THE WITNESS━━私が最も「記憶を消してもう一度遊びたい」と思うゲーム
はじめに
ゲーム好きな人なら誰しも「記憶を消してもう一度遊びたいと思うゲーム」がいくつかあると思います。
心動かされるストーリーや新たなステージへ踏み出した高揚感、接戦の末に強敵を倒した達成感など、プレイヤーはゲームでかけがえのない体験をし、強烈な感動を味わえますが、同じ体験や感動を再び味わうことはできないからです。
私にとっての「記憶を消してもう一度遊びたいゲーム」は、Detroit: Become Humanやポケットモンスターブラック・ホワイトなどが挙げられます。両者はストーリーや演出、音楽など全てが素晴らしく、一人で遊ぶときのワクワク感、友人と遊んだときの楽しい体験も含めて強く思い出に残っています。
もっとも、今回紹介したいのは先に挙げたものではなく、The Witnessというゲームです。そして、これこそ私が最も「記憶を消してもう一度遊びたい」と思ってやまないゲームです。
The Witnessとは
目が覚めてみると、あなたはたった独りで謎に満ちた奇妙な島にいます。驚きと挑戦が待ちうける島に。
引用元:Steam(https://store.steampowered.com/app/210970/The_Witness/?l=japanese)
自分が誰なのか、どうしてここにいるのかも分からないまま、あなたは探検を始めます。謎解きの手がかりを見つけ、記憶を呼び起こし、無事に家に帰れることを願いながら。
引用元:PlayStation Store(https://store.playstation.com/ja-jp/product/UP2124-CUSA00498_00-JPPS400000000001)
The Witnessは、オープンワールドの一人称パズルゲームです。
主人公は絶海の孤島で目覚め、島に配置された様々なパズルを発見し、解きながら、この島に隠された秘密に迫っていきます。
このゲームには明確なストーリーはなく、文字での説明も一切ありません。
しかし、緑豊かな島を歩き、パズルを解き明かしていくことで、プレイヤーは自然と(不思議と)ゲームのルールや目的を理解していくことができます。
そして、私にはパズルが何かへ導いているような感じさえしてくるのです。
ひらめくことの面白さ
The Witnessの最も基本的なルールは、「始点となる円から終点となる半円までを一筆書きで結ぶこと」です。
画面左下の円から右上の半円までを一筆書きする。
島にはこれに加えて何種類かのルールが追加されているものもありますが、全てのパズルは例外なくこの基本ルールに従っています。
また、後述するように基本ルール以外にも複数のルールがあり、そのすべてのルールにチュートリアルが用意されています。
つまり、The Witnessは答えを出すための材料がプレイヤーに全て与えられていて、プレイヤーは答えを探すことだけに集中できるように作られているのです。
しかし、ルールは単純明快で答えに理不尽さがないことも分かっていても、肝心の答えを出すことは簡単ではありません。
そして、あれこれと答えを考えていると、ふと何かが降りてきたように答えをひらめく瞬間があります。その答えが正解だったときに、私は大きな達成感を感じるのです。
この答えをひらめいたときの快感、難しいパズルを自力で解けたという達成感、爽快感がとてもたまらないのです。
学習することの面白さ
The Witnessには、基本ルール以外に複数のルールが追加されているパズルがあります。例えば、色分けや組分け、線対称といったルールがあります。
そして、どのルールにも必ずチュートリアルがあります。
例えば、よく見ると選択肢が1通りだけだったり、選択肢は3通りあるが正解はそのうち1通りだけで、誤りと正解との違いが容易に分かるようになっているものです。
一番右上のみが選択肢になるパズル。
その他は半円でないため終点にならない。
また、チュートリアルのパズルは複数個用意されていて、それぞれ対照することでルールをより理解できるようになっています。
そのうえ、簡単なものから徐々に難易度が上がっていくことで、自然と次のパズルを解きたいと思わせるように設計されているのも巧みです。
ゲームを始めてみると分かることですが、基本ルールにすらチュートリアルが用意されているほどこの原則は徹底されています。
私はこのゲームを最後までクリアしましたが、チュートリアルがないパズルは最後まで一切なく、必ず島のどこかにチュートリアルが存在しています。また、パズル以外の要素についても全てヒントが存在しています。つまり、ヒントを見つけることも含めて、全てプレイヤーのひらめき次第なのです。
そして、難しい、解き方が分からないと感じたときには、チュートリアルを解き直すこともできるし、別の場所に行くこともできるのです。これはオープンワールドならではの利点といえます。
プレイヤーは、文字で説明を読む代わりに自らの視覚(ときには聴覚も)を頼りに答えを考え、ルールを見つけていきます。これは仮説を立て、検証し、答えを導くという学習のプロセスそのものです。
そして、チュートリアルを解き、応用問題、発展問題を解いていくとふと気が付くのです。「私はこんなに複雑なパズルを解けるようになったのか」と。自分の能力がどんどんと高まっていくことの喜びを感じさせてくれるのです。
義務教育の「やらされている感」からいつしか忘れてしまった「学習することの楽しさ」を思い出させてくれました。
実際の学習のように、基礎を身に付け、発展、応用問題を解いて、全ての分野を一通り身に付けてから最初に戻ってくると、その基礎への理解がさらに深まっていることにも気がつくはずです。
驚きと視野の広がり
プレイヤーはゲームを始めてすぐに、豊かな緑や綺麗な海などの自然、廃墟となりながらも美しい人工物の数々に目を奪われるでしょう。
しかし、ゲームを進めていくとこの風景に違和感を感じるかもしれません。
例えば、枯れた木に雲が重なって葉が生い茂っているように見えたり、水面に映った岩が仏像のように見えたりする瞬間があるのです。
ただの岩の並びのはずだが……
これが私たちの錯覚なのかはわからないですが、二つ言えることがあります。「物は見る角度によって見え方が違う」ということと「人は視界に入った物に意味を与えることで物を認識する」ということです。
ここからはゲームを進めてみて体験してほしいのですが、プレイヤーはある発見をして「自分が今まで見てきたものは何だったのか」と驚き、衝撃を受けるでしょう。そして、自分がいかにして物を見てきたのかに気がつくのです。
私が記憶を消したいと思うのはまさにこの部分です。この衝撃はあまりにも強烈で、実生活でも二度と味わえないでしょう。
ゲームを離れても
このゲームでは、島のあちこちにボイスレコーダーが落ちています。レコーダー自体はパズルに関係なく、収録されている内容もアインシュタインや老子などの科学者や哲学者の発言、文章の引用で一見すると無関係に思えます。
しかし、ボイスレコーダーの内容は座礁船では船の話、海岸では波の話などその場所に関係のあるものであったり、そばにあるパズルのコンセプトや暗喩になっていたりするのです。
なにより、ボイスレコーダーを聞き進めていくと、漠然とではありますがある一つのテーマについて集められた文章であることが分かると思います。ゲームの根底を流れる価値観、製作者の意図がそこにあるのです。
そして、「発見」を体験し、ボイスレコーダーを集め、このゲームを遊び終わったときには、目の前の世界が全く違うように見えるはずです。これはゲームを離れても頭のなかから離れることはないでしょう。
最後に
The Wwitnessは、PS4、Steamなどで配信中です(以前フリープレイでも配信されていました)。迎合するようですが、このゲームはプレイヤーからの評価が軒並み高いことも述べておきたいところです(Steamでは10点中9点、その他のレビューでも85~87点、星4.5~5、10点中8~10点をつけている)。
ネタバレを見る前に、答えを見る前に、是非自力でプレイしてみてほしいです。
ここまで読んでいただいた方に感謝を述べると共に、今後の素晴らしいゲーム体験を願ってこの記事を終えます。
(画像は全て公式サイト(PlayStation Store、Steam)掲載の画像及び動画の引用)
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