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オカンのTシャツ

可愛く寝るのやめよう。

いつもと違う服で起きた私は決意した。


天満駅から徒歩5分、ワンルームの家賃7万円。
地元も大阪、職場も大阪だけどなぜか一人暮らし。
社会人1年半目にしてこの状況にもったいないと感じてきた

なぜ親戚一同が会したあの正月の席で「私は出る」ってゆったのか自分でもわからない

そんな心境もあって普段から節約はしてるほう。
節約術なんて知らないけど自炊もしてるし、
日用品もコンビニよりちょっと遠い薬局で買うし。

疲れ切った仕事の帰りにコンビニでご飯を買ってしまった時の罪悪感がなによりつらい。

そして今日は仕事のカバン、コンビニの袋、罪悪感を持って家路についている。

ただ、コンビニのご飯は美味しい。

それは多分、

キッチンに立っていない
且つ
このあと食器を片付ける必要がない

というコンビニ最大の付加価値を感じることに成功しているからだ

コンビニの袋に食べ終わったゴミをつめたところで思い出した。
最悪だ。
洗濯物を干し忘れている。

なんのために早起きしたのか。

謎に優雅な朝だったのはそのせいだ。

Tシャツ3枚、ズボン2本、あと肌着に下着にピンクのパジャマ。
中身はしっかり覚えてる。

なぜなら、節約を心がけている私が珍しくお金をかけているパジャマが入っているからだ。

サテン生地のシャラシャラとしたパジャマ、
意識高い系になりたくて
お高めのパジャマを買った。

意識高い系になりたいのに
バリバリの睡眠用品を買っているところが
もう意識高くない

まあ、ようするに、
お気になのだ。

昨夜パジャマの首元に盛大に歯磨き粉をつけてしまった。
汚くはないだろうが、寝るには匂いが爽快すぎたので
今朝の早起きが確定した

洗濯機を回すまでは覚えていたのにな。
イレギュラーなことはしないほうがいい。

生乾き臭がすごい洗濯機に今日きた服を足して回し直した。

服を脱いだついでにお風呂に入ってしまおうと、
今日着るパジャマをあさる。
見事にちょうどいいTシャツが見つからない。

実家から持ってきたものの機会に恵まれず
キャリーにつめられたままのTシャツたちの中から選出してやろう。

「持ってたわあ〜」と言いたくなるような子たちがたくさん出てきた

結局、お風呂を上がって着た一枚は母親が部屋着で着ていた無地のグレーのTシャツ。

完全に紛れ込んでしまった一枚だ。
(また返しに行ってあげよう。)
キャリーに直すとまた返すのを忘れてしまうので外の世界に出しといてあげようという世界中が幸せになる一石二鳥の考えである。

背中に線が一本あるだけのこのTシャツ。

そういえば実家を出る何日か前
「どこいったんやろな〜」と言い、
観たことのない綺麗な赤のTシャツに変わっていた気がしないこともない。

ちなみにその赤Tも背中に線が一本。
(どこで買ってきてんねや。)

今日は絶対に洗濯物を干さないといけない。
いや干すんだ。
という強い使命感を持ち、
他のことには全く注意を向けず洗濯機が終わるのを食い気味に迎えに行き最後の1分間は洗濯機の前に立っていた。

やけに長かった。
あの洗濯機の前で待つ1分は絶対に嘘だ。
みんな騙されている。

無事、洗濯物を干し、眠りにつくことに成功した

翌朝目が覚めた私は、
快眠による、強烈な爽快感と共に目覚めた

実家の母親が働きながら家事をこなし
さらに、どでかい声で怒鳴りつけてくる元気があったのは
このTシャツによる快眠のおかげだったなと確信した

そんな母親の元気の源をつきとめたと同時に


”可愛く寝るのやめよう”と決意した。

誘拐したTシャツだが、
もう少しこの家にいてもらうことになりそうだ

-EIJI-



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