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わたしのキャンバスは、白くなくていい。

わたしのキャンバスは、白くなくていい。

生まれ持ったわたしのキャンバスは、

文字を書いても、まわりの人は誰も読めなかった。

わたしには、読めるのに。

まわりの人が「おかしい」と思ったけど、

どうやら、わたしが少数派で「おかしい」らしい。

白いキャンバスがよいとされていることを知り、

頑張って、たくさんのペンキでまっしろに染め上げ、生きてきた。

でも、あまりにも、つかれてしまったんだ。


わたしのキャンバスは、白くなくていい。

誰かひとりでも読んでくれるならば、

キャンバスが極彩色であったとしても、わたしは文字を書こう。

文字でなくても、よいのかもしれない。

誰かひとりにでも伝わるものがあるならば、

わたしを白く染め上げることなんかせずに、

濁った色でも、

白いインクを使えば、読んでもらえるじゃない?


わたしのキャンバスは、白くなくていい。

過去のことを塗りつぶすのには、飽きた。

塗り重ねた色を剥ぎ取り、

どんな暗くて醜い色だって、

表現すれば美しいと思ってくれる人がいるかもしれない。

醜いと思っていたのは、わたしだけかもしれない。

ごちゃまぜのキャンバスにだって、わたしはなにかを描いてやる。

インクの色を、絵画のように選ぶんだ。

これがわたしの生き様。


わたしのキャンバスは、白くなくていい。

案外、他の人のキャンバスも、色が濁っていることに、ようやく気づいた。

まっしろなんて珍しくって、

この世界で人と生きるということは、そういうことで、

それぞれの色を楽しめばいい。


わたしのキャンバスは、白くなくていい。

生まれ持ったわたしのキャンバス。

これを好んでくれる人もいるということに、ようやく気づいた。

すべて、わたしの幻想の中のはなしだった、のかも。

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