『逆コーラップス パン屋作戦』は、SRPG史上に燦然と輝く傑作だ。
2024年3月に発売された、Shanghai Sunborn Network Technologyの『逆コーラップス パン屋作戦』。オーソドックスなステージクリア型のミリタリーSRPGです。
ゲームは完全日本語化。さらに日本語フルボイズ。
現在はPCのみですが、switchとスマホ版も開発中です。
アホ毛の美少女をメインとしたビジュアルと、「パン屋作戦」という副題から、ほとんどの人は、
「ははーん、これはキャラクターを愛でる、難易度ユルめのSRPGだな」
という第一印象を抱くことでしょう。
しかし見た目に騙されてはいけません。
『逆コーラップス パン屋作戦』、それは歴代でも屈指の難易度を誇るSRPG。フンフンと鼻歌でも歌いながらこのゲームを始めたプレイヤーには、思わぬ絶望が待ち受けています。
楽しい日曜のサバゲーだと思って、お弁当持参で参加してみたら、実は自衛隊第一空挺師団の実戦訓練だった。
そんな感じです。
しかしその高難易度は、調整不足や理不尽さから生じているものではなく、緻密に計算されたゲームデザインが導く結果であり、他のSRPGが失っている、一瞬の判断ミスが失敗につながる戦場の厳しさと、それを打開していく達成感がゲーム中で表現されています。
私はSRPGをそれなりに遊んできましたが、『ファイアーエムブレム』、『タクティクスオウガ』、『戦場のヴァルキュリア』、『X-COM』などといった名作たちと並び称されるに値する作品であると、このパン屋を評価したい。
さすがに大袈裟だろ、と思っているあなた。
あなたは未だに、アホ毛ビジュアルのイメージに騙されています。
そのような先入観で生き残れるほど、戦場は甘くありません。
これから、100時間かけて難易度ノーマルをオールSでクリアしたこの私が、『逆コーラップス パン屋作戦』の偉大さを、頼まれもしないのに紹介していきます。
右手に抱えたそのお弁当はさっさと捨てて、この地獄のような戦場に共に立ち向かいましょう。
とうとう出たね、「戦術型SRPG」の新星。
まずは『逆コーラップス パン屋作戦』の立ち位置から確認しましょう。個人的にSRPGは、大まかに3つのタイプに分類できると考えています。
もちろん皆同じSRPGですから、特徴は共有していますが、その作品において最も強く認知される特徴をもとに分類してあります。
①物語型
いわゆる松野泰己トリロジー、『タクティクスオウガ』、『ファイナルファンタジータクティクス』といった、重厚な作品内歴史を背景とした俯瞰的なストーリーを特徴とするのがこのタイプです。
SRPGは、戦場において主人公がただの一ユニット、つまり「One of Them」のように描かれるので、歴史絵巻や群像劇のような俯瞰的なストーリーを描くのに最適。それを最大限に活用しています。
可能な限り、紙芝居ではなく戦場マップ上でストーリーを描く、
フレーバーテキストを豊富に用意して、世界の奥行きを感じさせる、
などを美徳とします。
②編成型
部隊の編成画面(インターミッション)で、お気に入りのキャラクターをカスタマイズして愛でるタイプです。
ステータスを伸ばす、装備を与える、スキルを獲得する、結婚する、背後霊を付けて「エンゲェジビィィィィム」を発射できるようにする、
といった楽しさを提供します。
『ファイアーエムブレム』や『X-COM』をはじめとした、ほとんどのSRPGがこのタイプだと言っていいでしょう。
SRPGというジャンル内での差別化というと、もっぱらこの「編成」に個性を持たせることであり、近年では『othercide』や『Symphony of War』などが趣向を凝らした編成システムを提示しています。
編成に自由度を与えるため、それを受け止める形で展開する戦闘フェイズは難易度が低いことが多く、編成の成果を確かめるだけの場と化してしまうこともしばしば。
その性質上、多数のキャラクターが登場し、かつ全員に活躍の場を与えようとすることが、難易度低下にさらに拍車をかけます。
個人的には、SRPGは「編成」に意味と選択肢を持たせ過ぎていると思います。
③戦術型
戦場での立ち回りを突き詰めるタイプです。位置取り、移動ルート、射線など、行動のディテールの精度をプレイヤーに求めます。
編成型とは違って、ステータスでのゴリ押しはあまり許容しません。
『戦場のヴァルキュリア』がこのタイプの代表だと思いますが、当てはまる作品が少なく、もっとも陣容が手薄。
『Company of Heroes』のようなタクティカルウォーゲームと構成要素が被るため、あえてSRPGというフォーマットで描く意味が薄いのが理由かもしれません。
この『逆コーラップス パン屋作戦』は、③戦術型に属する作品です。
1マス進むか、それとも留まるか。
弱い敵を倒して数を減らすか、強い敵のヒットポイントを削るのか。
そして、どのアイテムを使うか、どこに罠やタレットを配置するのか。
一つ一つは通常のSRPGのプレイで下す判断と変わりませんが、求められる精度が格段に高く、一つの判断ミスがゲームオーバーにつながります。
難易度ノーマルでプレイした場合、2章に差し掛かるころには、1ターン進めるのにも、あれこれと試行錯誤し始める。
最終盤ともなれば、あまりの過酷さに泣きながら1日2~3ターン進めるのがやっと、という悲惨な状況となることでしょう。
②編成型SRPGに慣れ親しんだプレイヤーの中には、
「わたしがやりたいSRPGはこんなのじゃない。せっかくのお弁当食べさせてよ!」
と、怒りだす方もいらっしゃるかもしれません。
分かります。私も何度も挫折しそうになり、その度に日の出桟橋まで行って東京湾を眺めていました。
それでも投げ出さなかったのは、ゲームオーバーにあまり理不尽さは感じなかったからであり、その点は『ダークソウル』や『ゴーストランナー』などの高難易度アクションゲームに通じるものがあります。
そして③戦術型SRPGとして極めて先鋭化されたそのスタイルは、停滞感のあるSRPGというジャンルの新たな可能性へと続く道を照らします。全国1000万人のSRPG愛好家の皆さんには、ぜひ一度は体験してみてほしいのです。
意外とハードで、SFで、ミリタリーなストーリー。
ゲームの具体的な内容の前にストーリーを軽く、ご紹介します。
このゲームの舞台は、人気スマホゲームの『ドールズフロントライン』の30年後の世界。
世界は「コーラップス放射線」というなんか凄いらしい汚染が広がり、なんやかんやあった挙句、「ロクサット主義合衆国連盟」=「ロ軍」と、「南極連邦」=「南連」に別れて抗争を繰り広げています。
プレイヤーは「南連」の諜報員であるモンドとなり、コードネーム「パン屋」と呼ばれるアホ毛の少女ジェフティを「ロ軍」の追撃から救うべく、特殊部隊の一員として敵地に潜入します。
『ドールズフロントライン』が何なのか分からない、という方もいらっしゃるでしょう。大丈夫です。私も『ドールズフロントライン』のことは全く知らなかったですし、なんなら今でも分かってません。
世界観を共有する、別のお話と割り切って問題ないかと思いますが、劇中の専門用語など、『ドルフロ』を知っていればニヤリとできる場面も多い、らしいので、『ドルフロ』を予習することで、よりストーリーを楽しめるかと思います。
そして架空ミリタリーSFとして、ストーリーは想像以上にハード。敵軍であっても戦士としての矜持を示す場面などもあり、いい意味で第一印象を裏切る本格的なミリタリーものです。
さらに最終盤においては、物語を根底から覆す大ネタが仕込まれており、難易度の高いステージをプレイしなければならないプレイヤーを引っ張っていくだけのクオリティは、十分に備えているかと思います。
また、要所で差し込まれるアニメーションもよくできており、プレイヤーを飽きさせません。
仲間は少数、しかし確固とした役割を担うプロフェッショナルたち。
『逆コーラップス パン屋作戦』の際立った特徴としてまず挙げられるのが、仲間キャラクターの少なさです。
メインとなるのは5人だけ。ステージによって、そのうち2人しかいなかったり、全員揃っていたりします。
彼らにはそれぞれ固定のスキルと武器が設定されており、それによって戦場での役割が決まっています。
主人公、モンド
本作の主人公であるモンド君は、今回の潜入任務「パン屋作戦」を請け負う特殊部隊所属の新兵という立ち位置。
ユニット性能は万能型ですが、最大の強みは、このゲームの最重要アイテムであるタレットを強化できること。中盤以降は、彼の周りにタレットを敷き詰めて集中砲火するのが定番の攻撃手段となります。
謎のアホ毛ヒロイン、ジェフティ
懐かしのクール系ツンデレ(死語)ヒロインを地で行くジェフティさん。スナイパーライフルで遠距離から高火力を叩きこむのがお仕事。
救出対象であるはずの彼女が何故そんなに強いのか。それはストーリーで明かされます。苦手なものはオバケ。
文武両道、デキる女、アテナ
部隊の常識人ポジション、長女役のアテナ姉さん。機械に強い系女子という設定で、物語中では毎回のように敵軍のシステムをハックしています。
ユニットとしては、アイテムを強化・効率的に使用できるだけでなく、盾を押し出してタンク役までこなします。
頼れる兄貴、ジェヴァン
モンド君の兄貴役、部隊のムードメーカーであるジェヴァン。ピンチの時に援軍を連れてカッコよく駆け付けるオイシイ役割が多かったです。
ユニットとしては、火力をジャスティスとし、アイテム以外で範囲攻撃ができる唯一の戦力。バスターガンダムみたいな感じです。
それにつけても理想の上司、カール
部隊の隊長はこの人、カールおじさん。年配ですが、柔軟な発想ができるナイスミドルです。
実はユニットとしては最弱。もう年だかんね。しかし強力なバフ&デバフスキルを習得しており、おじさんのスキルをどう使うかが戦局を左右します。
ゲームは基本、この5人で進行していきます。編成型SRPGが大量のキャラクターを用意しているのとは対照的です。
SRPGはキャラゲーとしての側面が非常に強いジャンル。だから、たくさんのキャラクターでプレイヤーのニーズを汲み取ろうとするのは分かります。しかしアリバイのように数を増やすぐらいなら、作り手が自信を持って描く、厳選されたキャラクターを、私は見たい。
『逆コーラップス パン屋作戦』のキャラクターたちには、作り手の並々ならぬ思い入れが込められているのが、プレイヤーにも伝わります。単なる数合わせではない。
そして異様に高いゲームの難易度が、キャラクターの魅力をより引き立てます。
「あいつの粘りのお陰で、あの難局を乗り切ることができた」
「彼女のクリティカルヒットで、ぎりぎりボスを倒せた」
そういったキャラクターへの思い入れがより強まる瞬間が、毎ステージのように訪れるのです。
というか、そうじゃないとホントにクリアできないですから。
難易度が低いSRPGだと、そもそも、そういったシチュエーションが生まれません。そのため、インターミッションの会話やイベント、そして戦闘会話だけで、キャラクターを表現しようとします。
それもひとつの手段でしょう。
しかし私は思うのです。
戦士は、戦場でこそ光り輝くのだと。
決着は戦場でつける。
意図的に限定された編成の自由度。
そして、ステージ毎に設けられている編成フェイズで、この5人を強化していくことになりますが、編成型SRPGに比べると、編成におけるキャラクターカスタマイズの選択肢は非常に少なくなっています。
ステータスはレベルで固定。装備している武器は、アタッチメントを変更できますが、どれも純粋なアップグレード。射程を犠牲にして威力を上げるとか、威力を落として命中率を上げるといったカスタマイズはできません。
各キャラクターごとのスキルの習得も、レベルで固定されています。スキルポイントを消費して、パワーアップするスキルを選択することはできますが、基本的にはバージョンアップであり、劇的に状況を変えるような変化は起こらないと考えていいでしょう。
ただし、スキルはすべて装備できるのではなく、4つまでしか選べないので、出撃時にどのスキルを装備するかという判断は重要です。
この編成フェイズでもっとも重要なのは、アイテムの強化と生産です。
戦闘で得られる「パーツ」というポイントを使ってアイテムを生産するのですが、戦闘ではアイテムをこれでもかと大量に消費するので、どのアイテムを、どのくらい生産するのか、非常に頭を悩ませます。
とくに終盤には、アイテムとパーツは常に不足気味となり、
「やばい、詰みかねん」
と、さらに苦悩することになるでしょう。
この、あえて自由度が制限されている『逆コーラップス パン屋作戦』のキャラクターカスタマイズは、間違いなく戦闘フェイズでの戦術性を担保するためのものです。
カスタマイズの選択肢が限られているゲーム序盤では、絶妙なゲームバランスが実現されているのに、選択肢が広がる後半になるとバランスが崩壊気味になる。SRPGでよく見られる光景です。
選択肢が広がることで、プレイヤーがどのような編成をしているか予測しにくくなるため、どうしても最大公約数的なバランスとレベルデザインになってしまうからです。
このSRPGにありがちな展開を避け、終盤までヒリヒリとした緊張感を維持するために、このパン屋ではあえて編成の自由度を制限しているのでしょう。
だからこそ『逆コーラップス パン屋作戦』は、SRPGというジャンルの中でも類を見ない、全力死力を尽くす血みどろの戦いを実現することができています。
自分たちが提供したいゲーム体験を表現するために、あえてジャンルの定石に背を向けたその姿勢は、大いに評価できるものです。
敵はあなたを本気で殺しにくる。容赦はない。
編成によるパワーアップが制限されている一方で、敵は本気でプレイヤーを殺しにきます。
まず、数が多い。
敵地に潜入しているわけですから、当然と言えば当然なのですが、それにしても多い。
味方2、3体に対して、敵が100体くらい押し寄せてくることもあります。
大人げない。ロクサット主義合衆国連盟、本当に大人げない。
そして味方は柔らかい。相手がザコ敵でも、2、3発もらったら死にます。強い奴だと一撃死です。
防御系スキルを使って耐えることはできますが、スキルには数ターンのクールタイムが設定されているので、それだけに頼ることはできません。
戦場での広い選択肢が、さらにプレイヤーを悩ませる。
そのためプレイヤーは敵の攻撃範囲に注意して、試行錯誤しながらユニットを動かすのですが、この『逆コーラップス パン屋作戦』が採用している「アクションポイント制」が、さらにプレイヤーを悩ませることになります。
各ユニットには10〜16の「アクションポイント」が付与されており、そのポイント内で移動、攻撃、アイテムなどの行動を行います。
全て移動や攻撃に費やしてもいいし、バランスよく行動しても構いません。
ほとんどのSRPGが採用しているのは、移動と攻撃を完全に分けているスタイルです。
このスタイルでは、各局面でプレイヤーが一度に判断することが限定されるので、決断が容易になります。移動時には移動のことだけ、攻撃時は攻撃のことだけ判断すればよいからです。
一度に10個決断させるよりも、2択を5回重ねる方が簡単、ということですね。
しかし、この『逆コーラップス パン屋作戦』のようなアクションポイント制では、全てのキャラクターの、全ての行動を、一度に判断しなければならない。そのため難易度がはね上がります。
さらに『逆コーラップス パン屋作戦』はアイテムの種類が多く、最大24種類の中から、状況に適したアイテムを選択して使用する必要があり、これがさらに判断を複雑にします。
範囲攻撃を仕掛けるグレネード系や、ユニットと独立して攻撃してくれるタレット、戦線を限定するために相手の移動力を奪うホログラムなど、多様な目的を持ったアイテムが多数用意されており、使い所がないアイテムが一つとして存在しません。
このアイテム設計は本当に見事という他ないのですが、プレイヤーにとっては頭が痛い。
戦いに勝利するためには、戦況をよく見て、的確なアイテムを、的確なタイミングで使用することが求められます。
素晴らしいアイデアが溢れる戦闘ステージ、そしてボス戦。
SRPGかくあるべし。
そんなこんなで厳しい戦いが続く『逆コーラップス パン屋作戦』ですが、用意されているステージは、バラエティに富み、どれも趣向を凝らされた素晴らしいデザインばかりです。
編成型SRPGがどうしても、ステータスでぶん殴ることによって打開していくステージになりがちなのに対し、徹頭徹尾、戦場での立ち回りが求められるステージを貫き通しています。
例えば第3章3幕の「九死に一生を得る」。
この世界には、「生骸(いきむくろ)」と呼ばれる、見るからにヤバそうなクリーチャーがいます。この生骸数十体をギミックを使って誘導し、やはり数十体で押し寄せる敵軍と同士討ちさせることで、漁夫の利を得るというステージです。
正面から戦うだけでない、立ち回りや戦術性が求められるステージを作っていこうという作り手の熱い想いが伝わってきます。
他にも、撤退戦や防衛戦、戦車を使って戦ったり、トロッコに乗ってエリアを行き来しながら敵を捌くなど、本当によく考えられたステージが続きます。
そして、この戦術性を追求した戦闘スタイルが、さらに際立つのがボス戦です。
上記の画像は、第2章7幕の「地獄の花畑」のボス戦。
右にいるツインテールの女の子がボスなのですが、通常の攻撃ではダメージが入りません。
女の子を白い花のマスに誘い込んで、かつ焼夷弾を投げて花を燃やして有毒成分を浴びせることで、はじめてダメージが通るようになります。
ボス子は、左にいるジェフティを狙ってくるので、うまく花のマスに誘導する必要があります。
つまり単純に攻撃を叩きこむのではなく、敵の動きを予測してうまく位置取りをする戦術性が重要なわけです。
これは本当に素晴らしいSRPGのボスデザインです。
攻撃力と防御力とヒットポイントをモリモリに盛った「強いボス」を、味方みんなでぶん殴る。
SRPGでよく見る心暖まる光景ですが、これではコマンドバトルRPGと何ら変わらなくなってしまいます。
SRPGのレゾンデートルのひとつは、ユニットを移動させて戦うこと。つまり位置取りと立ち回りです。
私が『逆コーラップス パン屋作戦』のボスデザインを素晴らしいと思うのは、「スペックの数値」ではなく、「立ち回りの難しさ」で強さを表現している点です。
これは、多くのSRPGで損なわれている美徳。しかし、ここのパン屋では、それがまだ生きている。
全国4000万人のSRPGファンの皆さんはその喜びを胸に、作中最強ボスのシュガーちゃんにボコボコにされてください。
窮屈さが際立つステルスステージ。
そして、やや説明が足りない場面も。
ここまで拍手喝采、賞賛の声いまだ鳴り止まずという感じですが、もちろん欠点も存在します。
まずは衆目の一致するところで言えば、ステルスステージの窮屈さでしょう。
敵地潜入という背景もあり、作中にいくつかステルスステージがあります。
戦闘で敵に勝つのではなく、敵の視界を避け、見つからないように目的を達成するミッションです。
しかし戦闘がプレイヤーの創意工夫で難局を打開していくのに対し、ステルスステージでは作り手が設定した正解を探っていく傾向が強くなります。
つまりプレイヤーが主体的に状況を動かしている実感が薄い。
しかもこのステルスステージは、結構な頻度でプレイすることになるため、どうしてもゲームプレイのテンションを途切れがちにしてしまいます。
厳しい戦闘の幕間のように機能すれば良かったのですが、残念ながらそのようには機能していません。
潜伏から戦闘へと移行するステージなど、SRPGのフォーマットでステルスを表現したい、という狙いは感じ取れるので、次回作ではより洗練させたステルスステージをプレイしたいところです。
またゲーム中、やや説明不足な箇所も散見されます。
機械ユニット特有のステータスである「装甲」、「エネルギー」、「力場」。それらがどのように機能しているのか、最初はいまひとつ掴みきれません。
またステージ中に設けられたギミックに関しても、その意図が理解できない場面もあり、どのように立ち回ればいいのか、少し頭を悩ませることもありました。
いずれも実際にプレイをしてみれば、問題なく理解できますが、シビアな難易度のゲームだけに、このあたりはもう少し丁寧な情報設計があれば良かったかと思います。
無数の「やり直し」の果てにあるもの。
『逆コーラップス パン屋作戦』をプレイするあなたはおそらく、何度も何度も失敗します。そして何度も何度も同じターンをやり直すことになるはずです。
何度も何度も、です。
射程が1マス届かない、敵の狙撃手を見落とした、グレネードではなくホログラムを使うべきだった、中型タレット壊されちゃったら生きていけないよ・・・。
その度にあなたはオートセーブをロードして、どうすればよかったのか、何が正解なのかと頭を悩ませるでしょう。
その試行錯誤を踏みしめながら一歩ずつ、1ターンずつ、勝利へと近づいていきます。それはまさに、『逆コーラップス パン屋作戦』で描かれる物語そのものです。
そう、ゲームは何度もやり直すことができます。成功するまで何度でも。
しかし実際に、現実に何度もやり直しができたとしたら、
それはきっと地獄に他なりません。
アホ毛のジェフティは、ひとりトボトボとその地獄を歩いています。
もしあなたが、彼女と共に地獄を歩めるならば、
そしてこの厳しい戦いに身を投じる覚悟があるのなら、
「パン屋作戦」に参加されたし。
久しく続くジャンルの停滞を打ち破るべく、雪原に降り立つSRPGの新星。
地獄へようこそ。
逆コーラップス、パン屋作戦。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?