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ヨンカイの世界 (2)



勝手に親近感をわかし、
次あったら絶対にTシャツのことを言おう

と決めていた


そしてついに再会した

コンビニにいこうと家をでたタイミングで
向かいの部屋にお兄さんが帰ってきた


”こんばんは〜” から入り、
完全にセリフとして決めていた

「この前〜、いいTシャツ着られてました?(笑)」

を練習通りに言う

「あ、やっぱりそうですよね(笑)」
と、お兄さん

そこからは思い描いていた通りに
会話が進んでいった



ものの5分ほどで
ここに越してきてから3ヶ月分の総ラリー数を越したと思う


それだけでも嬉しかったが
この日はそんな簡単に終わらなかった


話しているうちに同じエレベーターから
お姉さんとガテン系が降りてきたのだ


人間には無視をする限界の距離があって、
今の4人は明らかに
無視できないサークル内にいる


全員が「やってしまった」という顔をする


このハンパない沈黙を
あのキレイなお姉さんが壊す


「みなさん明日早いんですか?」


こんな時、単純な男たちは

全員が口を揃えて、「いいえ」を出した

「よかったらご飯でも」

と、お姉さんに誘われ
テキトーに買い物だけ済まして
とりあえず全員でお兄さんの家に上がる


もう時間が遅かったので
何か作ろうとなっていた


お姉さんの手料理を美味しく食べれるんだろうなと
安心しきっていると

まさかの全く料理ができないという告白を受ける


また気まずい雰囲気が流れ始めたところ


「ジブンやります」とガテン系

ツッコめる人間もおらず
ガテン系がキッチンに立つ


なにを見せられてるんだと思いながら
キッチンに立つガテン系の背中を見ていた


そんな自分が情けなくなるほどに

手際よく剥かれていく玉ねぎ、
測ることなく投下される調味料、
出来上がった実家ばりの料理たち。


「嘘でしょ…」と
お兄さんの漏れた一言に合わせて
3人とも大爆笑した


一人暮らしあるあるだが
全員サイズの違うお皿を並べて
テーブルを囲んだ

ガテン系の意外性に助けられ
そこからは今までの気まずさを
清算するかのように
4人で話し込んだ

お酒も入り
これまで聞けなかったことも
しゃべったところ、

じぶんが駅やエントランスで避けていくところを見られており
ガテン系よりも話しかけづらかったらしい

申し訳なさと
これまで捨ててきた時間を
もったいなかったと反省した

越してきてから一番のこの夜のおかげで


401:こじらせ独身貴族、
402:小説作家(趣味料理)、
403:ズボラ酒豪OL、
404:人見知り田舎者、


が住んでいるこの4階だとわかった


壁一枚、Tシャツ一枚でこんなに変わるものなんだと
人見知り田舎者は学ぶ


これまでよりも大変で

最高に楽しいご近所付き合いができそうだ


-EIJI-

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