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最近自殺のことばかり考えている件

とあるカードのポイントは「永久不滅」らしいが、僕らが日頃お世話になっている「科学」という学問によると、人は死んだらそれまでで、おそらく人類は遅かれ早かれ滅び、地球や宇宙すらもなくなるようだ。
科学じゃなくとも、平家物語には「諸行無常」と書いてあるし、この世が永久不滅でないという見解は昔からある。そして、誤解をしている人も多いけど、お釈迦様はあの世があるとは言ってない。

マールキヤプッタとお釈迦様のやり取りで「毒矢のたとえ」というのがある。毒矢が身体にささったときには毒矢を抜くことが最優先であるのに、それをせずに「誰が射たのか」「どんな弓か」などと、余計なことにこだわっていると毒がまわって死んでしまう。というお話だ。

仏教はリアリストの考え方で、死後の世界とか永久不滅の存在とか、そんなの考えるより、生病老死という現実と向き合って、それを受け入れることで悩みを軽くしましょう。という処世術でもある。

そして、お釈迦様によると、死は悪ではない。苦しみもがいて死のうが、家族に看取られて穏やかに死のうが「死は死」に過ぎず、そこに善悪はない。
だから自殺も悪ではない。

一応お釈迦様の言葉が処世哲学から宗教に変遷していく中で、五戒というものが生れ、その中で不殺生戒というのが出来て、生き物を殺すことがNGとなってしまってはいる。だだ明確に自殺がダメとは言っていない。このため仏教徒の自殺率は高いとされている。

キリスト教では、生命は神から与えられたもので、人間が勝手に生死を選択するのは神への冒涜だ。十戒には「汝殺すなかれ」とあるわけで、文字通り自殺は「自らを殺す」わけだから戒律違反に当たる。また、使徒行伝でパウロが自殺を図った獄卒を制止して改宗させた記述もあり、聖書には自殺は悪とはっきりと書いてないものの、教理的には悪であり地獄行きだ。

イスラム教はコーランで自殺NGと明言されているから、イスラム教徒の自殺率はキリスト教よりも低い。ジハードテロリストのイメージがあるけど、あれは例外で超少数派。

基本的に「道徳」を包容した「宗教」では、自殺は礼賛されない。しかし、一方で仏教では即身成仏あるし、キリスト教やイスラム教では殉教があるわけで、大義や美意識のための自殺というのは、認められる傾向がある。
それは宗教のみならず文学の世界でも見出すことは簡単で、漱石の「こころ」を読んで「先生自殺してバカじゃない?」と読書感想文を書けば、赤点になるだろね。

さて、デュルケームは「自殺論」で自殺を四つに分類したけれども、大雑把にいえば、世間的に悪とされる自殺が「自己本位的自殺」その逆の善とされる自殺が「集団本位的自殺」の二つとなる。
デュルケームは、この本でどっちの自殺が善か悪かということを論じたのではなく、自殺という極めて個人的な行為が、社会的要因によって生じるということを統計学的手法で説明している。

デュルケームの「社会実在論」は社会が実体をもち個人の行為を規定するという考え方で、これに反してウェーバーは、社会は個人の思惑や行動が集合したものにすぎないと「社会唯名論」を唱えた。
そしてジンメルは、社会を個人から離れて実体的に存在するのではなく、個々の相互行為やコミュニケーションが積み重なったものと捉えた。

ここでお釈迦様の話に戻ると、仏教には「縁」という考え方もあって、人間は社会的な生き物なので、個人の精神は独立しているようでも、実は他者との関係性があってはじめて精神が存在し得る。
人がずっと一人であれば、一人ということも分からないし、自分を別の何かと区別することもできないし、そんな環境で精神が成立するのは難しい。

だから、自分は自らの意識においての自分と、他人の意識の中の自分と二重に存在し、これが統合されて自己となる。ということは自殺は、自分の意識を破壊して、自己を滅する行為になるが、他人の中にある自分は、その他人が忘却するか死ぬまで破壊できない。
もちろんその他人というのは、直接知り合った人物とは限らず、今風にいえばツイート読んで自分を認識してくれた知らない人にも「縁」が生じて、そこに自己の一部が形成されることになる。

ここらへんがジンメルの「生の哲学」と仏教哲学が似ているところで、先駆者ともいえるショーペンハウエルが仏教に影響受けているから、当然といえば当然だ。

と、ここまで書いて、何が言いたいのかさっぱり分からなくなってしまった。
僕は当面、自殺の予定はないが「死」についてしょっちゅう考えてしまう性分で、こうも雨も続きだと暇で、こんな感じで思考の迷路にハマってしまう。人間はほっといてもいづれ死ぬだけのことだから、考えても仕方がない事なんだけど。
たまには険しい山でも行って「死」を感じてバランス取りたいなぁ。明日の天気はどうかしら?

久しぶりに奥多摩でも。鳩ノ巣から海沢大滝くらいどうだろか。

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