2021.12.10 いま「北方領土返せ!」がNGな理由
今回は、久しぶりにロシアの話です。
10月27日付、CNNの
<中ロ合同艦隊が日本を「一周」、これが大きな出来事である理由>
から。
<中国とロシアがこのほど合同海軍演習を実施し、軍艦10隻からなる艦隊が日本の本州をほぼ一周した。>
これは、何でしょうか?
『自由で開かれたインド太平洋戦略』の中核は、『クアッド』です。
日本、アメリカ、インド、オーストラリア。
『クアッド』は合同軍事演習も行っています。
もう1つ、アメリカ、イギリス、オーストラリアの反中同盟『AUKUS(オーカス)』もあります。
オーカスは、「オーストラリアに原子力潜水艦8隻を保有させること」を目指しています。
それによって、中国が強くなりすぎて壊れたアジアの“バランスオブパワー”を回復させようとしています。
この動きに、中国が対抗する動きを見せています。
中国にも『友達』がいます。
「最も頼りになる友達?」
は、ロシアです。
世界一の領土を持ち、資源超大国、核超大国です。
ロシアのトップであるプーチンが、習近平と同じ類の独裁者であるところも、意志疎通が円滑で“頼もしい”です。
“頼もしい”というのは、習近平からの視点です。
そこから出てきたのが、先述の記事の内容です。
<中国とロシアがこのほど合同海軍演習を実施し、軍艦10隻からなる艦隊が日本の本州をほぼ一周した。>
予測したとおりの流れ
過去の記事で、私が何度か主張していることがあります。
それは、
「プーチンに北方領土を返す気はない」
「でも、ロシアとは和解した方がいい」
なぜか?
それは、中国とロシアを分断するためです。
そして、中国とロシアを分断できれば、米中覇権戦争でアメリカ、そして日本の勝利が確定するからです。
逆に、分断ができなくなれば困ったことになります。
中国軍だけでも恐ろしいのに、ロシアが中国軍側について戦う?
これこそ、まさに悪夢です。
今、台湾有事問題でも取り上げられていますが、
「尖閣がらみでホットな日中戦争が起こる可能性があること」
は、皆さんにもご理解頂けるでしょう。
しかし、仮にホットな戦争が起こるとして、交戦国は幾つかのパターンが想定されます。
①日本&アメリカ vs 中国
これは、日本とアメリカの必勝パターンです。
日本は、このパターンを維持するため、あらゆる手段を使ってアメリカとの関係を強化していく必要があります。
②日本 vs 中国
中国が日米分断に成功すれば、こうなります。
つまり、尖閣有事の際、アメリカが日本を助けない。
このパターンで通常兵器同士の戦いだと、どうなるか分かりません。
ひょっとしたら勝てるかもしれない…。
しかし、中国が『核』で恫喝してきたら日本に勝ち目はないでしょう。
尖閣は、中国のものになる可能性が高い。
③日本&アメリカ vs 中国&ロシア
この戦争が起これば、どちらが勝つか分かりません。
しかし、アメリカが日本の島を守るために中国、ロシアと戦うでしょうか?
私は難しいと思います。
④日本 vs 中国&ロシア
これは、日本の必敗パターンです。
勝ち目は0.1%もありません。
日本は、このパターンだけは絶対に避けなければなりません。
こうみると日本は、アメリカ、ロシアとの関係を強化し、①のパターンを維持しなければなりません。
ロシアが日米側について戦うことは、現段階で期待できません。
しかし、少なくとも中立でいてもらう必要があります。
日本&アメリカ vs 中国
ロシア中立
この状態を維持できれば、中国が必ず負ける戦争を仕掛けてくる可能性も減るでしょう。
私たちがはっきり知っておかなければならないのは、日本が必勝の状態を維持しておけば、戦争が起こる可能性は減るということです。
ちなみに、戦略家のルトワック氏は、著書『自滅する中国』の中で、日本がサバイバルできるかどうかは、ロシアとの関係に懸かっていると断言しています。
<もちろん日本自身の決意とアメリカからの支持が最も重要な要素になるのだが、ロシアがそこに参加してくれるのかどうかという点も極めて重要であり、むしろそれが決定的なものになる可能性がある。>
ルトワック氏の著書『自滅する中国』が発刊された当時、
「中国とロシアの合同軍が日本の脅威になる」
と主張している人はいませんでした。
しかし今は、
<中国とロシアがこのほど合同海軍演習を実施し、軍艦10隻からなる艦隊が日本の本州をほぼ一周した。>
ということになっています。
北方領土問題をどう考えるか?
ここ数年で、中国の脅威が認識されはじめ、それにともなって『ロシアの戦略的意味』も理解されはじめました。
実に良いことです。
ですが、北方領土問題については、どう考えるべきでしょうか?
日本では『ロシア』と聞くと、反射的に
「北方領土返せ!」
という言葉が頭に浮かびます。
確かに領土問題は大切です。
しかし、一言目から
「北方領土返せ!」
という言葉が出てくるのは、絶対に正しいのでしょうか?
例えば、反日国家の韓国は、竹島を不法占拠しています。
日本の政治家は、韓国の政治家にあって一言目に
「竹島をいつ返してくれますか?」
とは言いません。
一方で、同じ政治家が親日大国ロシアの政治家に会うと、最初から
「北方領土をいつ返してくれますか?」
といって嫌がられます。
そして国民も、
「日本の政治家は、ロシアの政治家に会ったら、毎回毎回『島を返せ!』というのが当然だ」
と思っています。
ですが、ロシアとの関係は、戦略的に韓国よりもずっと大事です。
70年以上も不法占拠されている北方四島を返還してもらうことはとても大事ですが、現時点では尖閣と沖縄を守ることはさらに大事でしょう。
尖閣と沖縄を守るためには、経済協力を中心に日ロ関係を改善させ、中国が
「ロシアの支援はアテにならん」
と思う状態に持っていくことが大事です。
繰り返しますが、
日本の『必勝パターン』を維持しておくことが、『戦争回避』につながるのです。
このような話は、10年前ではほとんど理解されませんでした。
しかし、中ロ同盟の脅威が現実になり、もっと理解されやすくなったかと思います。
米中覇権戦争の始まりから3年
たった3年ですが、世界は大きく変わっています。
まず2018年、ペンス副大統領の『反中演説』から『米中覇権戦争』が始まりました。
トランプ前大統領は、物凄い勢いで中国バッシングをしていきました。
2021年、バイデンがアメリカ大統領になりました。
彼は、トランプが苦手だった『同盟戦略』によって、着々と『反中包囲網』を築いています。
『クアッド』が強化され、『オーカス』が創られ、『G7』『NATO』が再強化され。
世界では、日毎月毎に反中国家が増えています。
対する中国は、敵を増やす『戦狼外交』、経済発展をぶち壊す『共同富裕』、二つの愚策で自滅に向かって歩みを速めています。
中国の友達は少なく、唯一頼りになるのはプーチンのロシア。
しかし、プーチンは『究極のリアリスト』なので、
「中国が負けそうだ」
と判断すれば裏切るでしょう。
イタリアは、第ニ次大戦中にナチスドイツを裏切りました。
今回はロシアが中国を裏切り、引導を渡す役になるかもしれません。
最後までお読み頂きまして、有り難うございました。
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