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明治時代から、西陣織の伝統を今も紡ぐフクオカ機業

西陣織を知っていますか?西陣織は京都府の西陣という地域で作られている絹織物です。西陣は京都の伝統産業が集まる地域です。その中に、明治時代から西陣織を作り続ける有限会社フクオカ機業があります。織物を織るだけでなく、デザインから絹糸の染色まで一貫して行う工房です。フクオカ機業を語る上で欠かせない存在は、若手からベテランまで揃う職人さんたちです。西陣織の文化を継承しながら、時代に合わせた発展をしていく職人たち。この記事を通じて、歴史ある西陣織、フクオカ機業で熟練された匠の技を持つ職人たちの想いを感じてみてください。

日々の関わりで紡ぐフクオカ機業とsampaiの関係

sampai を立ち上げる以前、京都・西陣の未来を考える、西陣事業者の集まり「 西陣サロン 」に sampai 代表宮武が参加したことが 有限会社フクオカ機業との出会いのきっかけ。sampai がスタートする前に、西陣サロンにて「 産廃を活用したアクセサリーブランドをやります 」と伝え、一緒にできたらいいのにという話をしていました。ですが、「 帯は決まったサイズで納品するから廃棄になる部分は無い 」と話され、実際に製造工程を見ても産廃になるものは無いなと感じつつ「どこかにあるかもしれない」という想いがありました。

sampai 以外の活動でフクオカ機業と関わる機会が多くあり、何度も工房に伺い、製造工程を見学していた頃、織り機の横で解いて使えなくなっている絹糸を見つけました。女将の福岡 斗紀子さんに、この絹糸はもう使わないのかと聞いたところ、機織りの段階で、汚れが見つかると解いたり、切れたりする絹糸があって実際に捨てていた部分があるとのことでした。そこで、以前からフクオカ機業と一緒に活動したいと待ち望んでいたこともあり、2021年10月からフクオカ機業の産廃素材を利用したアクセサリーの製作に取り掛かりました。

フクオカ機業ってどんな会社?  

明治三十五年、京都・西陣にて創業したフクオカ機業。織物を織るだけでなく、デザイン制作から糸染めまで自社で一貫して制作することで、唯一無二で完全オーダーメイドの織物制作ができる工房として知られています。現在工房内で動いている織機は12機。

紋紙という明治初期に導入されたジャカード織機で図柄を織るために用いられる型紙を使用し、織物を製作する。

フクオカ機業は西陣織を広めるために工房見学を受け付けています。もちろん織物の制作過程を見学することも貴重な経験となりますが、そこで働く職人との出会いがなんといっても魅力の一つです。西陣織の発展と認知向上に向けて挑戦を続けるフクオカ機業代表取締役 四代目 伝統工芸士 福岡 裕典さん。西陣織をこよなく愛する着物姿が素敵な四代目 女将 福岡 斗紀子さん。お二人はとても気さくで、いつもsampaiの活動を優しい眼差しで見守ってくれています。

他にも、フクオカ機業を語る上で欠かせない存在である職人が多くいます。フクオカ機業では、伝統を後世まで紡ぐため、若手職人の育成も行い、工房内ではベテランと若手の両方が活躍しています。フクオカ機業のHPに、職人の紹介が記載されているので、ぜひチェックしてみてください。

創業以来培ってきた技術を駆使して、若手からベテランの職人一人ひとりが紡ぐ織物を制作するフクオカ機業からsampai は産廃素材を貰います。京都が誇る西陣織を私たちに伝えてくれるフクオカ機業とsampai がコラボすることで、伝統産業・地域企業に関心を抱く人が一人でも増えることを目標に、ハンドメイドアクセサリーを届けています。

西陣織ってどんなもの?

西陣織(にしじんおり)は京都府の西陣という地域で作られている絹織物です。西陣とは京都市街の北西部(上京区、北区)にあたる地域の名称で、西陣の織物業者が製造する織物を西陣織といいます。西陣織の始まりは古墳時代と古く、室町時代に京都で起こった「 応仁の乱 」をきっかけに「 西陣織 」の名称がつけられました。12種類の品種(織る技術)がある西陣織は、国の伝統的工芸品に指定されています。

実際に織をされている様子

日本が誇るべき技術と歴史が詰まっている西陣織ですが、ライフスタイルの変化とともに、西陣織の生産販売数が減少しています。実際に、西陣地域で機織りを動かし、職人が工房で西陣織を製作しているのはフクオカ機業を含め数社ほど。この現状に対して、日本の素晴らしい伝統である西陣織を後世に残すためにフクオカ機業は様々な取り組みをしています。

フクオカ機業の強み「Nishijin Carbon」

炭素繊維を糸として紡ぎ、西陣織の強みを活かした「Nishijin Carbon」がフクオカ機業を代表する取り組みの一つです。カーボンファイバーは「引っ張り」に強い反面、「折れ」に弱く、加工が難しいです。フクオカ機業は、織る際の糸の張り具合の調整など研究を重ね「Nishijin Carbon」を生み出しました。フクオカ機業のカーボンファイバー製品は、複雑な文様が特徴的で、西陣織で培った技術が反映されている心惹かれる製品です。

若手に紡ぐ、西陣の伝統技術

時代に先駆けた取り組みを行うフクオカ機業は、人材育成にも力を入れています。現在織物業界が抱える課題はいかに事業を存続させるかというものです。職人の高齢化が進み、分業している相手企業が廃業、織物に必要な部品をつくる職人がいなくなる、事業を引き継ぐ後継者がいないといった問題を抱えています。この現状の中で、フクオカ機業は若手の育成に取り組んでいます。福岡さんのテーマの一つは人材育成であり、若い人を育て、その時代に合ったモノづくりをその職人たちが進めていくことを目標にしています。そのため、フクオカ機業では若手の職人を育成し、ベテラン職人と共に活躍しているのです。

西陣織に欠かせない、経糸と緯糸を交差させる「杼」という道具、西陣の長谷川杼製作所は昨年、暖簾を下ろしてしまった。

色番号にはない、フクオカ機業だけのこだわりの絹糸

フクオカ機業が織物では「 絹糸 」が使用されています。絹糸とは、蚕( かいこ )の繭( まゆ )から作られる天然繊維です。皮膚への刺激がとても少ない事が特徴的な繊維です。軽くて柔らかく、しなやかさがある、静電気が起きにくいなどの魅力がある糸です。

フクオカ機業では織物に使う絹糸を自社で染色しています。黄色・赤・黒をベースに染色し、多様な色を表現しています。染色は手作業で行い、約100度にもなる鍋で染色していきます。絹糸を染色する技術はとても繊細なものです。色が濃いほど染色する回数は多く、薄いほど一度でムラなく染める必要があります。繊細な淡い色を染色することは難しく、染めすぎて色が濃くならないように薄い色を何度も重ねるため手間と時間が掛かります。

色を見極めながら、絹糸を染色する福岡 裕典さん

sampai は職人の技によって丁寧に染色された絹糸をフクオカ機業から受け取ります。機織りの段階で、絡まったり、切れてしまう絹糸を貰い、sampai で糸を紡ぎ直してハンドメイドアクセサリーを制作します。フクオカ機業から貰う絹糸は、ただの産廃素材ではありません。デザイン、絹糸の染色、そして機織りと、ゼロから職人の人生をかけて作り上げる西陣織りを支える素材です。sampai はハンドメイドアクセサリーを通じてフクオカ機業の職人の技、想いを皆様に届けていきます。

職人の想いを乗せるsampaiアクセサリー

hodoku -解- シリーズ

帯を仕立てる際に端糸になったもの、仕立ての際は白い経糸を入れるため、糸だけで見ると完成品より濃い黄色であることがわかる。

フクオカ機業から提供していただく産廃素材は、織物を織る際に絡まったり、切れてしまった絹糸。その絹糸を sampai が受け取り、メンバーみんなで協力して解いて、再び繋ぎ合わせ糸玉を作ります。糸玉の中は空洞で、その隙間から差し込む光が魅力的なアクセサリーです。

届く色毎にデザインを考えるので、その時々によって販売商品が変わります。hodoku は存在感もありながら、素材としてはかなり軽く優しいつけ心地です。


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