小売業界の課題とは何か。現状と解決策を紹介します
コロナ禍やECサイトの台頭に伴い、小売業界は今様々な課題に直面しています。
その課題の業種ごとの現状と課題解決の展望について、この記事で丁寧に解説します。
小売業界の課題
新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、リモートワークなど人々の行動様式も変化していき、コロナ禍が落ち着いた後もその行動様式はある程度引き継がれています。
そうした新しい社会の中において消費者の購買動向も変わっていき、それに伴い小売業界の経営課題も浮き彫りになっていきました。ここでは、小売業界の課題について具体的に解説します。
商品が売れにくくなっている
小売業界が今抱えている最も大きな課題は「商品が売れない」ことです。これには様々な要因が考えられるのですが、主な要因は3つあります。
1点目は良質な商品が増えたことです。商品は日々改良を重ねられていきますので、より高品質かつ便利な商品が開発されていきます。そして高品質だからこそ、頻繁に物を買い換える必要性が無くなり、ひとつの物を長く使い続ける傾向になりつつあるのです。
2点目は、流行のサイクルが短期化していることです。SNSが普及している現在、消費者もトレンドに益々敏感になり、トレンドやニーズの移り変わりも早くなりました。この状況によって、1つの物がずっと売れ続けるのが難しくなってしまっているのです。
3つ目はデフレーションです。物価が下落すると企業の収益が減少し、国民の可処分所得もそれに伴い減ります。人々の消費行動も控えめになるため、商品が購入されにくい状況になります。2022年には、ロシアのウクライナ進行の影響で、燃料や原材料が高騰したことによる物価も高騰しました。経済状況は人の消費行動にも直結しますので、逐一確認しておくことが大事です。
人手不足
総務省統計局が公表している人口推計によると、日本の人口は2008年から年々減少の一途を辿っています。
特に小売業界は人手不足が著しい業界です。農林水産省による「卸売業・小売業における働き方の現状と課題について」の調査では、小売業の労働力不足や長時間労働が問題視されています。
小売業は長時間勤務の上に休みも取りづらく低賃金でもあるなど厳しい労働環境に置かれています。加えて社会地位も低いため、求人を出しても人が集まりにくいのです。
参考:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/kikaku/hatarakikata_shokusan/attach/pdf/03_haifu-4.pdf
店舗のショールーム化
コロナ禍により外出自粛が求められた結果、ECサイトで物を購入する消費者が増加しています。さらにインターネットが現在普及しているために商品に関する情報がすぐに手に入るようになりました。その結果、実店舗は商品を見つける場所と化しています。
これまでは実店舗に顧客が来店して、そのまま商品を購入するのが普通の流れでした。しかし、現代では顧客は店舗で商品を確認した上でネットにアクセスし、より安く販売しているサイトを探すようになっています。そのため、店舗まで顧客を誘導することは可能でも、次の段階で競合他社に顧客を奪われてしまう可能性が高くなってしまっているのです。
イベントなどを利用して店舗に集客を成功したにも関わらず、売り上げに影響がないまま宣伝イベントが終わってしまうことも珍しくありません。オフラインの発想だけでなくオフラインの発想も持ちながら最終的には収益に導くような構造を確立することが必須です。
【業種別】小売業界の現状
経済産業省が毎年小売業の動向に関する統計データを発表しています。ここでは2023年上期のデータをもとに、業種ごとに小売業の現状について紹介します。
参考:https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini164j.pdf
百貨店
2023年の百貨店販売額は2兆7,925億円で、前年同期比9.7%増加しています。店舗数は前年に引き続き減少しているものの、1店舗当たりの販売額は増加傾向にあります。
特に売り上げに寄与している商品は飲料食品です。例年飲料食品は売上の多くを占めており、今後も主軸となっていくことが予想されます。
スーパー
2023年のスーパー販売額は7兆5,240億円で、前年同期比2.8%増加しています。
1店舗当たり販売額と店舗数が共に増加しています。元々の主軸商品である「飲料食品」、「その他の商品」等が増加しています。
コンビニエンスストア
2023年上期コンビニエンスストア販売額は6兆1,286円で、前年同期比5.1%増加しています。店舗数は僅かに下がっていますが1店舗当たりの販売額は増加しています。
「ファーストフード及び日配食品」「非食品」などの商品全ての項目が増加しています。
家電大型専門店
2023年上期の家電大型専門店販売額は2兆2,514円です。家電大型専門店の販売額は「カメラ類」「情報家電」等が増加したものの、「生活家電」「AV家電」等が減少していて販売額全体としては前年同期比3.2%の減少となっています。
ドラッグストア
2023年上期のドラッグストア販売額は3兆9,886円です。「トイレタリー」等の販売額が減少したものの、「食品」「OTC医薬品」等の項目が増加しており、販売額全体としては前年同期比7.7%の増加となっています。
ホームセンター
2023年上期のホームセンター販売額は1兆6,194億円です。「ペット・ペット⽤品」、「オフィス・カルチャー」等が増加したものの、「インテリア」、「DIY⽤具・素材」、「家庭⽤品・⽇⽤品」等が減少しており、販売額全体としては前年同期⽐0.8%の減少となっています。
小売業界の課題解決策とは
上記で見たように、小売業界は今様々な課題に直面しています。
これらの課題に対してどのように取り組めばいいのでしょうか。
下記にて具体的な課題解決策について解説します。
DX化推進
DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」のことを指します。経済産業省の定める「DX促進ガイドライン」によると「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
DX化を推進することで、IT・デジタルを活用して業務・サービスの品質向上や業務効率化を図ることができます。その他にも、従業員にかかる負担が少なくなるので人材不足や人件費の高騰、職場環境の悪化といった問題の解決にもつながります。
例えば、レジにおいてPOSデータを活用することによって消費者一人一人の購入履歴や属性などのデータを累積して、データ活用につなげることができます。
ECサイトの導入
今やほとんどの消費者がECサイトを利用しています。そのため、小売業もECサイトの導入及び強化をしていくことが重要です。
今はShopfiyなどを使って手軽にオンライン上でショップを開けるようになっていることも、ECサイトが広まっている理由の一つです。ECサイトと実店舗を両立できれば、より多くの顧客の目に留まり、多くのニーズに応えることができます。
CX(顧客体験)の向上
「CX(顧客体験)」とは、ある商品を認知してから購買行動における様々な接点やコミュニケーションに対して顧客が感じる価値のことです。
店舗に来た顧客に対して商品の魅力をわかりやすく伝え、顧客が価値を感じた上で購入してもらえるように工夫することが大事です。
具体的には、POPを作成したり販促品を配布したり、イベントを企画すること等が挙げられます。
【維商社のECサイト】サンホープの取組み
さて、弊社は繊維商社の卸売店として、主に栃木県を中心に長らくビジネス展開をしてまいりました。
しかし、地域の小売店の減少に伴い、自社でも楽天への出店や自社ECサイト「サンホープ」の開設などを行い、時代の流れに合わせて行う業務の幅を変えています。
今現在は若者を中心に人気を博しているTikTokやInstagramなどのSNSを活用した集客にも取り組んでおり、今後も時流のニーズに合わせてサービス展開をしていく予定です。
ECサイト運営やSNSを使った集客は、小売店でも効果的な方法だと思いますので、小売店を経営している方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
【まとめ】小売業界の課題に対して的確に取り組むことが重要
現在、小売業界は時代の岐路に立たされています。
課題も多いですが、DX化や顧客体験の追求はこの課題解決の糸口となるでしょう。
実店舗だからこその強みを活かしたマーケティングを行うことで、売上向上につなげているケースも多々あります。
自社にしかできない付加価値を生み出し、顧客一人一人に対して提供していきましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?