなんともジャンキーな方法 ルールは ”朝起きてから、夜お風呂に入るまで着替えない” 本当にそれだけ つまり金曜の夜に土曜の服選びを済まして、その服で眠りにつく 普段、オフィスカジュアルという

          いい夫婦の日。いい夫婦とは。

          11月22日 もう結婚して30年 両親と過ごしたよりも この人と過ごした時間の方が長くなった このあいだ、24になった結婚前の娘に 「オトンのどこが好きなん?」 と聞かれ 知らんがなって言いかけたけど 面白くないなと思い 「息してるだけでおもろいやん」 と答えた 「はぁ〜なるほどね。」 いやこれで納得できるんかい うちの夫婦は、 とくに仲が良いわけでも とくに悪いわけでもない ケンカすることもないし 手繋いで歩くわけはないし ただ娘が結婚する嬉しさに 最

          いい夫婦の日。いい夫婦とは。

          カプレカ数

          カプレカ数。 彼女に別れを告げられた僕が、 今一番あこがれるもの。 カプレカ数とは 桁を並べ替えて最大にしたものから 最小にしたものの差を取ったとき、 元の値に等しくなる数。 例えば、495。 最大にすると、954 最小にすると、459 954 − 459 = 495。元通り。 アルバイト先で出会った2歳上の彼女 彼女を作ろうと思ったこともあまりないぐらい 女性関係なんてほとんどなかった 人間関係も、仕事も、無難にこなす僕 誰とでも社交的で、 みんなから信

          逃避行

          どこにでもいる普通の大学生 ただいつもよりすこーしだけ気分がいい ここ最近、授業、就活、バイト、課題、 私を追いかけ回してくる奴らのせいで 切羽詰まっていた もうどうしようもなくなって 落ち込んでいたところ、 数少ない友人の一人が声をかけてくれた ノートとっとくし、休んでいいよ。 授業を休んで良いことよりも、 朝いつもより寝れることよりも、 何より変化に気づいて声をかけてくれたことが、 声をかけてくれる人がいると気づいたことが嬉しかった 言葉に甘えて今日は授業を休

          ネガティブの賜物

          今日も一日頑張った いや、頑張りすぎた 1秒でも早く、帰ってご飯食べてお風呂入りたい というか、 帰ってご飯食べてお風呂入った自分にタイムワープしたい 人に比べると、 比べなくてもネガティブな自分。 ちょこっと怒られただけで 自信という自信が体内から消え去る 生まれてこの方、ネガティブなもんで 最近はスルースキルが身に付いてきた (あくまでスルースキルなもんで、 見返してやる!! とか、一切なし。) このカケラほどしかない自信を 削りにくるような、 人の心に雨

          オカンのTシャツ

          可愛く寝るのやめよう。 いつもと違う服で起きた私は決意した。 天満駅から徒歩5分、ワンルームの家賃7万円。 地元も大阪、職場も大阪だけどなぜか一人暮らし。 社会人1年半目にしてこの状況にもったいないと感じてきた なぜ親戚一同が会したあの正月の席で「私は出る」ってゆったのか自分でもわからない そんな心境もあって普段から節約はしてるほう。 節約術なんて知らないけど自炊もしてるし、 日用品もコンビニよりちょっと遠い薬局で買うし。 疲れ切った仕事の帰りにコンビニでご飯を買っ

          22

          22歳、大学卒業。 それと同時に、実家を離れる。 必要な荷物はもう送ってある 最後の荷物は、 ”なんでか捨てられないもの” たちが入った 思い出ボックス的な。 ばあちゃんに買ってもらった野球漫画の1巻目だけ、 命をかけたモンスターカード、 激闘のすえに塗装が剥がれてしまっているベイブレード、 フルスモークの黒のクラウンのラジコン、 (小学生がなぜそれを選んだんだと聞きたくなる) など。 いま、それらを手にとっても 別にワクワクすることはないけれど、 少年の自分が大切

          成長か変化か、

          まだまだ若いと思っていたけど。 無地のTシャツを試着しながら、 服屋さんのセリフにハッとする。 来月で41歳なんですよ、と言うと、お若いですねと言われた 嬉しくなってありがとうございますと返す この瞬間にハッとする 自分は自分で若くないことを認めていた 「大人っぽいですね」と言われて嬉しい20歳 「お若いですね」と言われて嬉しい40歳 ”できるようになる”ことが喜びで、 ”買えるようになる”ことが喜びで、 たくさんの権利を手に入れることが喜びだったはずなのに