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(中) バックパッカー料理人 第9便

レストランを支えるは、チーム力...

地元のスーパーを見て回れば、その土地の特産物や住民の食生活もわかる。スロヴェニアはチーズやワインが有名だけれど、ここコバリッドはハチミツも有名らしい。地元の子供が描いたであろう可愛いエチケットの瓶がならぶ。



街からレストランまでは、調べると一本道でそこそこ距離がある。持ち歩いている新しい料理が思いついたらすぐ書くようの大学ノートの一番最後に"Hiša Franko”と大きく書いて、ヒッチハイクを試みた。


10分、20分と待てど通るは数台のタクシーのみ...
諦め歩いていくことにした。
気が生茂る道中、道が開けると牛や羊が自由に行き来し、ハイジの世界のように草原が広がる。


陽気な天気の下、30分ほど歩くと自然と身体もテンション上がって、お腹もほどよくすいてきた。すると、右端の方に薄ピンクの可愛らしい戸建ての建物が見えてくる。丸い看板には大きくHIŠA FRANKO CASAの文字が。



ディナーの時間よりちょっと早く着いたので、店の周りを探検して、それからお店の人に日本からのお土産と持参したおぼろ昆布を渡し、席へと案内していただいた。

木彫で温かみのある店内は、明るく。テーブルにはそれぞれ一輪の花が飾られてある。

待ちに待ったディナーがはじまる。
スロヴェニアのスパークリングワインとともに、最初の一皿。
温かい茶碗蒸しが運ばれた。


周りで飼っている鶏の卵と畑や山でとれたハーブのオイル。そして、ほんのり温めたホエーがかかっている。
葉っぱが敷かれたようなお皿からも温かみが感じられ、美しい。
スナックが3つ4つ、5つと続き。
揚げパンのような一品が出され、熱いから気をつけてと、一言。


中には羊の脳味噌と近くで取れる何かのベリー類のソースが入っている。しっかりと肉の出汁とワインで味を含まされたトロトロの脳味噌に、キレのある酸味がうまい。
ここまでは、最初のスパークリングを合わせていただく。飲むペースの早い僕は、この時点ですでに3杯目(笑
続いて、ハチミツを練り込んだ自家製のサワードゥと出来立ての手作りバターが一緒に運ばれる。
美味しすぎる。強めに香ばしく焼かれたサワードゥとまろやかなバター。永遠に食べれてしまう。危ない危ない。まだコースは始まったばかりだというのに...


スペシャリテのひとつ、ミニトマトとブドウが可愛らしく中央に盛られた料理。


トマトとぶどうの下にはヨーグルトなどで和えられたレーズンが忍ばせられている。レーズンの深い甘みとコクが全体をまとめ上げられ、なんてバランス感覚のいい料理なんだ。非凡なセンスが絶えず見え隠れし、一品ごとにどんどんテンションが上がっていく。
その後、3品ほど続いた後、メニューには記されてない一品が。


シェフからと...
おいしいキノコがとれたと、ブラックトランペットと、来る途中に挨拶した羊さんを、なんと蟹と合わせたラビオリだった。これもまたうまい。
メインへと向け、料理はさらにギアを上げ、加速していく。
メインはRoebuckという初めてみるお肉。調べてみるとノロジカという中東やヨーロッパにしか生息していない小型の鹿の仲間らしい。ホースラディッシュとチーズのソースに松ぼっくりを合わせている。


料理はまだまだ続き、スペシャリテのリンゴのクロワッサン、そしてデザートと続く


同じ時間帯に居合わせた、他のフーディーなお客さん方とレストランツアーが始まった。
チーズの保存庫では、好きなだけチーズとワインと一緒に味わえ、その後僕は研修をさせてくれとお願いするためキッチンへと1人向かい、料理長へと挨拶を交わした。

驚いたのは、これだけのクオリティの料理を完璧なタイミングで出されていた中、シェフが不在だったことだ。シェフが不在な中、店を完璧に守りきる料理長の存在。そして、その料理長の統率力の高さ。感無量だった。
シェフから翌年の研修への許可をいただき、タクシーが来るまでウェイティングルームで他のお客さんと待つことに。
ルイと名乗る30代半ばのご夫婦は弁護士をしており、世界中を食べあるくフーディーだという。紺色のジャケットを軽やかに着こなしたルイと、ベージュのストールを肩からたらす奥様たちの姿は気品に溢れていた。
便利な世の中になったものだ。僕は、2、3年以内に日本でレストランを独立すると話すと、話は盛り上がりインスタで連絡先を交換し合った。

その後、レストランHiša Frankoは2020年にミシュランのスロヴェニア初上陸でいきなり2星を獲得した。


To be continued...

料理人である自分は料理でしかお返しできません。 最高のお店 空間 料理のために宜しくお願い致します!