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青森・田村ファミリーのすごすぎる手作り生活 PART1「20万円で家をつくってみた」編

青森県にすごい家族がいる。
過去に何度もテレビで取材され、「超節約家族」「究極の0円家族」「自給自足家族」などのキャッチフレーズで紹介された。
わかるとおり、田舎で自給自足生活を送る家族だ。

野菜やお米を自給自足する人は他にもたくさんいる。
この家族のすごいところは、家やトイレ、電気ガス水道まですべて自分たちで賄っているという点である。
月に使うお金はわずか4万円程度。肉や魚、豆腐など加工品をスーパーで買うのに使っている。それ以外はほとんど自給自足で賄う。まさに「究極の節約生活」だ。それでいて、スマホやパソコンなど現代機器もしっかり活用し、ハイブリッドな生活を送っているのも特徴である。

どうしたら未来の子どもたちのために、なるべく地球を汚さない生き方ができるのか?を突き詰めていったら、この暮らしにたどり着いたのだという。ひょうひょうとなんでも器用にこなす夫の田村余一さんと、畑仕事の傍らニコニコと穏やかに子どもを見守る妻のゆにさん、やんちゃざかりでなんにでも興味を持つ長男のタイチ君、一見どこにでもいる普通の3人家族。

でもその暮らしぶりはすごかった!
野菜はもちろん、家、トイレ、調味料、煮炊き用のコンロ、水道など、「そんなものまで手作りするの?!」という驚きの連続だ。
サンクチュアリ出版より2022年8月に出版した書籍『都会を出て田舎で0円生活はじめました』より、田村ファミリーの「すごすぎる手作り生活」の様子を全5回のシリーズ記事にしてご紹介する。

書籍『都会を出て田舎で0円生活はじめました』(サンクチュアリ出版)

みなさん、はじめまして。僕の名前は田村余一といいます。
我が家は、青森県にあるとある平屋。家主である僕と、妻である嫁さん、そして息子の3人暮らしをしています。 よその家とちょっと違うのは、その家がぜんぶタダでもらった廃材でできていて、 建てたのは大工さんではなく、家主自身が1から建てた手造りの家だということ。 そしてもう一つ違うことといえば、我が家では電気・ガス・水道を契約していない。スーパーでの買い物もあんまりしない。ほとんどお金を使わない生活だということだ。
えっ、それで生活できるの? と思うかもしれない。 できる!家族3人、充分に生活できている。そんな僕たちの「手作り生活」の様子を、書籍から抜粋してご紹介させていただきます。

かかった費用は20万円!廃材でおうちを建てる 

僕ら3人家族が住んでいるおよそ15坪ほどの木造平家は、僕が独学で建築した初めての建物だ。屋根材と役物(補強金属類)だけ購入し、残りはすべてどこかの建物解体で出てきた廃材でできている。
建築基準法も遵守した一応マトモな建物だ。断熱性能はさほど高くはなく、スキマ風も多少あるが、これまでの地震でも倒壊することはなかった。かかった費用は10〜20万円程度だろう。

まだ独身だった2010年から着手しはじめて、人が住めるようになる2016年
まで実に7年ほどの歳月をかけた人生初のセルフビルド。棟上げ作業だけは仲間に声をかけて一気に組み立てたが、そこに至るまでの設計や廃材調達、刻み作業(仕口や継手の加工)、その後の屋根葺き、外装から内装までをほぼ独りでおこなった。

当初からオフグリッド(※)思考があったから、電気配線もガス設備も上下水道の工事もしなかった。基礎部分もコンクリートを流し込むようなベタ基礎ではなく、土台真下のところどころに土を掘って埋め込む沓石の基礎。それすらも大小様々な廃材を使用している。住宅というよりは「山小屋」に近い建物だ。

イラスト 田村余一

ひと言解説※  『オフグリッド』・・・電気、ガス、水道などを公共の仕組みに頼らない生活スタイルのこと

年に1〜2件ほど建築シゴトの依頼を受ける今となっては、なんてことない簡易建築物である。だけど独り頭を悩ませながら、ときには挫折し、ときには廃材の入荷を待ちわびながら、ノコギリやノミ、電動工具を見様見真似で使ってセコセコと鈍行工事したセルフビルディング。それはナニモノにも変え難い、汗と涙が随所に染み付いた、唯一無二の建物だ。とにかく愛着がハンパない。いまだに頬をスリスリしたくなる柱や梁がある。廃材ではあるけど快適な住まいだ。

木材は一本、一枚たりとも購入しない、そう決めて挑んだ廃材フル活用の木造建築。廃材建築において、自分で材料を選ぶ権利なんてものはない。たとえば、 12センチ角で長さ4メートルの角材を使いたいとしても、入荷廃材の角材が9センチ角で2 メートルしかなければ、それをなんとか工夫して使うしかない。まっさらな木材はほとんどなく、どれも過去に一度加工された穴や釘の跡があるから、どの面を表側に使うかでも悩まされる。

つまり、自分ではなく、廃材サマの都合で建築されていく。廃材サマは経年による 変形も進んでいたりして、反っているものもあるし、ねじれているものもある。そういう木材には差金をただ当てただけでは正確な直角が出せない。これってなかなかに難易度が高い大工作業で、本職さんだって面倒くさがるシゴトだ。どうやって木材の変形を見極め、その個性に応じた墨付けと加工、木組みをするか?

もちろん日本古来の伝統工法にそのやり方は存在するんだけど、それはまたの機会にお話ししよう。とにかく廃材サマはカミサマなんだ。ただし、それにビビることはまったくない。どうせタダで手に入った木材なんだから思い切って挑戦できる。己の心が向くまま、切って切って切り刻むべし。失敗したくら薪ストーブにエーイと焚べればいい。炎のゆらめきを見ていれば新たなアイデアも浮かんでくるだろう。

構造体としての廃材利用も大事だけど、機能性としての断熱材も住まいでは重要だ。リサイクルしたグラスウールも使ったけど、それだけでは全然足りなかった。なにかそれに変わるものは無いかなぁと思っていたところ、タイミングよく大量のぬいぐるみをいただいた。 断熱材といえども、要は空気の層を作ってあげること。それならばこのぬいぐるみでいいんじゃないか?ということで、外壁と内壁の間にどんどんぬいぐるみを詰め込んでいった。

独り黙々と施工していると、たまに木板からはみ出たぬいぐるみと目が合う。......もはやちょっとしたホラーだ。なんかスミマセンと目を逸らし、その上から板を張っていく。そんなわけで我が家、壁面積にして8畳分くらいはこのぬいぐるみ断熱である。
今でも壁から視線を感じる......っていうのは冗談だけど、廃材セルフビルドの可能性は無限大で、これまたお財布にも環境にも優しい。

イラスト 田村余一

たまにホームセンターでキレイな木材を見かけるとちょっとうらやましい反面、それはそれでちょっとつまらない建築になっちゃうよなぁって思ってしまう。手間にこそ面白さが詰まっていることを知ってしまった僕です。
磨けば光る廃材。薄汚れた廃材の釘を抜き、電動カンナで一気に削ったときに姿をあらわす美しい木目と樹種特有の香り。その瞬間がなんとも好きで、いまだに僕は廃材に心と手が向いてしまうのでした。

書籍『都会を出て田舎で0円生活はじめました

青森の田村ファミリー初の著書 『都会を出て田舎で0円生活はじめました』 https://amzn.to/3T4MHhH 地球のことを考えて辿り着いた暮らしは、 歯磨き粉やシャンプーなどの日用品、野菜、調味料類、着るものまで自分たちが使うものはなんでも手作り。 地球にも、お財布にもやさしい暮らしの知恵満載!

本を読まない人のための出版社 サンクチュアリ出版
https://www.sanctuarybooks.jp/

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