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2020.3.24 冷戦後も続く米露の陣取り合戦

ロシアのプーチン大統領が暴露したクリミア併合の舞台裏。

2014年3月18日。
新聞の国際面は一国の大統領を罵る記事で飾られました。

「強権的なプーチンの暴走」
「国際法を無視した強奪」

欧米・日本のメディアは、こぞってロシアのウクライナ東部にあるクリミア併合を強く非難しました。

プーチン、ロシア高官たちの目線からこの事件を見ると、随分と違う真相が明らかに。

2014年に突然起きたものではなく、冷戦後もずっと続いてきた米露の軍事覇権をめ巡る争いの延長線上、歴史の大きな流れの一部、全く異なる事実…。

モスクワ・クレムリン(大統領府)

「我々の我慢にも限度がある!」

「ウクライナの一件で、ついに欧米は一線を越え、乱暴でプロ意識のないことをした。」

「ロシアにとっては、もう一歩も引き下がれなくなった。」

「もしバネを限界まで押しつけたら、いつか力強く跳ね返る…、常にそのことを肝に銘じておけ。」

欧米への激しい怒り。

その根源は?

それを知るための鍵は1980年代、東西冷戦時代に遡ります。

ベルリンの壁を境に、西側は反ソ連の軍事ブロック「NATO」、東側は反アメリカ軍事ブロック「ワルシャワ条約機構」。

両者の睨み合いが続いていました。

1985年、ゴルバチョフがソ連の書記長になると急速に雪解けを迎えます。

1989年11月9日、ベルリンの壁崩壊…、西側主導でドイツが統一。

ソ連の許可なしには起こり得ないことでした。

統一にあたって、ソ連側はある重要な条件を出していました。

「絶対にNATOをドイツより東へ拡大しないこと」

アメリカ側はこの条件を快く受け入れ、「決して拡大しない」と約束…。

…ですが、ソ連の期待も空しく、この約束はあっさりと破られることとなります。

1949年、冷戦が始まった発足当時のNATO加盟国は12ヶ国。

その後、
1952年 ギリシャ、トルコ加盟

1955年 西ドイツ加盟、ワルシャワ条約機構設立

1982年 スペイン加盟

と、1989年の冷戦終了後は16ヶ国だけだったNATO加盟国。

しかし、その後、
1999年 ポーランド、チェコ、ハンガリー加盟「旧ワルシャワ条約機構」東欧3ヶ国がNATOに加盟

2004年 7ヶ国加盟 NATO加盟国26ヶ国(ここでついに旧ソ連領の3ヶ国が加盟)

2009年 2ヶ国が加盟 止まらぬNATOの拡大

2017年 1ヶ国が加盟 29ヶ国からなる巨大な「反ロシア軍事ブロック」

世界最強のアメリカ軍をバックにつけた基地、最新鋭の兵器、核兵器さえ持ち込める冷戦期を遥かに超える脅威にロシアはぐるりと、その領土を囲まれつつありました。

プーチン大統領はアメリカが約束を破ったこと、元々自国領だった国までNATOへ寝返ったことに激怒。

NATOでロシアを漏れなく包囲したいアメリカが、ここで手を止めることはありません。
2003年頃から、ロシア国境付近の国々で不可解な革命が頻発。
その背後には欧米の情報機関NGOが蠢いていたとの噂も…。

革命の結果現れるのは、決まって親欧米派の大統領。

彼らはロシアに不利な政策を行い、NATO加盟への動きを推し進めていきます。

そんな流れの中、ついに隣国ウクライナにもその魔の手が迫りました。

当時の大統領は親ロシア派。
2013年11月、大統領はEUとの政治・貿易協定を一度は承諾したものの、プーチンの説得もあり土壇場で調印を見送りました。

すると、首都で大規模なデモ活動が起こります。
2014年2月、身の危険を感じた大統領は止む無くロシアに逃亡。

革命により親欧米政権が誕生。

ウクライナ東部の黒海に面したクリミアには、ロシアの重要な軍事拠点「黒海艦隊」が置かれていました。
前政権との間で「2042年まで黒海艦隊を駐留させること」が合意済みでした。

しかし、革命で誕生した新大統領は、ロシアの艦隊を追放。
代わりにNATOへ加盟し、アメリカ軍を迎える意向を示しました。
ロシアの目と鼻の先…、ボタン1つでいつでも首都を狙い撃ちできる場所に、ついに宿敵アメリカがやってくる…。

追い込まれたプーチン大統領のは決断し、表向きは
「クリミアに住むロシア系住民を守る」
という名目でロシア領への併合を宣言…。

これが、欧米メディアが流すニュースの翻訳をそのまま伝える日本の報道からは見えてこなかった真実です。

「クリミアがロシアに併合された」
という1つの事象だけではなく、軍事による背景や前後関係を巡って起こった大国の支配者たちによる覇権争い。

この記事を読まれて、皆さんの見える世界がだいぶ変わったのではないでしょうか?

冷戦が終わり、雪解けを迎えたかと思われていた米露の関係…。

軍事覇権の観点からみると、冷戦後もずっと軍事面での優位を保つため、軍事同盟や革命などのあらゆる手段を使って、激しい陣地の取り合いが続いていました。

ロシアによるクリミアの併合は、その大きな流れの中の1つに過ぎません。

今も昔も、腕力という軍事力の強いものが勝つ。
圧倒的な力があれば、約束事や国際法を破ったり、何かと理由をつけて小国の領土を奪うなど、好き勝手に振る舞うことができる…、これが世界の現実です。

事実、アメリカはNATOをひたすら東に拡大。

2003年、国連の制止を振り切りイラクを攻めました。

そして、ロシアは国際法を無視し、小国ウクライナの領土をあっという間に併合。

さらに、世界第2位の軍事力を持つ中国は、南シナ海の島を次々に奪い取りましたが、国際裁判所で敗訴したにも関わらず、その警告は一切無視。
軍事基地として、今も実効支配を続けています。

このような大国の中でも、最も好き勝手に振る舞うことができるのは1番強い国。

現時点では、世界の総軍事費の35%を1ヶ国で占め、圧倒的な力を持つアメリカ。

NATOとロシアの例を見てもそうですし、南シナ海の島は奪うのに、日米同盟が強固な日本の領土である尖閣諸島は奪えない中国の態度を見ても、1番強い国がいるところには誰も手を出しません。

当然、その状態に不満を持つライバルたちは、1位の座を虎視眈々と狙っています。
ですので、今も世界から軍事覇権を狙う争いは絶えることはありません。

世界を動かす支配者層と何も知らない一般大衆。
この世の中には、大多数の一般大衆とほんの一握りの支配者層が存在しています。
その中には大国の指導者や政府高官、もしくは国を牛耳るほどの超富豪がいて、世界の次なる覇権を狙って、水面下で激しい争いを繰り広げています。

このような争いは何も今に始まったわけでもなく、15世紀の大航海時代から現代まで、主役とライバルが移り変わりながらも絶えず続いています。

はっきり言って、彼らにとっては日常茶飯事のようなものですが、そのとばっちりをうけて火の粉を被るのはいつも一般大衆の人たち。
本当のことは何も知らされず、単に彼らが流す情報を鵜呑みにする庶民です。

こういった支配者層の思考やモノの見方を知らなければ、事が起きる段階になって初めて気付き右往左往します。

しかし、支配者たちからすれば全て想定の範囲内、何年も前からの計画をただ実行しているだけ。

大事件や戦争さえも事前に計画だなんて…、物騒な…陰謀論か?
と反射的に抵抗を示してしまう方もいるかもしれませんが、身近な例で例えれば、どの会社も業界での生き残りを賭け、シェアで1位を取るため社長をはじめ経営陣が施策を計画し、実行しているはずです。

経営状態が良かろうが悪かろうが、一般社員はそれが実際に起こるまで知る由もありません。
実際、2008年のリーマン・ショックの後、いきなり解雇を命じられたり、会社が倒産した人もたくさんいました。
たくさんの会社・個人が集まって国家という集団を作っているわけですから、国家も同じように運営されていると考えても何もおかしくはないでしょう。

支配者には色々なタイプの人がいますが、不思議と思考・モノの見方は共通しています。

私たちが今から支配者になることは難しいですが、その法則さえわかってしまえば情報の読み解き方が分かり、世の中で起きている本当のこと、これから何が起こるのかという未来のことも自然と分かってきます。
それを元に行動すれば、危険や損を事前に回避することも逆に利益を得ることもできるようになります。

話が少しそれてしまいましたが、その法則の1つが軍事覇権。
自国の安全を確保し、軍事力によって世界を支配。
腕力が強ければ、国際法を破って小国の領土を奪っても構わない。

トップに立つために競って軍事費を増やし核や最新兵器の開発を行う…。

支配地域を広げるため、時には小国をけしかけて代わりに戦争させたり、自らを守る盾として使うことも辞さない。
これは、支配者たちに共通する思考パターンの1つです。

ほとんどの日本人は戦後、世界は平和になったという認識を持っていますが、事実を見れば、我々が戦後と呼んでいる時代に本当の意味で戦争がなかった時代はありません。
事実21世紀だけでも、

2001年 アフガニスタン戦争

2003年 イラク戦争

2008年 ロシア・グルジア戦争

2011年 シリア内戦、リビア戦争

2014年 ウクライナ内線(クリミア併合)

ロシアのTVに至っては、軍事・戦争関連のニュースが30~40%を占めるほど。

世界の多くの人たちは、今も戦争が続いているという意識で常に暮らしています。
にも拘わらず、日本TVではこういった事実をほとんど報じず、代わりに流れてくるのは芸能人の不倫話や政治家のスキャンダルばかり。

その結果、新聞やインターネットで戦争関連のニュースを見たとしても、
「遠い国のことだから関係ない」
と、無意識のうちにそこから目を背け、非常に重要な情報を見落としてしまいます。

事実、戦争という軍事覇権は、金儲けや資源の確保という経済覇権と同じくらい重要な要素ですから、それを無視してしまっては、世界で起きていることがよく分からないまま、
これから世界で何が起きるのか?
どんな方向に動いていくのか?
といった予測もなかなかできません。

世界の支配者層は、軍事面での覇権を巡って日々争いを繰り広げています。

もし、こういった法則を知らないまま闇雲に情報を取っていても、メディアは単に起きた事件・事象について伝えるだけ。
点でバラバラで背景が分からず、全く面白く感じられないばかりか、一向に本当のことが分からず、むしろたくさんの情報で混乱は深まるばかり。

そして、私たちの生活に影響を及ぼす重大な事件や戦争が実際に起こってから、ようやく気付いてあたふたさせられることになり、時には投資で大金を失くしたり、会社の給料が減ってしまったり、最悪の場合にはクビになったりと、いざという時に家族を守れない。

さらに、間違った情報を教えてしまうことで、希望ある子供や孫たちの人生も狂わせてしまうかもしれません。

軍事覇権を取り合う支配者たちの思考パターンが分かれば、
この世界がどんな原理で動くのか?
が、よりクリアに見えてきます。

例えば、

なぜ中国とロシアは北朝鮮を必死で守るのか?
というと、北朝鮮は旧ソ連の元KGBを軍事顧問に就けたことで、中国とロシアは核武装さえも黙認しています。

他にも、

なぜ、アメリカやロシアは、中東や南米の名前も知らないような小国にこだわるのか?

中東、アフリカ、南シナ海…、次に争いの火種になるのは、いったいどこなのか?

ニュースを見ている中で出てくるこのような疑問にも、自分の頭で考え、答えを出せるようになるでしょう。

米中の覇権争いが益々激しくなる中、中国との間で領土問題を抱える日本は、ロシア周辺の国々と同じく代理戦争の舞台になるという可能性もゼロとは言い切れません。
むしろ、何かしらの有事が起こる可能性は日に日に高まっています。

だから皆さんには知っていれば避けられたはずの損を被ったり、不利な思いをして欲しくないですし、正しく世界の動きを把握することで、事前に危機を回避すだけでなく、あわよくば、賢く利益を得られるようにもなって欲しいと思います。

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