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22

22歳、大学卒業。
それと同時に、実家を離れる。

必要な荷物はもう送ってある



最後の荷物は、
”なんでか捨てられないもの” たちが入った
思い出ボックス的な。



ばあちゃんに買ってもらった野球漫画の1巻目だけ、
命をかけたモンスターカード、
激闘のすえに塗装が剥がれてしまっているベイブレード、
フルスモークの黒のクラウンのラジコン、
(小学生がなぜそれを選んだんだと聞きたくなる)

など。


いま、それらを手にとっても
別にワクワクすることはないけれど、
少年の自分が大切にしてきたから
そんな自分を大切にしてあげたくて
今でも捨てずに置いている

この機会に今の自分の大切なものを入れたくなった
なにを入れようかと探してみる
そう考えると全く見当たらない。

そもそも今の自分が大切なものは
新しい家に送ってしまっている。

そんなに時間もないというのに
しばらく考えてとっておきを見つけてきた

母親にギフトでもらったTシャツ。

この4年間ほんとにいろんな場面で着ていた

ギフトになるぐらいだから
キレイな色で
キレイなカタチのTシャツ
多分 ”ええTシャツ” なんだろう

ただ着心地が良すぎるせいで
このTシャツがおしゃれ着に収まることはなかった



このTシャツでバイトもいったし、
このTシャツで朝まで飲んだし、
このTシャツで単位落としたし、
このTシャツで好きな子と一緒に寝たし、(フラれたし、)
このTシャツで面接うけたし、


ほんとにいろんな場面で着すぎて
思い出が詰まるというよりも、
吐きそうな日常もぜんぶ詰まったこのTシャツ。



想像していたよりも
4年間はすごく短かったし
内容ももっと濃くなるはずだったのに
友達もしっかり数えられるほど。
バッチリのキャリアを歩めそうな
就職先でもない。

18歳で思い描いた大学生活ではなかったし
いつからか母親とも折り合いが悪くなって
会話もほとんど無くなった

思い出ボックスの他の子達ほど
キラキラの思い出は思い出せないかもしれない

それでも多分このTシャツは捨てない自信があるから
これを選ぶ


好きなバンドの、
”心配するな。大人は楽しい。”
の歌詞を信じてTシャツを箱に入れた


ほとんど会話もなかった母親にも
頭を下げて、「いってきます」と言った


いつかこのTシャツを見て、

人生で最高の一枚だった

と、言えるようになれたらいいな。と。


-EIJI-

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