愛がつたう線 / 展示「岩田壮平展○」
※この展示は2023年12月に開催されていたものです。現在は終了しています。
私は一応芸大の芸術学部で学士をとった。でもその割に日本画には疎く、特に現代のものについては作家名をほとんど知らない。
精力的に作家活動をしている大学の後輩が日本画をやっていてその投稿にリアクションをしていたからか、たまたまでてきた広告で岩田宗平さんの展示を知った。
どういった作品を描かれている方なのか全く知らなかったけど、広告に出ていた作品が既知の日本画のイメージとはあまり一致しなかったこと、また単純にその絵がとても綺麗で気になったことから、展示に足を運んでみた。
私にとって一番付き合いが長い文化的活動といえば絵を描くことであり、そういう意味では人生の中のカルチャー面において一番長く時間を割いているのは絵に触れる時間といえる。
ただその付き合いの長さでも、美術作品、中でも特に平面作品というのはなかなか、一見で人の感動を揺さぶるというのは他のメディアに比べて難しいのではないかと体感している。
文章や音楽や映画など言葉を介して体験を共有できるメディアに比べると、連続していない1枚絵のビジュアルのみで人に共感を呼び起こさせるというのが、まずなかなか難しい面がある。
私自身、絵を一目見て、その作品のバックグラウンド情報を何も知らずに泣いた、というのはこれまでの人生で一度きりだった。
そして人生で2度目のその体験を、この展示で、岩田壮平さんの作品で経験した。
展示概要
展示内容
最近の展示会はほとんど撮影・SNS掲載がOKなので記録に残しやすくて嬉しい。
主に上記のような華やかな色彩の絵が、大型作品があることもありメインで展示されていた。
写真に撮ったものの他には錦鯉をモチーフにした青い画面のものも綺麗だった。岩田さんの絵の特徴として見られる、日本画の技法「垂らし込み」を最大限に活用した故の表面のふっくらした凹凸が魚の鱗感によくマッチしていて面白かった。
観に行った日がたまたまギャラリートークの日だったのもあって、技法について直接質問させていただく機会が得られた。垂らし込みを表面張力ギリギリで絵の具の滴が張りつめるところまで流し込んでいるのと、膠と顔料のバランスによってそういう凹凸が出来るらしい。
ただ今回私が持って行かれたのは墨画のほうだった。
草本花卉墨画
これも大型作品なので全貌は写せない。というか全貌というよりは、この線を記録として残したかった。
怒濤の線線線…それも有機的な、間違いなく手描きの線である。
樹の年輪みたいにも見えるなと思った。たまに少しゆらいだり、上部では全体でうねっている。
大体同じくらいのリズムで引かれた線幅のようでたまに隣とくっついたり、数本またいだり、など完全に規則に従っているわけでもない。
生命の細胞とか、それこそ年輪とか、そういったものに自然と思いを馳せる。
そういった線をぼんやりずっと眺めていると、なぜか強烈に描き手の愛情のようなものを感じた。執念が煮詰まると愛になるんだなぁと言葉が自然と頭の中に湧いてくるくらいの説得力があった。
画集に記載されているコメントや、その後のギャラリートークで聞いたこれまでの経緯の話から受ける印象ともなんとなく合致する。
でもそれが当然言葉として前面に語られているわけではなくて、あくまで絵から受け取ったというのが、あぁこういう瞬間の為に芸術を好きでいるのかもしれないと思った。
絵か舞台どちらかひとつでも、こんなに雄弁になりたいものだと憧れを覚えた。
たまにこうやって先導者に感動しないとなにが面白くてやってるのか解らなくなるのでちょうど救いになった。
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