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(中)バックパッカー料理人 第11便

②Fäviken
追い回しは任せろ...


ファヴィケンの朝は...
遅い。

僕ら研修生をここではレストランと同じようにスタジエと呼ぶことにしよう。
寮からレストランまでは車で約20分。毎朝、スーシェフや部門シェフたち3人が車でピックアップしてくれる。
毎朝と言いつつ、ピックアップの時間は12:15。
寮から木の中を走り抜け大通りの脇がポイント。爆音の音楽ともにやってくるシェフたちに拾ってもらい和気あいあいとレストランへ向かう。
これから毎朝、毎晩見続ける車中からの景色に上がりまくるテンション。10月の今はまだ雪もそれほど積もってなく、色が映える森林に囲まれた道を走る。
程なくして、見えてくる広大な敷地とでかい一軒家。
ファヴィケンだ

お客さんが通ってくる道とは反対側の坂の下の駐車場に車を止めて、歩いて店へと向かう。1人はセラーへ、1人はベーカリーに、森の中へごっついハサミを持っていく者も。僕以外はそれぞれバラバラに各方面に向かう。
どうやら、出勤時に確認するものがあるらしい。

キッチンへ入るとまずロッカーへ向かい、極寒の地なのに半袖のコックコートと肩掛けのエプロン、そしてシェフとスーシェフ以外強制着用の帽子をもらい、ファヴィケン指定のこれまたごっついシューズに履き替えキッチンへと向かう。
Netflixのシェフズテーブルで見たまんまのキッチンが目の前に。
湧き上がる高揚感

キッチンの中心にそびえるは巨大な特注の炭台

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スタジエの1人、マーサが洗い場の後ろでそそくさとコーヒを淹れ始めた。毎週担当のスタジエが毎朝(昼)まず最初にコーヒーを淹れなければいけないという。

13:00
デシャップを囲み、マーサの淹れたコーヒーを飲みながら、その日最初のブリーフィングが始まった。
急にスタッフたちがピリッとし出した。
まるでバイキングのような出で立ちに金髪ロン毛のシェフのマグナス・ニルソンが現れた。

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さすが北欧人。流暢な英語だ。
恒例の力強い握手とともにスタッフ全員と自己紹介をし、僕はスーシェフの1人であるマティアに店を案内してもらう。マティアはマルーン5のMemoriesのMVのボーカルのアダムに似ている(笑

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広大な敷地内を案内してもらってる間、色々と話していると面白いことにマティアと僕は、時期は違えど同じシェフのもとで働いたことがあり、共通の友人がかなり多かった。そのシェフとは、2017年にWorld's best50 Restaurant で世界1位をとったニューヨークのレストランEleven Madison Parkで現在エグゼクティブ スーシェフをしているジョシュだった。僕はオープンした年のThe NoMadで当時スーシェフだっったジョシュと働き、朽ち果てるほど飲んで騒いで、いろいろとN.Y流の悪い遊びも教えてもらった料理と遊びの師匠の1人で、今現在も仲がいい。世界は狭いなっと、スウェーデンの僻地で僕らは感じ、笑い、マティアと僕はすぐに仲良くなっていった。

ファヴィケンはとても広く、大きく7つの建物に分かれている。
・まず1階にメインとなるキッチンがある屋敷の2階と3階にはお客さんのダイニングとまかないと事務用のスペース、そしてちょっとした倉庫がある。
・その隣の建物にはお客さんの宿泊スペースがある。
・そして、少し離れたところにセラーと呼ばれる貯蔵庫がある。冬の間、ここは雪に埋もれ、一年中エアコンなしで温度と湿度が一定に保たれているという。スウェーデンならではの貯蔵庫で、ここには冬の間食材が無い地域の知恵と工夫が集結している。様々なピクルス、発酵、リキュール、そして野菜たちが眠っている。
・セラーの向かい側には、もうひとつのキッチンと熟成用の巨大な冷蔵庫、そしてウォークインフリーザーがある。早朝、ここのキッチンはベーカリーのシェフが毎日のパン作りに使われていて、午後からは肉や魚の仕込みに使われる。熟成用の冷蔵庫では様々な獣肉が食べ頃まで眠っている。狩猟の時期に入ると、近くでハントされるムース(ヘラジカ)がここで解体もされる。

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・2つのキッチンの間にはガレージと呼ばれる倉庫があり、ここで納品作業を行う。
・さらに歩き、坂を下り駐車場の方に向かうと、そこにはゴミ置き場がある。ここで、分別を完璧にし、ゴミは整理されたのを業者さんが週に1回回収に来る。
・さらにさらに、ここは従業員もほとんど知らない屋敷がまだある。
ここは、後々僕が特別にファヴィケンの最後の本の撮影の手伝いに入った際、夜中まで仕事が続き泊まった、ファヴィケンのオーナーの屋敷だ。この部屋の話はまたおいおい書くとしよう。

7つの建物の集合という巨大なレストラン。世界中からいらっしゃるお客さんにも毎回するツアーでも、案内するのは最後の屋敷とゴミ置き場を除いての4つ。
実は、敷地内ではないのだが、車で40分ほど走った場所にシャルキュトリーのお店もある。ファヴィケンのコースには最初2品ほどシャルキュトリーが出されるのだが、それらはここでつくっている。僕は、研修最後の2週間をここでも学ぶことも許された。

ファヴィケンはルールが多い。っというかルールが全てだ。
キッチンシューズもメモ帳も全てが統一されている。
メモ帳はレストランから支給される。

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そして、スタジエは6つのセクションに分けられ、セクションごとの担当の部門シェフのもとで仕事につく。
僕は、みんなが1番やりたくないというCHINA(チャイナ)という持ち場から始まった。チャイナと言ってもアジア人で中国という意味ではない。陶器や磁器のことを英語圏では大まかにチャイナと総称するのだ。
ここはいわゆる追い回しの持ち場。洗い場と、洗い場の片付け、まかないの支度(テーブルセッティングなど)、もちろんブリーフィング前のコーヒーの準備も。そして、営業中に使う銅製品と器の研磨だ。
ファヴィケンでは毎日、銅製品とガラスの器を磨く。朝のブリーフィングでその日の予約状況とメニューを聞き、当日使う銅鍋類とガラスの器の種類を把握し、確認し、まかないまでに全部磨き終え、チェックをもらう。
ここから仕事の出来具合、取り組み方などで、どのくらいどこのセクションをやっていくのかが決まっていく。
スタジエは全員ここから始まり、ずっと鍋磨きで終わるものもいるらしい。
そう、チャイナはこの広大な敷地も兼ね合って肉体的にもきつい持ち場だった。
考えてみたら、旅をする前僕は人生最大級にデブっていた。ダイエットのいいチャンスでもある。久々にアリネア式ダイエットのようになるんじゃないかと気合が入る。


To be continued...

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